第158話 新たな入居者?

「田辺」


部活を終え帰ろうとしていると暗がりから声を掛けられた。


「ん?誰・・・ってもしかして梶か?」

「もしかしなくても梶だ」

「いや・・・あの変・・じゃなくて茶髪のリーゼント的なの止めたのか?っていうか何かあったのか?」


そう。俺の知ってる梶はドコゾの不良マンガに影響を受けたとかで昭和の不良的な制服に身を包み髪型もリーゼントっぽい感じにしてたんだよな。

川野辺は自由な校風なのと何気に梶って成績が良いらしく周りもただの変わり者位な感じで強くは注意してなかったんだよな。


「あぁ・・・ちょっと心境の変化でな」

「そうなんだ。でも、その普通の格好の方が似あってるしカッコいいと思うぞ」

「そ そうか?」

「サッカー部に入って人気も急上昇みたいだし、その恰好ならいい線行くと思う」

「だといいんだけど・・・実は・・・俺図書委員なんだけど後輩にかわいい子が居てな、あのかっこだと怖がらせちゃいそうだから普通の恰好にしてみたんだ」


いや・・・お前"ちょっと心境の変化"というかモテたいだけなんじゃ・・・

あの恰好結構ポリシー持ってやってたんじゃ・・・

それにあの格好で図書委員やってたのか?(まぁ梶って中身は優等生だからな)

普通に受付に不良が座ってたら怖いだろ。女の子の前にそっち気にしろよ。


「それはそうと、中学の時の友人から田辺が恋愛相談やってるって聞いてな。

 どうやって声掛けたらいいかとか相談にのってもらおうかと」

「ん?友人?」

「あぁ藤原って言うんだけどバイト仲間なんだろ?」


吉見から藤原、藤原から梶ってどんな紹介なんだよ。

と思っていると


「ケンちゃん お待たせ・・・・ってもしかして梶君?どうしたの何かあったの!」


俺と同じような反応してるけど、まぁそうだよな。


「で、相談に乗ってくれるか?何なら女性の意見も聞きたいから小早川も」

「え?何の相談?」

「う~ん。まぁこんなところでってのもあるし、うちに来るか?近いし」

「うん。今からご飯作る予定だったし梶君も食べてきなよ!」

「へ?小早川が食事作るのか?」


その後、戸惑ってる梶を連れて帰宅。

楓が食事を作ってる間"恋愛相談"ではなく、最近買ったサッカーゲームを楽しんだ。


「あぁくそ!やりこんでるな田辺」

「ってそういう梶も上手いじゃんか」


どうやら梶も同じソフトを持ってるらしく中々白熱した試合となった。

そして、前半戦が終わったところでキッチンから楓が食事を持ってきてくれた。


「出来たよぉ~」

「おぉ美味しそうじゃん」


部活終わりということで生姜焼きに唐揚げ等の肉中心の結構ガッツリ系なメニュー。俺達もだけど梶もサッカー部終わりだったらしく結構量はあったはずなのにあっという間に食べきってしまった。


「ふぅごちそうさん。美味しかった」

「お粗末様。自分の作った料理で喜んでもらえると嬉しいね」

「にしても小早川が食事作ってるのも驚きだけど田辺の家で一緒にとか・・・お前らもう同棲すればいいんじゃないか?」

「まぁ一応まだ高校生だしな。大学にでも通うようになったら考えるよ」

「大学になったら同棲か・・・・」


「どうかしたのか?」

「いやな。俺の姉貴って今3年生なんだけど彼氏と一緒に川野辺大学に合格して4月から同棲始めるんだよ」

「わぁ~なんだか素敵!お姉さんおめでとうだね」

「まぁな。俺としても幸せになって欲しいしいい話だよ」


へえ~ 梶ってお姉さん居たんだ・・・ってもしかして


「なぁお姉さんって麗香さん?」

「あぁ名前は麗香だけど 姉貴の事知ってるのか?」

「あぁバイト先のお客さんで何度か彼氏の小山内さん含め会ったことあるよ」

「そうなんだ」


「何か問題でもあるのか?」

「いや、小山内さんはいい人だしむしろ姉貴には勿体ないくらいなんだけど、俺んちって親は都内で仕事してて、姉貴と2人暮らしなんだよな。今住んでるところって家賃も高いし姉貴が出てくとすると一人で住むには広いし不経済だろ?引っ越し考えてるんだけど学校の近くは結構空きが無くてな」


確かに新入学の時期だしこの辺りは高校生や大学生のニーズが高いからな。


「そっか。今住んでるのって川北ターミナルのとこのタワマンだよね?確かに家賃高そう」

「高いんだよ・・・おふくろが出してくれてるけどこの先バイトするとして

も大学の学費とかも掛かるし節約はしたいしな」


ちゃんと先の事考えてるとか偉いな。やっぱりこいつ真面目だわ。

でも、アパートか・・・


「・・・だったらここなんてどうだ?」

「へ?田辺と一緒に住むってことか?・・・いやまて俺にそんな趣味は」

「勘違いするなよ。俺の方こそ一緒に住むとかごめんだよ」

「それはそれでへこむな・・・じゃなんだ"ここ"って」


「いや、ここのアパートうちの親が大家なんだよ。出来たばかりでまだ部屋も全部埋まってないから不動産屋に聞いて見てやろうか」

「マジか!それ助かるわ。ここなら学校も徒歩圏内だし・・・姉貴たちが同棲始めるマンションにも結構近いしな」

「了解。実際に住むかどうかは条件を聞いて不動産屋さんと調整してもらうことになるけどそれでいいよな?」

「ああ、十分だ。俺の携帯番号伝えて構わないからよろしく頼む」

「オッケー」


という事で契約できるかはまだ分からないけど、空いている亮兄の隣の部屋についてざっくりした間取りや要件

など説明してやった。

予算的にも大丈夫そうだし梶も結構乗り気で嬉しそうな顔をして帰っていった。



「じゃ、ありがとな。不動産会社からの連絡待ってるよ」

「ああ 多分明日には電話行くと思う」

「了解だ。あ、小早川も夕飯美味しかったよ」

「うん。ありがと!」

「じゃな!」


と梶は満足した顔をして帰っていった。

何だか良いことした気分だな。


「ん?そういえばあいつって何しに来たんだっけ?」

「さぁ・・・・ご飯食べに来たんじゃない?」

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