アフターストーリー07 -全国大会へ①-
期末試験、終業式も何事もなく終了し俺達は高校生活最後の夏休みに入った。
「ケンちゃん隣いいでしょ♪」
「おぅ」
全国大会出場を決めた俺達川野辺高校男女バスケ部は、今から学校が用意してくれたバスに乗り大会が行われる名古屋へと向かう。
・・・学校からバスで行けるのは助かるけど朝早くて眠い。
バスには男女バスケ部員と牧村コーチと三上コーチ。それに臨時コーチの雫姉と顧問の田中先生と相良先生。
皆思い思いの席に座り、そろそろ出発かなと思っていると隣のバスの窓が開き見慣れた男が声を掛けてきた。
「田辺!お互い頑張ろうな!」
「おぅお前らもな!」
梶だ。今年の夏の大会は俺達バスケ部の他にサッカー部も出場を決めた。
ということで梶達も同じく名古屋に向かうんだ。
サッカー部が大会に出場するのは5年振りと随分久しぶりらしく部のみんなも気合が入っている。
梶や古川は2年からの入部だったけど今じゃレギュラーメンバだからな。
それに・・・あの謎の不良スタイルもやめて今じゃ爽やかなスポーツマンって感じで結構モテモテらしい。
まぁ元々お姉さんも美人さんだったし素材は良かったんだよな素材は。
趣味というか感性がちょっと人とずれていただけで・・・
「ん?どうしたのケンちゃん?」
「あぁ梶達とも色々あったよなって」
「ふふ そうだね。前に古川君達に絡まれてた時助けてくれたもんね。
今思うとカッコよかったよね」
「調子いいなぁ~。村田さんから聞いたぞ"カッコいいよね"って言ったら"そうかなぁ"とか言ってたらしいじゃん」
まぁあの時は俺だって気が付いてなかったみたいだけどね。
「あ、あれは・・・その・・・私ケンちゃん以外は・・・その興味なくて」
「はは 知ってるよ。それも村田さんに聞いた」
「うぅ~ 綾!!何色々と話しちゃってるのよ」
少し頬を赤くして通路反対側に座る村田さんを睨む楓。
「え~だって田辺君が楓の事色々聞きたいって言うからさぁ~」
「え?そうなの?」
「あぁ。村田さんが多分一番楓と一緒に居た時間が長かっただろうからな」
「・・・でも何で?」
「・・・楓の事をもっと知りたくて。俺が知らない7年分の楓の事を」
「な 何よそれ・・・」
「照れちゃってもう♪楓ったら可愛いんだから」
「もう!綾!」
なんてバスケとは全く関係ない話で盛り上がっていた俺達だったけど、東名高速に入ったあたりでコーチが出場校の試合のビデオを流し始めると皆真剣に映像を見始めた。
コーチたちが手分けして対戦する可能性がある高校の映像を集めてきてくれたらしい。それも丁寧に編集がされていてやたらと見やすい。
多分、凝り性の雫姉が編集したんだろなこれ。パソコンとか得意そうだもんな。
と牧村コーチが映像を説明しながら初戦について話し始めた。
「資料は見ていると思うが男子初戦はなんの因果か昨年同様に宮城の青葉高校だ。昨年は何とか勝てたが、相手も雪辱に燃えてるみたいだからハッキリ言っておくが強いぞ。前はPGの矢代を中心としたチームだったが1年にいい選手が入ったらしくてな。前以上に油断は出来ないぞ」
「「はい!!」」
そして矢代の友人でもある福島の補足を含め一頻り試合の説明が終わったところで映像が切り替わり女子バスの映像が映し出された。
ここからは三上コーチが説明を始めた。少し険しい表情だ。
「女子は・・・雫さんの出身校で去年の優勝チーム東京女子学院が初戦の相手よ。村田・・・あんたクジ運悪すぎるわよ」
「それ言わないで下さいよ・・・気にしてるんですから」
「ふふ 大丈夫よ。去年の優勝校って言っても同じ高校生なんだし選手も結構入れ替わってるわ。みんなだって練習してきたんだから自信もって試合に臨みなさい」
「雫姉さん・・・はい!頑張ります!」
「そういう事。皆練習の成果見せつけてきなさい!」
「「はい!!」」
正直なところ雫姉がコーチに入って女子の攻撃力はかなり向上した。
それに幸ちゃんや美里ちゃんなど有望な新戦力も加わったし優勝候補相手でもいい試合は出来るはずだ。
まぁ俺達の対戦校も毎回優勝候補に挙げられる名門だからな。
女子の心配ばかりはしてられない。
途中何度かサービスエリアでの休憩を挟み名古屋に到着。
そして到着早々に参加した開会式。
去年も見た光景だ。
青葉の矢代をはじめ昨年対戦した高校の見知った顔も見える。
何だか気合が入るよな。
その後、宿舎に移動し荷物を置いて少し休憩した俺達は、軽めの昼食を取り再びバスで試合会場となっている市民体育館へと移動した。
今日の試合は男子のみで女子の1回戦は明日の午前中。
ということで女子バスのメンバーも男子の応援に来てくれることとなった。
俺達の試合は今日の第2試合。
会場に入るとまだ1試合目の終盤第4クォーターの戦いが繰り広げられていた。
得点差は・・・20点差!?
「全国大会でこの得点差なのか?」
「あぁ凄いな。あの高校って確か初出場じゃなかったか?」
「何だか相手高校が可哀相だな・・・」
東京都代表の多摩通信学園。
新設校であまり情報がない学校だったけど、どの選手の動きも無駄がなくシュート精度も高い。完全にノーマークだったな・・・
って誰も口にしないけど俺達が今日勝つと次の対戦相手だよなあの高校。
・・・俺達もくじ運ないのかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます