第156話 田辺雫再び②

翌日。

俺の部屋には朝から亮兄と楓が居た。


「う~折角 ケンちゃんと2人きりで朝食食べようと思ってたのに」

「悪いなぁまだ台所周り片付いてなくて」


土曜の朝ということで楓がいつもの如く一緒に朝食を食べに来ていたわけだけど、昨日引っ越してきたばかりで部屋が片付いていていない亮兄が俺の部屋にやってきた感じだ。

まぁ楓も亮兄は従兄なんだからそんな邪険にしなくても・・・


「雫姉は昼前には着くんだっけ?」


結局俺んところには昨日"明日引っ越すからね"としか連絡来なかったんだよね・・

亮兄のところにはちゃんと連絡来てるのか?


「とりあえず向こうで荷物見送って、本人は電車で来るとか言ってたな。さっき地元の駅に向かうとかライン来てたぞ」

「え!もう向かってるの?」

「みたいだな」


まぁ雫姉が来ても何かすることがあるわけじゃないけど、雫姉の地元からだと1時間くらいで来そうだよな。思ってたよりだいぶ早い。


「ん?ちなみに"さっき"っていつ頃?」

「3,40分くらい前かな健吾のところに来る前にやり取りしてたから」

「え!じゃぁもうそろそろ着くんじゃない?」


などと言っていると


[ピンポーン]

アパートの玄関にあるインターフォンがなった。

受話ボタンを押すとそこには雫姉が。


「早っ!」

「あ~け~て~」


俺がオートロックの解除ボタンを押すと"サンキュ"と一言告げて雫姉はエントランスへと消えていった。

そして数秒と待たずに今度は部屋のインターフォンが。

鍵を開けるとそこには満面の笑みをたたえた雫姉が居た。


「ふふ 亮君も来てるんでしょ♪今日からよろしくね管理人さん」


別に管理人というわけでもないんだけど・・・


その後、雫姉にも部屋にあがって貰って、しばらくお菓子を食べながら盛り上がっていると雫姉のスマホに着信が。

どうやら引っ越し会社のトラックも近くまで来たらしい。


「トラックがすぐそこの国道まで来てるみたいだからちょっと迎えに行ってくるね!」

「あ、だったら俺も一緒に行くよ」

「うん」


と2人は仲良さげに手を繋いで部屋を出て行った。


「何だか凄くラブラブだね」

「だな。俺達も周りからはあんな感じに見えてるのかな」

「多分・・・嫌?」

「なんで?いいだろ本当に仲が良いんだし」

「ふふ 良かった。嫌って言われたらどうしようかと思ったよ」


でも・・・バカップル言われるし、少しは自重しないとな。


---------------------

程なくしてアパートの駐車場にトラックが入ってくるのが見えた。

俺の部屋は1階なので庭越しに駐車場が見えるんだよね。


「着いたみたいだし、俺達も行こうか」

「うん」


俺は部屋の鍵を閉めて楓とトラックに向かった。

すると、本橋さんと津川さんも到着しており亮兄から雫姉を紹介されていた。

・・・後で感想を聞いてみよう。


雫姉はアメリカに留学する時は着替えや勉強道具をメインに家具は基本持って行かなかったらしいけど、今回は近場だからと実家にあった自分の部屋の家具も持ってきたらしい。ベッドやタンス、ドレッサーなどなど結構大きめの荷物もある。

が、引っ越し業者の方2名に加えて本橋さんと津川さん、それに俺や亮兄も運ぶのを手伝ったので、案外早い時間で搬入も家具の配置も完了した。

白系統の色で揃えられた家具。

当然のことかもだけど女性の部屋って感じだな。


そして、引っ越し業者の方が帰ったとこで俺達は一旦雫姉の部屋に集まり休憩をとった。


「いや〜みんなお手伝いありがとうね。これ、アメリカ土産って言うわけじゃないけど実家の近所の洋菓子屋さんの焼き菓子なの良かったら食べて」

「うわぁ美味しそう!いただきま〜す」

「テレビとかでも紹介された人気商品なんだよ」

「うん 美味しいです!」


楓・・・それ2つ目だぞ。少しは遠慮を。

でも本当美味しいなこの焼き菓子。


「そういえば、田辺先輩はやっぱりバスケ部には入るんですか?」

「うん。三上さんに誘われてるし・・・バスケ好きだしね」

「「おお!!」」


と本橋さんに津川さん。田辺先輩って呼んでるんだ。

確かに亮兄と同学年だから先輩なんだろうけど、俺も田辺だし何だか変な気がするな。


「先輩って高校の時全国MVPになったんですよね。女子バス凄い戦力アップじゃないですか!」

「三上先輩も最近調子いいし、来年は現役の高校MVPも入学するんだろ?」

「凄いよな。それに先輩ってお綺麗ですし大学にファンクラブとか出来ちゃうんじゃないですかね」

「ふぁ ふぁんくらぶ?」

「た 確かに考えられるな・・・」


ファンクラブ?大学ってそんなのとかあるのか?

でも、雫姉ってスター性というか注目浴びるタイプだしな。

亮兄も心配だろうな。


「だ 大丈夫だからね。私は亮君一筋だから!」

「知ってるよ。少し妬けるけど心配してないから大丈夫だ♪」


何この甘い空気。

2人して見つめ合っちゃって・・・・

本橋さん達も気まずそうじゃん。


その後、力が必要そうな対応だけ手伝い男性陣は解散・撤収となった。

女性の引っ越しだし、色々と俺達に見せたくないものとかもありそうだからね。

ということで雫姉の部屋には楓が一人残り片付けを手伝うこととなった。

亮兄も本橋さん達を駅まで送って、後は自分の部屋の片付をするそうだ。

まだ片付いてないとか言ってたしね。


雫姉に亮兄が引っ越してきてアパートも俺の部屋含め3部屋埋まったんだよな。

残りの3部屋はどんな人が来るのかな。


親父達も再来週帰国だし賑やかになりそうだな。


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