第153話 新居へと①
2月も半ばを過ぎた土曜の朝。
俺は、相良さんと一緒に親父達と住む新しい家に来ていた。
「じゃ健吾君、とりあえず母屋と賃貸の部屋の分の鍵一式を渡しておくからな」
「はい。ありがとうございます。確かに頂きました」
「無くすなよ。雄一達の荷物も届くんだよな?」
「はい。親父達の荷物も確か来週には届くって言ってましたし俺も早めに引っ越しちゃいます」
そう。まだまだ先と思っていたけど、いよいよ来週末に親父達が帰国してくる。
とりあえず荷物を先に送るそうなので、俺は相良さんから鍵を貰って荷物の受け入れが出来る様に先行して新居に引っ越しすることになったんだ。
まぁ引っ越しと行っても一人暮らしでそれ程荷物も無いし引っ越し先も近いので小早川家の方々に手伝ってもらって荷物を運ぶだけなんだけどね。
「了解だ。何か家の使い方で困ったことや気になることがあれば遠慮なく電話してくれ。後、契約関連の書類は雄一が帰国したら直接渡すからな」
「はい。色々とお手数お掛けします」
「気にするなよ。後は大丈夫かな?」
「そうですね・・・あ、先生との新婚生活はどうですか?」
「うっ・・・・そ それこの家と関係ないだろ~」
困りつつも相良さんの顔は少しニヤケ気味だ。
新婚さんだし甘々な生活してるのかな♪
まぁ先生も学校では終始にこやかだし幸せなんだろうけどね。
「いや~そこは生徒として先生が幸せにしてるか気になるじゃないですか♪」
「そ そりゃ美香は幸せだぞ(多分)、幸せにするって結婚式でも宣言したしな」
「流石相良さん!有言実行ですね。何だか幸せが滲み出てますよ」
「こら。大人をあんまりからかうんじゃないぞ」
「すんません。でも良かったです。先生って結構生徒から慕われてるんですよ」
「そうだろうな。披露宴でのビデオレター見ればわかるよ。
美香もあのビデオレター焼いたDVDは一生の宝物だって言ってたぜ」
「・・・何だかそう言ってもらえると嬉しいですね」
結構大変だったけどサプライズやって良かったな。
「じゃ。俺は可愛い嫁さんが待ってるからそろそろ帰るな。大樹先輩や五月さんにもよろしく伝えといてくれな」
「はい!」
さらっと"可愛い嫁さん"とか最後惚気てるけど、あれって無自覚?
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相良さんと別れて俺は一旦自分の家に帰宅した。
家では楓や紅葉、それに五月おばさんが荷物の整理をしてくれているはずだ。
正直3人がかりで対応するほどの荷物量でもないんだけど手伝ってくれるのはありがたいよな。
「あ、ケンちゃんおかえり」
「片付けありがとな。ん?おばさんと紅葉は?」
「あ、大体箱詰めが終わったからいったん家に帰ったよ。お昼過ぎにお父さんと車で来てくれるって」
「そっか。おじさんも休みの日なのに申し訳ないな」
毎日遅くまで仕事で疲れてるのに悪いよな本当。
でもおじさんも親父達が近所に引っ越してくるってことで何だか嬉しそうではあったな。
「そういえばさ、雫姉も来週には引っ越してくるんだよね?」
「あぁそうみたいだな。もう帰国して実家に居るみたいだし、こっちの準備ができたら引っ越してくるんじゃないか?」
「そっか。何だか雫姉と会えるのも楽しみだね」
「だな。まぁ・・・居たら居たで大変そうだけどな・・・」
「そういうことは言わないの!
だけど予想通りというか・・・亮兄まで引っ越してくるとはね」
そうなんだよね。前に楓とは冗談で話していたけど、雫姉がうちと併設のアパートに住むことを亮兄に教えたら引っ越してくるって言いだしたんだよね。
楓の予想通りというか"恋人同士でアパートの隣同士のシチュエーションとかよくね?"とか言い出して・・・気持ちはわかるけどさ。
ということで丁度3月で今のアパートも更新時期だったらしいからそのタイミングでうちに引っ越してくるらしい。
まぁ家賃はちゃんと払うということなので全然構わないのですが・・・イチャつくのはほどほどにね。
などと話してるうちにもうお昼。
食事は楓がお弁当を作って来てくれたということで段ボール箱が並びがらんとしてしまった部屋の中で一緒に食べることになった。
「何だかこの部屋を出ちゃうのもちょっと寂しいね」
「そうだな。楓もしょっちゅう遊びに来てくれたし、裕也や結城達と勉強会したり・・・住んだのは1年弱だけど思い出いっぱいだな」
「うん。でも・・・新しいおうちでも思い出いっぱい作ろうね♪」
そう言って俺にもたれ掛かってくる楓。
俺はそんな楓を抱きしめそっとキスをした。ちょっと頬を染める楓。
「そうだな・・・沢山思いで作ろうな」
「うん♡」
とお互い見つめ合いいい感じの雰囲気になってきたところで、大樹おじさんからスマホに電話が掛かってきた。
「そろそろ、そっち行くけど大丈夫か?」
「はい。大丈夫と言えば大丈夫です!」
「ん?あぁじゃあ車で行くから荷物だせるようにしておいてくれ」
焦って変な返事をしてしまった。
俺の腕の中で楓が笑いをこらえてプルプルしてる。
「ほ ほらおじさん来るみたいだから荷物運び出す準備しようぜ」
「は~い」
俺から離れた楓は片付けを再開してくれた。
まだ腕の中に残る楓の温もり。
『本当、新しい家でも素敵な思い出作ろうな』
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