第157話 新しい生活へ

[ピンポーン]

"部屋"のインターホンが鳴る。

『何だよこんな時間に・・・』

時計を見るとまだ5時前だ。

俺は眠い目をこすりドアを開ける。


「雫姉・・・こんな朝っぱらからなんだよ。それに今日は日曜日だし、まだ5時じゃん・・・」

「不用心ねぇ~いきなりドア開けるとか」

「エントランスじゃなくて俺の部屋のインターホン鳴らせるのって、アパートの住人だけだろ?今のところ雫姉か亮兄だけじゃん。だとすると亮兄がこんな早く起きてるわけないし」

「失礼な!俺も来てるぞ」

「うぉ亮兄がこんな朝早く・・・何で?」


ドアの陰から亮兄が顔をのぞかせてきた。

朝に弱い亮兄がこんなに早く起きるなんて・・・これも雫姉の力なのか?

などと失礼なことを考えていると


「何って、楓ちゃんと毎朝ランニングしてるんでしょ?今日から私と亮君も一緒に走るから」

「へ?ランニング?確かに続けているけどいつもはもっとスタート時間は遅いよ?」


ランニングは今も続けているけどスタートは6時。

雨や雪などでない限りは毎朝1時間程度ランニングや柔軟をしている。

そして、シャワーを浴びサッパリしてから朝食を食べて朝練へ向かうってのが俺と楓の朝のルーチンとなっている。


「雫は高校時代から毎朝この時間に走ってたんだってさ。俺も付き合うからトレーニングと思って頑張ろうぜ」


と亮兄。俺はともかく朝大丈夫なのか?

でも、夏に一緒に走った時も雫姉のペース凄かったもんな。

全国大会MVPとか言ってたけどそれだけ努力もしてたって事か。


「そうだね。全国レベルになるにはそれくらいのトレーニングが必要だってことだよな。こちらこそよろしく頼むよ」

「うん。それでこそ健吾!」

「あ、でも楓はいつもの時間に来ちゃうんじゃ?」

「大丈夫もうそろそろ来ると思うよ。昨日引っ越し手伝ってもらった時に話したから」

「そうなんだ。じゃ支度するからちょっと待ってて」


相変わらず強引というか行動力あるというか。。。

俺は部屋に戻りトレーニングウェアに着替え外に出た。

と俺と色違いのウェアを着た楓がちょうど到着したところだった。


「おっはよう〜」

「おはよ楓も朝良く起きれたな」

「うん。雫姉と一緒に走れると思うと何だか嬉しくって」


相変わらず雫姉のこと大好きだな。

一応俺の従姉なんだけど・・・亮兄の相手もしてやれよ。何だか可哀相だぞ。

ん?なんだ雫姉。俺と楓をマジマジと見つめて。


「ねぇ健吾。そのお揃いのウェアどこで買ったの?」

「え?これ?隣町のショッピングモールに正月行ったときに買ったんだけど」

「ショッピングモールね!亮君私達もお揃いのウェア後で買いに行こうよ!」

「お おぅ・・・」


羨ましかったのかお揃いのウェア・・・

何だかペアルックとか好きそうだもんな雫姉。



楓が到着したということで、アパート前で軽く準備運動をした後、川野川の河川敷にあるサイクリングコースをランニング。

相変わらず雫姉のペースは速いんだけど俺と楓も夏以降雫姉に負けないようにとランニングの量を増やしていたので何とか遅れずについていくことが出来た。

そして、意外だったのが亮兄。

雫姉のペースに遅れずついてってんだよね。

伊達にコーチはしてなかったんだな・・・


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ランニングを終え俺と楓はシャワーを浴びた後一緒に朝食を食べた。

平日はお互いの家に帰って支度してから一緒に学校に行くんだけど、土日は楓もうちでシャワーを浴びて食事していくことが多いんだよね。

何気に着替えとかも置いてあるし・・・この間引っ越した時もいつのにか楓の私物が増えてたんだよな。

おじさん達は何も言わないけど良いんだろうか?


「ねぇケンちゃん 午後はどうする?って今日バイトだっけ?」

「いや。今日は新しい子の研修するとかでバイトは交代したんだ」

「へぇ新しいバイトが入るんだ」

「あぁ。っていうか楓の後輩だぞ」

「そうなの?」

「バスケ部の大室って子」

「え?小春?」

「あぁ。村田さん経由で長谷部に話があったらしい」

「へぇ小春がねぇ~まぁでもあの子には向いてるかも」

「大室さん達ももうじき2年だし新しい事でも始めたいんじゃないか?」


とか言いつつ俺達ももうじき3年なんだよな。

楓達と再会してもうじき1年。

本当この1年は色々な事があったよな。

親父達も帰ってくるし生活も変わってくるのか。

それにもうじき小宮先輩や恩田先輩も卒業だし紅葉も後輩になる。

この先はどんな1年になるんだろう。


「ケンちゃん?」

「あ、悪い考え事してた。そうだな。映画でも見に行くか。何か見たいのとかある?」

「映画!じゃあさアニメだけど"婚約破棄された公爵令嬢ととある執事の物語"ってどうかな?前に深夜アニメで放送してたんだけど中々面白くて。ちょうど映画化されたんだよね」

「へぇそうなんだ。じゃその映画が候補ってことで映画館行こうか」

「うん!」


その後、いつものショッピングモールに出掛け映画を楽しんだ。

楓オススメということだけあって中々楽しいストーリー展開の映画だった。


映画を見終わった後。カフェで映画の話をしながら盛り上がっていると対面にあるファストショップに雫姉と腕を組んだ亮兄が見えた。


本当仲いいよなあの2人。

俺達も周りから見るとあんな感じなのかな。


うん・・・やっぱり少し自重しよう(結構恥ずかしいぞアレ)


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