アフターストーリー

アフターストーリー 01 -8年目のはじまりと-

「同じクラスになれてよかったね」

「そうだな。裕也達も一緒だし楽しい1年になりそうだ」


桜咲く4月。

今日は川野辺高校の始業式だ。

この学校では毎年クラス替えが行われる。

俺は3年A組となり再び楓と同じクラスになれた。そして嬉しいことに裕也に浜野さん、村田さんもまた一緒だ。また今回は福島や由良、吉見(妹)も同じクラスになった。

何だかバスケ部主力が集まってるしカップルで同じクラスになっているのは・・・学校側のサービスと思っておこう。

それにしても今年のスポーツ大会。

うちのクラスはバスケが凄いことになりそうだ。


担任は去年に引き続き田中先生。

ただ、去年副担任だった美香先生は2年でクラス担任することになった。

副担任から担任って出世なんだろうか?

良くわからないけど栗田や鮎川さん達のクラスの担任らしく朝から張り切ってた。

そして、今は新学期最初のホームルーム中。


「見知った顔も多いが、A組の担任なった田中だ。1年間よろしくな」

「え~山口先生の方がよかったなぁ~」

「清水ぅ~そんな寂しいこと言うなよ。俺バスケ部の顧問もやってるだろ?

 確かに恵梨香の方が生徒に人気だけどさぁ・・・」

「冗談だよ先生落ち込まないで!」

「・・・とりあえず清水は次の部活は特練な」

「ひっでぇ~」


山口(恵梨香)先生は田中先生の奥さんでB組の担任だ。

美人でサバサバした性格で生徒からも人気だけど、未だに冴えない田中先生が山口先生を射止めたのは謎とされている。


「あ~とりあえず、今日はそんなに話すこと無いんだが、とりあえずクラス委員だけ決める。田辺、小早川お前ら今年も学級委員どうだ?」

「え?俺達?」

「去年、中々手際も良かったしな」

「別に構いませんが、やりたい人とかいるかもしれませんし・・・」

「うん。私も別にどちらでも」


「じゃ 誰か学級委員やりたい人いるか!」

「・・・・」

「ということだ。田辺、小早川頼んだぞ。お前たちなら多分大丈夫だ」

「「は はぁ」」

「でだ、着任早々初仕事として委員選考の進行頼むな!」


と俺達に仕事を振って椅子に座る先生。

もしかして進行するのが面倒だったから押し付けただけなのでは・・・

でもまぁこの軽さが田中先生の良いところでもあるんだけどな。

去年なんて、俺自己紹介した後すぐに楓を追いかけて出て行っちゃったのに注意されただけだったし。

あんなの田中先生じゃなかったら何言われてたか・・・

でもあれからもう1年経つんだな。

当時を思い出しながらふと楓を見る。

1年前より少し大人びた感じがする俺の恋人。


「ん?どうしたのケンちゃん」

「何でもない。ただ楓は可愛いなってな」

「こ こんなところで何を!」


「せんせ~ 何だか暑いっす」

「あ~清水。俺もその意見は賛成だ。田辺、小早川!教室が暑くなるからほどほどにな」

「もう!ケンちゃんのバカ」


怒られてしまった・・・

まぁその後、気持ちを入れ替えて?真面目に楓と2人司会進行を行いクラスの各委員は問題なく決まった。


「じゃ先生今日はもうこれで終わりですよね」

「おぅ進行ありがとうな。じゃ田辺と小早川以外はこれで終了だ。

 今年は高校生活最後の年だ。遊びを楽しむの良いが部活に受験に悔いの残らないよう過ごして欲しい。じゃ今日は終了!」


と先生の言葉を受け皆帰り支度を始める。

ん?俺と楓以外?


「先生。俺と楓は何かあるんですか?」

「ああ、各クラスの学級委員は明日の入学式準備を手伝うんだ。俺達教員も居残りだ。まぁそういうことだから付き合えな」

「「はぁ」」


何だか色々と田中先生に嵌められた気がするのは気のせいだろうか・・・


その後、B組、C組の学級委員になった結城と渋川さん、長谷部と湯川さん、面識はないけどD組の吉本と田中さんと配布資料の準備や椅子の設置、誘導の確認など先生方と打合せをして解散となった。


「なんだか疲れたけど楓は良かったのか学級委員。3年連続だろ?」

「うん。こういう仕事嫌いじゃないし・・・それにケンちゃんと一緒に居る時間も増えるしね」

「そ そうか?うん それなら大丈夫だ」


やっぱり可愛いな楓は。


-------------------------------

そして翌日。


「お姉ちゃん。変じゃない?」

「うん。可愛いよ!高坂君も惚れ直しちゃうかもよ」

「そ そうかな!」


俺と楓は紅葉や入学式に参加する五月おばさんと一緒に学校へ行くため今日は小早川家に立ち寄っていた。

高校生か・・・何だかついこの間受験勉強してたのにな。


「お母さん!そろそろ行かないと」

「あら、もうこんな時間。紅葉、健吾君行きましょ」


いつもと違ってビシッとスーツを着た五月おばさんと真新しい制服を着た紅葉と一緒に学校へ向けて歩いていると


「おっはよう!紅葉ちゃん!」

「あ、幸ちゃん」

「やぁ五月さん。今日は大樹君は仕事かな?」


と相良家一行と出会った。

そうか幸治さんの娘さんも入学だったな。


「幸治さんに律子さん おはようございます。大樹さんも来たがってたんですけどね。外せない仕事が入ったらしくて・・・」

「そうかそれは残念だね。健吾君と楓さんも幸の先輩になるんだな。よろしく頼むよ」

「はい!こちらこそよろしくお願いします」


幸治さんにも色々と助けてもらったし俺に出来ることはしてあげたいところだな。と言っても勉強教えてあげる位かな?


学校に着いた俺達は、いったん紅葉達と別れ教室でショートホームルームを行った後に入学式が行われる体育館へと移動した。


そして、昨日皆で準備した椅子に座って待っていると、程なくして司会の教頭先生が"これより川野辺高等学校の入学式を執り行います"と入学式の開始を宣言した。


体育館入り口から新入生が入場してくる。

紅葉や高坂君も居たけど2人とも珍しく緊張した面持ちだ。


「ふふ 紅葉緊張してるみたいだね」

「だな。珍しいなあんなに緊張してるの」


校長先生や来賓の方々からのありがたくも長いお言葉が続き、在校生代表からは生徒会長の赤沢さんが歓迎の言葉を贈った。

卒業式に続いて頑張ってるよな。


そして、新入生代表の挨拶。

例年入試の成績優秀者がするらしいんだけど・・・・まさかの幸ちゃん。

挨拶も様になってたし堂々としていた。

洋さんに凛子さんもだけど相良家ってスペック高すぎだろ。

俺が勉強とか教えるまでもなさそうじゃん。。。


「なぁ楓。幸ちゃんってバスケも上手いんだろ?」

「うん。瑞樹の後任でキャプテンもやってたよ」

「勉強できてスポーツ万能とか・・・凄いな」

「うん。それに可愛いしね」


確かに普通に可愛い。

性格も良さそうだしモテるんだろうな。

1年生はこの後、各クラスで学校の説明を受け明日からはオリエンテーションだ。

今年は何人バスケ部に入ってくれるんだろ。



新しい1年が始まる。

部活に受験に・・・俺も頑張らなきゃな!





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る