アフターストーリー04 -練習試合とバイト仲間-
「大室先輩!」
「ナイス幸!瑞樹!」
ボールカットした幸ちゃんが前へ走る大室さんにパスを出す。
そして、それを受けた大室さんは相手選手をフェイントでかわし更に前線の鮎川さんへ。
[シュパ]
鮎川さんのシュートが大きな弧を描きゴールに綺麗に決まる。
「ナイスシュー瑞樹!」
「小春のパスがよかったからだよ」
「いや~そんな煽てないでよ~本気にしちゃうぞ♪」
何だか楽しそうに試合してるな・・・
森下学園との練習試合。
午前中に行われた両校レギュラーによる試合は男女ともに俺達川野辺高校が勝利した。
と言っても相変わらずの接戦だったから次に勝てる保証はない。
夏の大会に向けての課題も見えてきたしもうひと頑張りは必要だ。
そして今は、来季を担う1,2年生を主体としたチームが試合を行っていて、俺達3年生は客席から観戦してる感じだ。
コートで見るよりコート全体を見下ろせるから選手の動きをチェックするには良いんだよな。
藤原達森下学園の面々もコート対面の客席で試合を見ている。
まず1回戦目は女子バス。
次期キャプテンの鮎川さんとその相棒のポイントガード大室さんがゲームを支配し勝利した。
もちろん森下の女子バスも中々いい攻撃はしていたけど一歩及ばずと言った感じだったかな。それに新戦力の幸ちゃんや藤原の妹の美里ちゃん、それに葉山さんもまだまだ粗削りなところはあるけど存在感を見せて今後を期待させる活躍を見せてくれた。
俺達の居る観客席側にあるベンチ側に戻ってきた鮎川さん達は試合に勝ったこともあり良い笑顔だ。
三上コーチや雫姉からも褒められてるみたいだな。
「み 瑞樹。いい試合だったぞ。俺達も頑張るからな!」
「うん。ありがとう芳君も頑張ってね!」
「ほら~ そこ試合前にイチャイチャしないの~」
「ち 違うし!」
「はいはい。あ、栗田君試合頑張ってね♪」
「お おぅ大室もお疲れ」
次試合だというのに鮎川さんのところまで行って声を掛ける栗田。
そしてそれに答える鮎川さんと大室さん。
この3人のやり取りはいつも面白いよな。何というか見てて微笑ましい。
でも栗田達は付き合いだしたって聞いたけど大室さんはあんまり色恋沙汰というかそういう話は聞かないよな。
結構可愛いとは思うんだけど。
「なぁ楓。大室さんは彼氏とかいないのか?」
「小春?う~ん、、、あんまり聞いたことないなぁ。友達は多いみたいだけど。
ほら、今日の試合も友達が見に来てくれたみたいだし」
「そうなんだ」
と楓の指さす方を見ると観客席の奥で何人かの生徒が鮎川さんや大室さんに声援を送っていた。大室さん達も手を振ってる。
「大室~ 鮎川~ カッコよかったぞ~ 栗田もこの後頑張れよ~!」
「小春ちゃ~ん♪」
「ありがとう!!見に来てくれてたんだね若菜ちゃん達!」
ああやって楽しそうにバスケしてるのが良いんだろうな。
さて・・・次は男子バスか。
栗田達もいい影響受けて頑張ってくれるといいんだけど。
「僕達も女子に続くぞ!」
「「おぉ!!」」
コートに展開する栗田達1,2年生。
長身の森下学園センター脇田にジャンプボールこそ取られたものの、堀田が素早くボールを奪い返しゲームをコントロール。
少し小柄だが福島の後を継ぐポイントガードとして最近頭角を出してきている。
「平野!」
「はい!」
ノールックで送ったパスを1年の平野がキャッチしそのまま3ポイントを放つ。
平野は川北中バスケ部の中心選手だっただけあり動きもよく3ポイントの精度も高いなど中々期待の戦力だ。
そして・・・
「恩田!」
「オッケ~♪」
堀田がカットし弾いたボールをキャッチし、相手ディフェンスをフェイントでかわしつつゴール下に切り込む恩田。
そしてシュートと見せかけ3ポイントエリアに走る平野へパスを送る。
2年生からの途中入部だけど、恩田先輩にも負けない視野の広さとテクニックなど中々期待の選手だ。
「ホイ♪」
そして今度はリンクに弾かれたボールを拾い、集まってきたディフェンスを避ける様にフェイドアウェイを決めた。
あれって結構テクニック必要なんだよな。
「智樹カッコいいよぉ!!」
「サンキュ~~優子♪」
観客席の女子生徒(確か彼女さんだよな)の声援に手を振ってこたえている。
でもちょっと性格は軽いよな・・・というかある意味では恩田先輩に似てるんだろうか・・・
そんな流れで男子バスの試合も接戦ではあったが川野辺高校側の勝利。
ポイントガードとしての堀田や随所でいいプレイを見せた恩田が目立ってたけど栗田も相手ディフェンスを何度も防いでたし、皆それなりに自信につながっただろうな。
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試合後の帰り道。
俺と楓は、森下学園の藤原と応援に来ていた森田さんとラウムに居た。
「ここの問題出そうかな?」
「そうだな過去問見てる限り類似問題は出そうだよな」
「ねぇねぇケンちゃん。こっちの問題はどうかな?」
「ねぇ和君。これってどう解けば・・・」
何をしているかというと受験に向けた勉強会だ。
俺と楓と同じく川野辺大学を受験する藤原からの声掛けで毎週ラウムで行っている。シフトを調整してもらってバイトの後に行うことが多いんだけど今日は4人揃うということもあり疲れてはいたけど練習試合後の開催となった。
1人で受験勉強しているよりは集まって行った方が刺激にもなるし、ラウムには川野辺大学に通う島田先輩も居るし、小山内先輩や梶先輩も常連さんということでお店に良く来る。色々と情報交換も出来るんだよね。
「それにしても田辺達は凄いよな。試合の後に勉強会とか・・・」
「そういう長谷部もこの後湯川ちゃんとデートだろ?仲がいいねぇ~」
「ち 違うよ。僕らも受験に向けて勉強するだけだよ」
「2人きりで彼女の部屋でだろ?まぁ・・・そういうことにしておこうかね」
「う 嘘じゃないからな。本当勉強会だからな。じゃまたな」
と長谷部は湯川さんの家に出掛けて行った。
長谷部と湯川ちゃんも川野辺大学を受けるということで時々勉強会にも参加しているんだけど2人でも色々と勉強はしているらしい。
「はぁ・・・それにしても平野が川野辺行ったのは痛かったなぁ~
それに恩田。バスケ辞めたって聞いてたのにいつの間にか復帰してるし」
「そう言うなって。新入部員の数じゃ森下の方が上だろ?接戦だったし次はどうなるかわからないさ。それに平野は藤原の妹さん追いかけてきたんだろ?」
今は勉強会の休憩時間。
藤原がバスケの話題を振ってきた。
勉強会ではあんまりバスケの話はしないんだけど今日は試合後だからかな。
「そうなんだよな。。。美里も森下に来ると思ってたんだけど・・・
あ、平野はいい奴だから、美里の件は応援してやってくれよな。
兄として平野が相手なら安心だし・・・それに美里のやつ、あれだけ平野がアピールしてるのに全然反応薄いんだよな。自分の恋愛には鈍感みたいで」
「そうなのか?」
「あぁ・・・同じ男としてなんだか平野が可哀相で・・・」
色々と苦労してるんだな平野も。
まぁそんな雑談も挟みつつマスターお手製のサンドウィッチを夜食に俺達の勉強会は進むのでした。
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