第163話 先輩達の卒業式

先輩達との試合から数日。

ついに卒業式の日がやってきた。


いつもは部活で使われている体育館も今日は沢山の椅子が並べられいつもとは違う様相となっている。


「ねぇあれって恩田先輩の御両親かな」

「ん?あっそうだねきっと。お母さんの感じが恩田先輩と似てるかも」

「あっちは吉川先輩のお母さんかな?」


在校生として先に椅子に座っていた俺達は保護者席を見ながら話していた。

高校の卒業式だしそれ程保護者とかは来ないのかなと思っていたけど結構座席は埋まっている。

まぁうちの親は、こういうイベントごと大好きだから絶対来そうだけどな・・・

などと話をしているうちに司会を務める山口先生の案内にて、卒業生が入場してきた。


学年主任でもある前田先生に続き小宮先輩や恩田先輩の3年A組から順に卒業生が入場してくる。

バスケ部の先輩方、喫茶店のお客様でもある小山内先輩や梶先輩、楓とも色々あったテニス部の二階堂先輩に春川先輩、そしてバイト仲間で藤原の彼女でもある森田さんの綺麗なお姉さん(名前何だっけ・・・)

見知った顔もたくさんいるけど皆今日で卒業だ。


式は、校歌斉唱、卒業証書授与、学校長式辞、来賓祝辞と滞りなく進んだ。


そして、影が薄いとか目立たないとか言われつつもしっかりと在校生代表の役目を果たし素晴らしい送辞を行った生徒会長の赤沢さん。


卒業生代表としての答辞は元生徒会長の近藤夏希先輩が締めた。

生徒会長をしていた頃は何となく怖い感じの印象だったけど、今日は何だか笑顔も柔らかい感じがする。やっぱり生徒会に居た頃は気が張ってたんだろうか?


卒業生が退場し卒業式も無事終了。

自分が卒業するわけではないけど、何となく感傷的な気分になるよな。


「みんな卒業しちゃうんだな」

「そうだね。私達も来年は卒業だよ?何だか早いよね」

「来年の今頃・・・俺達も一緒の大学に合格してるといいな」

「もちろん♪一緒に勉強も頑張ろうね!」


と楓と教室に向けて歩いていると小宮先輩に恩田先輩、それに小山内先輩とその彼女の梶麗香さんが校舎の前で記念写真を撮っていた。

それにしても麗香さんが"あの"梶のお姉さんというのはいまだに納得がいかない・・・(麗香さんってすごい美人さんなんだよな)

俺と楓は先輩たちの近くに行って声を掛けた。


「先輩!卒業おめでとうございます」

「おぅありがとな」


式が終わったという事で先輩たちも晴れ晴れとした顔をしている。


「先輩たちは川野辺大学なんですよね?」

「そうだよ。勉強頑張ったしねぇ。みんな揃って川野辺大学だよ♪」

「じゃあ地元は変わらないですし卒業されても何処かで会うかもしれませんね。

 あ、小山内さん達は確か駅の近くに住むんですよね」


と、恩田先輩が食い気味に会話に入ってきた。


「そうそうオサゲン君と麗香ちゃんは一緒に住むんだよ!ずるくない?私と雄一は実家から通うのに」

「いいだろ僕達は実家も遠いし一応親公認で将来も考えての同棲なんだから」

「え~ !ず~る~い! 私と雄一だって親公認なんだか~ ね!雄一」

「え、あぁそうだな ・・・まぁ俺達は俺達のペースでな?」


小宮先輩・・・恩田先輩って圧が強そうだし苦労してますね。


「あ、同棲と言えば田辺君と小早川さんも一緒に住むんでしょ?竜太郎に聞いたよ?」

「ちょ!楓それほんと!」


あ~麗香さんそれここで言わなくても・・・それに梶よ微妙に情報違うし。

だって楓が俺と同棲ならお前だって同じアパートなんだから扱い同じになるだろ。


「えっと、あの・・・・ちょっと違くて、、ケンちゃんのご両親がアパート経営を始めたから私もそこに住むことになっただけで・・・同じ部屋に住むわけではなくてですね」

「そうそう。私の弟もそのアパートにお世話になるんだよね。

 でも田辺君と小早川さんは隣同士の部屋なんでしょ?」

「ま まぁそうですけど・・・・」


何だかこの辺りの話の面倒な絡み方・・・麗香さんはやはり梶のお姉さんかもしれない・・・


「いいなぁ~隣同士とかぁ~ 私も雄一と隣同士でもいいから一緒に住みたいなぁ~」

「わ わかったから、、ちょっと真剣に考えるからさ」

「やた!言質取ったからね!約束だからね!嘘ついたら許さないんだからね!

 ゆ・う・い・ち♡」

「は い ・ ・ ・」


恩田先輩。目が笑ってないです。

小宮先輩・・・・とりあえず頑張ってください。


先輩たちはこの後保護者含めた謝恩会だ。

場所は凛子さんの結婚式場の大広間を貸し切って行うそうだ。

この辺り大きなホテルとかあんまりないし、送迎バスとかも出してくれるみたいでサービスいいからね。


先輩達と別れ、教室でショートホームルーム。

今週末の終業式で高校2年の1年は終了し春からは3年生だ。

クラス替えもあるのでこのメンバーで授業やホームルームが行われるのもあと少し。また楓や裕也達と同じクラスになれるといいな。


「健吾、この後何か用事あるか?美玖や結城とカラオケ行くんだけどお前らも来ないか?」

「お、いいね!楓も行くだろ?」

「もっちろん!」

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