第154話 新居へと②

「これで全部かな?」

「はい。ありがとうございます」


おじさんの車はミニバンタイプで比較的荷物もたくさん積めるので、2往復ですべての荷物を新居に運び込むことが出来た。

ちなみに新居の賃貸部分は1階の2部屋の内1部屋(102)に俺が、2階4部屋の内2部屋(201,202)に雫姉と亮兄が住む。

残りの3部屋(101,203,204)は相良さんの不動産会社で賃貸公開して住んでくれる人を募集するんだそうだ。

特に住人の制限は設けないらしいけど部屋の間取りやロケーション的に川野辺大学の学生が住む可能性が高いそうだ。どんな人が住むんだろうな。


間取り的には1LDKが1DKになるので前より狭いんだけど、1部屋の広さはそれなりに広いし一人で住むには十分だ。


「じゃ、そろそろ戻るけど、楓は置いてくからこき使ってやってくれ」

「もう!お父さん」

「はは 冗談だよ。それから夕飯は家で用意しておくから区切りが良いところで家に来なさい。片付けは明日も出来るんだからあまり無理しないようにな」

「はい。ありがとうございます!」


ベッドやテーブル、本棚など大き目の家具の搬入や配置は大樹おじさんが手伝ってくれたおかげでだいぶ早く片付いた。

後は荷物を段ボールから出して元の場所に並べるだけだ。


「う~ん。やっぱり新築の匂いっていいね」

「そうだな。前のところも綺麗だったけど、ここは本当に出来たばかりだもんな」

「やっぱり私もお父さんにおねだりしてケンちゃんの隣に住みたいなぁ~」

「俺としては嬉しいけど・・・楓の家まで5分と掛からないだろ?」

「でも、朝ケンちゃんを起こしてあげたり、一緒にご飯食べたり、一緒に学校行ったり・・・駄目かな?」


流石親戚というか亮兄と発想が同じだぞ楓。

でもまぁ・・・俺も正直嬉しいけど・・・一応まだ俺達高校生だしなぁ

だけど隣の部屋がいつまでも空いてる保証もないし・・・

親父達に話したら・・・普通に隣の部屋確保してくれそうだけど。。。


「今度親父にでも聞いてみるよ」

「うん。私もお父さんに話してみる。同じ大学目指すんだし成績がいいケンちゃんと一緒の方が勉強も捗ると思うしね♪」


勉強が捗るって・・・楓。中々の策士だな。

それ言われたらおじさん断りずらいじゃん。

ついでに"一緒"って言っても一緒に住むわけじゃないからな。


その後、楓と手分けして荷物をもとの場所に戻す。

そういえば前の家に住み始めたばかりの時も楓に手伝ってもらったよな。

もうじき1年か。


「うん。だいぶ片付いたな。そろそろ楓の家行くか?」

「そうだね。あ、家帰る前におじさんたちが住む家の方も見てみたいな」

「あ、そういえば楓は前に内見の時に見たきりだったな」


俺は鍵の受け取りの時に相良さんと一通りの部屋は見たんだけど、楓を伴って親父達の住居の方へと向かった。

住居の入り口はアパート部とは一応分離されているんだけど勝手口?というか裏口的ドアがアパート側にあり俺の部屋のすぐ隣にある。

角部屋の101室ではなく102室を俺が選んだのもこれが理由だ。


俺は親父達の家の鍵を開け中に入った。

ドアを開け入った先はキッチン。広めのLDKの一角だ。

まだ家具が運び込まれていないので、ガランとしているけど来週には色々と家具が届いて生活感も出てくるんだろうな。


「いいなぁ綺麗なキッチン」

「楓んところもまだまだ綺麗だろ?」

「うん。でもアイランド型とかカッコいいよね~」

「その・・・たまにはここにきて料理とか作ってくれてもいいからな。多分親父も母さんも歓迎するだろうし」

「うん♪ おばさんにも色々とお料理教えてもらいたいな」

「・・・母さんは、五月おばさんみたいに料理上手じゃないぞ」

「ふふ でも田辺家の味を教えてくれるって言ってたしね」


確かにそんなこと言ってたな。でも未だに俺もわからないけど何だ田辺家の味って?そんな変わった料理あったか?


一通りの部屋を見て回った俺達は最後に屋上に行った。

庭が小さい分、この家には広めの屋上がついてるんだよな。

周りに高層建築の建物が無いので結構見晴らしは良い。


「あ、家が見える。それに川野辺高校も!」

「ほんとだな。思ったより眺めがいいなここ」


少し暗くなってきて星もいくつか見える。

この屋上も結構いいな。


その後、戸締りをして俺達は小早川家に向かった。

前に住んでいた家は小早川家と駅との中間位の場所にあったけど、新居は小早川家より先に建っている。

駅は前より遠くなったけど、小早川家とは以前より近い位の距離だ。


「ただいまぁ~」

「おじゃましまぁ~す」


「あら、思ったより早かったわね。家の方は片付いた?」

「はい。楓に手伝った貰ったので大体は」

「よかったわね。じゃ食事並べちゃうからリビングで休んでて」

「はい ありがとうございます」


五月おばさんにも今回は随分手伝ってもらったな。

親父達にちゃんとお土産買ってくるように連絡しておかないと。


その日の夕飯は、手巻き寿司。

こういうのって一人じゃやらないし何だか楽しいな。


ちなみに今週は雫姉の歓迎会、来週は親父達の帰国歓迎会を行うとの事だ。

もちろんアルコールありで・・・何だか飲む理由が欲しいだけの気も・・・


本当飲みすぎには気を付けてくださいよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る