第151話 冬のとある1日
とある土曜の昼下がり。
天気は晴れ。今日は部活もバイトもない。
俺はベッドにもたれ掛かりゲームをして遊んでいた。
そして、ベッドの上には寝ころんで雑誌を読む俺の彼女がいる。
今日は朝のランニングの後、そのまま家に居るんだよな。
「ねぇケンちゃん」
「ん?」
「暇です・・・」
「最近イベントごとが多かったし、たまにはのんびりするのも悪くないだろ?」
「でもさぁ~紅葉もデートだしこんなに天気がいいのに・・・」
紅葉も無事高校に合格し今日は高坂君とデートとの事。
今まで我慢していたぶんを取り戻すんだとか言ってたけど・・・
最近の中学生は進んでるよな。本当仲がよろしいことで・・・
「ねぇ~」
「をっ」
楓が俺の背中に抱きついてきた。
胸が・・・当たるんですが・・・ん?
「楓・・・胸大きくなった?」
「え?う うん。この間測ったら1サイズ大きく・・・ってわかるの?」
「そりゃ・・・楓の彼氏だし」
「もうケンちゃんのエッチ」
「ははは」
ちょっと照れたところも可愛いな。
でも確かにいい天気なのに家でゲームしてるのももったいないか。
「そうだな じゃ、そこら散歩でも行こうか」
「うん!」
コートを着て外に出た俺達は、まずは商店街の方へと向かった。天気はいいけど、やはり少し肌寒い。
川野辺駅前商店街。一時期はショッピングモールが出来たことで閉店する店舗も多かったそうだけど、最近は地域密着のサービスや空いた店舗を格安で貸し出す起業支援など新たな取り組みをすることで再び賑わいを取り戻しつつあるらしい。
ちなみに良く行く肉屋のおっちゃんが商店街組合の代表らしく各方面で大活躍らしい。怒られそうだけど人は見かけによらないものだ・・・
などと思いながら歩いていると、その肉屋のおっちゃんに声を掛けられた。
「おぅ楓ちゃんに健吾君。相変わらず仲が良いな!」
「こんにちわ~」
「ちょうどコロッケ揚がったところだけど食べないか?」
「え!ほんと。ケンちゃんどうしよ」
「そりゃ食べるでしょ♪」
「よし、じゃ隣にテーブルあるから座って待ってな」
と肉屋の脇にいつの間にか作られていたテーブル席に案内された。
小さいながらもテーブルとカウンター席がありちょっとした食事が出来るスペースとなっている。
「おっちゃんどうしたのこのスペース」
「ん?息子の健司の奴がな。手軽に食事が出来るスペースがあれば総菜系も売れるんじゃないかっていうから倉庫と駐車場を改装してな。ほらここって近くに学校も多いしな」
「確かにお店の前通ると美味しそうな匂いするもんね」
「そういうこと。追加料金でご飯やサラダも出すの考えてんだ。村田んとことも話しててな夜はあいつの店と提携して酒もだせばチョイ飲み屋に出来るかもってな」
「綾んところと提携かぁ。確かに最近会社とかも増えてるしね」
「おじさんたちも色々頑張ってるんですね」
「そりゃな。近くに大きなショッピングモールも出来たし独自色ださないとな」
・・・ごめんなさい俺達も結構ショッピングモール行ってます。
でも、これからは個人商店もアイデア勝負なところもあるのかもな。
美味しいコロッケと追加でハムカツも食べた俺達は肉の堀内を後にして何となく俺と楓が通っていた川野小へと向かった。
この町に戻ってきたばかりの頃も見に行ったけどやっぱり懐かしい。
多少修繕はされているみたいだけど、校舎も校庭や遊具も当時のまま。
あの校庭で楓や裕也とよくサッカーとかしたんだよな。
「あ、ケンちゃん校庭解放してるみたいだよ!行ってみない」
「おっ入れるのか!行ってみようぜ」
校庭に入ると現役小学生たちがサッカーや野球を楽しんでる。
大きな公園も近くにあるけど球技は禁止しているところが多いしな。
「懐かしいね」
「そうだな」
2人並んで校舎近くを歩く。
水飲み場の蛇口や鉄棒。
あんなに低い位置にあったんだな。
と、俺達のところにサッカーボールが転がってきた。
「すみませ~ん 取ってくださ~い」
「おぅ」
声を掛けてきたのはショートカットの元気そうな女の子。
何だか昔の楓みたいだ。
そんなことを思いながら俺はその子の足元めがけてボールを蹴り返した。
ボールは綺麗に女の子の足元へ。
「すっごーい お兄さんサッカー部なんですか!」
「え?俺?バスケ部だよ」
「へ?そうなんですか?」
ごめん混乱させた。
「ああ、小学生の頃はサッカーやってたけどな」
「そうなんですね!よかったらサッカー教えてくれないですか?今度クラス対抗の試合があって練習してるんです」
よく見ると女の子の後ろには同じ年頃の男女が数名。
お世辞にもあまり上手くはないみたいだ・・・
「どうする楓?」
「うん。久しぶりにやろうか!」
そうこなくっちゃな。
楓とサッカーするのも久々だな。ちょっと俺も楽しみだな。
「いいぞ!じゃやろうか。こっちのお姉さんもサッカー上手いぞ!俺なんか小学校の頃一度も勝てなかったんだからな」
「え!凄いお姉さん私にもサッカー教えて下さい」
「私も!!」
「え、ちょっと待って順番ね順番」
楓先生大人気だ。
何だか体育の先生にでもなった気分だな。
俺と楓のサッカー指導がわかりやすかったのかはわからないけど、皆楽しそうにボールを蹴っていた。対抗戦勝てるといいね。
「「ありがとうございました!!」」
「おぅまたな!」
「ばいば~い」
校庭解放終了の17:00。
辺りもだいぶ暗くなってきた。
「そろそろ戻るか?」
「そうだね。夕飯の買い物だけしてこ」
「そうだな」
どうやら楓が夕飯を作ってくれるみたいだ。
作ってくれるのは嬉しいけど・・・何だか今日って1日うちに居るよな。
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