第150話 紅葉の受験② -紅葉視点-
相良さんと先生の結婚式を終えた次の週。
今日は朝からケン兄がうちに来てた。
「じゃ じゃあ見るからね」
「ああ」
ノートPCの前に座る私を囲むような形でお父さんとお母さん、それにケン兄とお姉ちゃんが並び私の操作するノートPCをのぞき込んでいる。
そう。今日は川野辺高校の合格発表の日なのだ。
川野辺高校では郵送による合否の発表の他にホームページでの発表も行っていた。こちらは受験時に払いだされたアカウントとパスワードで専用サイトにログインすることで見ることができる。
ちなみに祝日というわけではないのでこの後はお父さんもお姉ちゃん達も仕事や学校に行く。私の合格発表を見るために待っててくれてるんだ。
[カチッ]
私がサイト内のログインボタンを押すと受験生専用の合否確認サイトに接続された。
そして、画面中央には私の受験番号と"合格"の文字が・・・
「紅葉おめでとう!!」
「やったな紅葉!」
「よくやったぞ!」
「今日の夕飯は合格祝いね」
「みんなありがとう!!」
みんなが口々にお祝いの言葉を述べてくれた。
1年間頑張ってきた成果だと思うと私も凄く嬉しい!
「って大樹さん!早く行かないと遅刻しちゃいますよ」
「お おぅそうだな。紅葉お祝いはまた夜にな。じゃ行ってくる」
「「いってらっしゃ~い」」
合格発表が7時からということで、いつも7時前には家を出るお父さんも家を出る時間を遅らせてくれてたんだ。
「でもよかったな。合格出来て」
「うん!ケン兄もありがとうね。あ、でも家庭教師もこれで終わりなのか・・・ちょっと寂しいかな」
そうだよね。受験勉強のための家庭教師だったんだもんね。
勉強は大変だったけど、お兄ちゃんが出来たみたいでちょっと嬉しかったんだよね。ケン兄って優しくてカッコいいし。
・・・でも、そっかでもお姉ちゃんとケン兄が結婚すれば本当のお義兄ちゃんになるのか。後数年まてばいいのかな。
「まぁ家庭教師は終わりかもしれないけど、今度は高校の先輩になるわけだし授業とかわからないところあれば遠慮なく聞いてくれよ」
「うん。ありがと♪あ、春からは田辺先輩って言った方がいいのかな♪」
「それはそれで何だかいい響きだな」
"先輩"とかちょっと恥ずかしいけどね。
でも本当にありがとうケン兄。
「あ、ケンちゃん私達もそろそろ行かないと朝練あるし」
「おっそうだな。じゃ紅葉また後でな!」
「うん。ケン兄、お姉ちゃん行ってらっしゃい!」
--------------------------------------
ケン兄とお姉ちゃんが高校に行き、お父さんも会社。
家にはお母さんと私だけになった。
「紅葉は今日どうするの?学校に報告には行くんでしょ?」
「うん。あとで行ってくるよ」
とりあえず先生には報告に行かなくちゃ。
それに・・・優君も合格したかな・・・・
お母さんとのんびりと朝ごはんを食べた私は制服に着替え川野中へと向かった。
"この通い慣れた通学路を歩くのもあと少しなんだなぁ"と少し感傷に浸りながら歩いていると
「紅葉~」
「あ、幸ちゃん」
「やったよ!合格したよ!」
「おめでとう!私もだよ!」
「じゃ春から同じ高校だねぇ!」
最近相良さんの親戚であることが判明したクラスメイトの相良幸ちゃんが走ってきた。
幸ちゃんは私と違って体育会系の元気っ娘なんだよね。
今もバスケやってるし高校に入ったらやっぱりバスケ部に入るのかな。
幸ちゃんと春からの高校生活の事を語らいながら職員室に向かった。
職員室の入り口には報告に訪れる生徒の列が出来ていた。
並んでいる生徒の中に優君は居ない。
もしかして不合格だったのかな・・・
「ん?誰か探してるの?もしかして高坂君?」
「え、、、あの・・・・なんで?」
「隠さなくったってみんな結構2人の関係気が付いてるよ」
「ふぇ?そうなの?」
「紅葉って嘘とか下手でしょ~」
隠してたつもりだったんだけど・・・
バレバレでしたか・・・・ってクラスのみんな知ってたの・・・
と幸ちゃんにからかわれているうちに私達の番となった。
「相良と小早川か。2人共川野辺高校だよな。合格おめでとう!」
「「ありがとうございます!」」
報告はあっというま。
この先の話とか少し先生と話をした後は、授業も無いのでこのまま帰ってもよかったんだけど何となく教室に寄りたくなって、職員室を出たところで幸ちゃんと別れた。
3年生は受験時期ということもあって自主登校。
いつもは賑やかな教室も今日は静かだ。
"3年B組"私のクラス。
引き戸を開けて教室に入ると人影が。
「優君?」
「え?紅葉ちゃん?」
何で教室に優君が居るの?
それに何だか慌ててるし
「あ、あの、後でメールしようか思ってたんだけど・・・・僕合格したよ」
「え!本当優君も川野辺高校合格したの!」
「"も"ってことは紅葉ちゃんも合格したんだね!」
「うん!これで春からは一緒に高校いけるね!」
「・・・・うん」
「ん?どうしたの優君」
どうしたの急に真面目な顔して?
「どうやって言おうか決まってから連絡しようかと思ってたんだけど・・・やっぱり前と同じでシンプルに言うことにしたよ」
「え?」
「小早川 紅葉さん。ずっと好きでした。僕と付き合ってください!」
「あ!」
「高校合格したんだし、もういいんだよね?」
まさかあらためて告白されるとは思ってなかったよ・・・
そんなの答え決まってるじゃない
「うん!私も優君の事が好き!」
「え!ちょっと紅葉ちゃん!」
もう我慢することはないんだ。
これからは優君の彼女なんだ私!思わず私は優君に抱き着いてしまった。
照れてる優君も何だか可愛いな。
今まで我慢してたぶん、これからはお姉ちゃん達みたいに優君とイチャイチャするんだから!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます