アフターストーリー06 -最後の大会へ-
「恩田!」
相手コートに切り込んだ俺は相手選手の壁をつくりつつ空きスペースに走りこんできた恩田にパスを出した。
走りこむ位置を意識して出したパスを正確にキャッチする恩田。
そして相手選手を一人抜いた後、ほぼ角度のないライン際からゴールを決める。
「ナイスシュー恩田!」
「智樹~カッコいいよ~!!」
「「ワーーーー!!」」
恩田のシュートで盛り上がる応援席。
そして、ゴールとほぼ同時に第2クォーターも終了した。
この言い方すると本人は嫌がるだろうけど流石は恩田先輩の弟だ。
いや、攻守のバランスを考えるともしかしたら先輩より凄いのかもしれないな。
途中入部だけど本当こいつが部に入ってくれよかった。
そんな恩田を見ると観客席に居る彼女に手を振ってる。
そういえば彼女さんが恩田のバスケ復帰を後押ししたって栗田が言ってたな。
もしこのまま勝てたら彼女にもお礼を言いたいくらいだよ。ほんと。
梅雨も明け7月も終わりに近づいた夏の1日。
川野辺大学の総合体育館。
今俺達は夏の大会の決勝戦に臨んでいる。
相手は因縁の森下学園。
新勢力の加入もあり練習試合では男女ともに俺達の高校が勝ち越した形ではあったけど流石に本番ともいえる大会では楽には勝たせてくれない。
第2クォーターが終わった今の時点では俺達が僅差でリードはしているけどいつ逆転されてもおかしくはない状態だ。
「いいか!練習試合では勝てたが森下は決して楽な相手じゃない油断するな!」
「「はい!!」」
福島の激が飛ぶ。俺達3年にとっては最後の大会だ。
いつも冷静な福島だけど気合も入るよな。
ちなみに女子バスは前日に行われた準決勝で森下学園を下しさっきまで別会場で行われていた決勝戦にも勝利し先に全国行きを決めた。
今は疲れているのに応援のためこの会場に向かってくれてるはずだ。
俺達も負けてられない。楓達に続かないとな。
「栗田、由良!わかってると思うが藤原と横田は要注意だ。それから木島は3ポイントに注意しろ。今日はシュートの成功率も高い。マークは恩田頼んだぞ」
「はい。あいつとは中学時代からの遊び仲間で実力あるのは知ってますけど今日は絶対に止めますよ」
「清水、田辺、吉見は隙あればシュートして1点でも多く得点してくれ。長谷部リバウンドは任せたぞ」
「もちろんだ。福島こそ笹原は任せたぞ」
「わかってる。あいつは俺が抑える」
森下は1年、2年の層も厚いがやはりキーマンは3年の横田-笹原-藤原のラインだ。特に笹原は県内屈指のPGだ。
そして笹原を抑えるとオールラウンドプレイヤーの藤原がそれを補う形でPG的な役割をこなす。ある意味司令塔的な選手が2人いるようなものだ。
俺達も福島と清水で対応はしているけど中々厄介な相手だ。
始まった第3クォーターは点の取り合い。
吉見が3ポイントを決め俺や恩田、裕也が点をとれば、森下も木島が3ポイント、そして横田、藤原、池本もシュートを量産した。逆転に次ぐ逆転で点差は開かず僅差のまま試合は進んだ。
そして川野辺が1点リードで迎えた第4クォーター。
疲れが見えてきた栗田と裕也に代わって由良と1年の平野が投入された。
1年生ながら川北中の得点源だったというだけあり平野は得点に絡む活躍を見せてくれた。
が、ここで笹原が動いた。
福島のマークを藤原との連携で上手く外し平野がキープしていたボールを取りに動いた。
「ったく恩田も平野も森下に来てくれたらよかったのに・・よっ」
「先輩方には申し訳なかったですけど美里が川野辺選びましたから・・・っく」
「全く美里ちゃんにべた惚れだな平野は・・・っそら」
平野も必死にフェイントをかけるがやはり笹原の方が1枚も2枚も上手。
少しずつライン際に少しずつ追い詰めてられていく。
俺や福島もフォローに入ろうとするが藤原達がそれを許さない。
と一番離れたところに居た恩田が森下のマークを振り切り平野の"背後"僅かなライン際のスペースを走った。
「平野こっち!」
「くっ恩田か!」
「頼みます先輩!」
平野からのボールを受け取り半身ラインから出るような体制でボールをライン内ギリギリに残しドリブルで走る恩田。そして平野は追おうとする笹原をブロック。
俺は一瞬恩田に気を取られた藤原を振り切りゴール下へ走った。さっきのお返しだ。
「しまった!ゴール下!田辺マーク!」
「先輩!」
コート隅へドリブルで進んだ恩田がゴール前にボールを上げた。
俺は森下のマークを避ける様にジャンプし空中でボールキャッチ。そしてそのままゴールへと押し込んだ。
「「ワーーーー!!」」
「ケンちゃ~ん!!ナイスシュー!」
「田辺く~ん!!いいぞ!!」
割れんばかりの大歓声に包まれる体育館。
今の楓と村田さんか?楓達も来てくれたのか?
観客席を見ると女子バスメンバが応援席で俺達に声援を送ってくれている。
と俺にパスを出した恩田が走り寄ってきた。
「先輩流石ですね」
「ナイスパスだったぜ恩田!」
恩田とハイタッチをした俺は残り時間を見つつ仲間たちに声をあげた。
「まだ試合は終わってない気を抜くなよ!」
「「おぅ!!」」
最後の攻防。
俺や福島、平野も守りのフォローに入りながら森下の猛攻にひたすら耐えた。
そして一瞬の隙をついてドリブルで切り込んだ福島のゴールがダメ押しとなり、3点差という僅差ながらも俺達の川野辺高校が決勝に勝利し全国への切符を手に入れた。
「ちっくしょ~負けちまった。福島!俺達に勝ったんだ全国で暴れて来いよ!」
「お前らの分まで暴れて来るさ」
「はぁ・・・長い夏休みになりそうだな・・・頑張って来いよ田辺。決勝まで行けたら応援に行ってやるよ。」
「あぁ任せとけ!」
もう少し・・・この仲間たちとバスケを楽しめそうだな。
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