第147話 先生の結婚式①
「お父さん お母さん早く行こ!」
「楓。そんな慌てなくても大丈夫だよ。小島先生も会場も逃げたりしないから」
「まぁ洋は小島先生に逃げられたら困るだろうけどな」
「親父・・・それってシャレにならないから・・・」
今日は小島先生と相良さんの結婚式だ。
天気は晴れ。少し肌寒いけど1月後半の気候を考えればまぁ良い方だろう。
今俺は昨日急遽帰国した親父達と一緒に小早川家に居る。
俺や楓、紅葉含め両家共に結婚式に出るため皆で一緒に行くことになったんだ。
式場からレンタルした衣装に着替え、楓も紅葉も今日は母さんたちに化粧をしてもらい華やかな装いをしている。
俺は・・・レンタルした服に着替えて少し髪を整えただけだけどね。
ちなみに今日はお酒も出るので車ではなく、駅前から送迎バスでの移動だ。
親父達も親友の結婚式ということでお酒を飲んで祝いたいらしい。
「忘れ物ないか?」
「は~い」
「じゃ行きましょ」
皆で川野辺駅前に向かい送迎バスの停留所へ向かうと、同じく式に参列すると思われる人たちが既にバスを待っていた。
「おっ雄一じゃないか!すっげー久しぶりじゃねえか!」
「拓也に美津子!本当久しぶりだな。元気にしてたか?」
「誠子さんも久しぶりね」
「はい。美津子さんも本当ご無沙汰で」
どうやら親父の知り合いらしく昔話で盛り上がっている。
輪の中には五月おばさんや大樹おじさんも加わってるから相良さん含め学生時代の友人なのかもしれないな。
「田辺君、小早川さん。今日は2人も参列するんだね」
「あ、三宅先生に富田先生」
「はい。最初声掛けていただいたときは披露宴からかと思ってたんですが、親父達も来るので式から呼ばれまして」
そうなんだよね。最初結婚式は近親者のみ呼んで披露宴を大々的にって聞いてたから俺と楓は披露宴から呼ばれるのかと思ってたんだけど親父達も出席するんだしと結婚式から呼ばれちゃったんだよね。いいんだろうか・・・
「そっか~ ライバルが増えちゃいましたね三宅先生」
「ですね。小早川さん。ブーケは渡さないからね!」
「へ?」
何やら富田先生と三宅先生は目的が別にあるようですな・・・
ちょっと必死過ぎですよ。
などと式と関係あるような無いようなところで盛り上がっている間に送迎バスが到着した。外は少し寒かったけどバスの中は暖房がきいてて心地よい。
「ケンちゃん」
「何だ楓」
「私もブーケ頑張って取るからね!」
さっきまで考えても居なかっただろ・・・先生達必死なんだから譲ってやれよ。
ちなみに"ブーケ取らなくても俺がいるから大丈夫だろ"ってのはちょっと恥ずかしくて言えなかった。。。
式場に到着し受付のある2階へ。
受付には小島先生と三宅先生の同級生だという及川さん(旧姓西村さん)とその旦那さんで相良さんの部下という方が忙しそうに応対していた。
三宅先生は及川さんに富田先生を紹介しながら楽しそうに話をしている。
受付を済ませ、控室に入って式の始まりを待っていると程なくして今日の進行アシスタントの永田さんが部屋に入ってきた。
「そろそろ式が始まりますので、屋上のチャペルに移動願います」
「屋上にチャペルがあるんだね」
「ああ、外からは見えないよな」
この建物は1階にレストラン、2階に撮影スタジオと式場受付や控室、3階と4階に披露宴等が行える大広間、5階が結婚式場って案内には書いてあったけど外から見ると普通のビルなんだよね。
永田さんの後についてエレベータに乗り込み5階で降りると、ガラス張りのエレベータホールの先には噴水やグリーンもある屋上庭園が広がっていた。
そしてその中央に式場となるチャペルが建っている。
「わぁ素敵!」
「そうだな。ビルの屋上には見えないよな」
「驚きました?道路側からはエレベータホールや外壁があるので見えないですからね。花や植栽はちゃんと手入れもしてる自慢の庭園なんですよ」
永田さんが説明してくれたけどこれは確かに自慢の庭園だよな。
緑豊かな庭園を歩きチャペルに入ると正面の壁面には綺麗なステンドグラスも見える。こういうのって凛子さんのこだわりなんだろうな。
と物珍しく楓と2人辺りを見ていると司会進行を務める凛子さんが式の説明を行った後、静かに新郎新婦の入場を告げた。
厳かにオルガンによる音が流れる中、中央の通路をタキシード姿の相良さんと綺麗なウエディングドレス姿の小島先生が入場してきた。
「先生綺麗・・・」
「そうだな」
先生のウエディングドレス姿は前にも見ていたけど今日はその何倍も輝いて見えた。楓も紅葉も三宅先生や富田先生も小島先生をじっと見つめている。
「それではこれより、相良洋さんと小島美香さんの結婚式を始めさせていただきます」
今日の凛子さんは当然のことながら"仕事"ということで真面目な顔つきと落ち着いた声音で開式宣言や相良さんや小島先生の紹介を行った。
普段とのギャップが凄い・・・
そして、
「次に新郎新婦より結婚の誓いの言葉を述べさせていただきます。相良さん、小島さんよろしくお願いいたします」
といよいよ誓いの言葉。幾分緊張した面持ちの2人。
「「私たちは本日ご列席いただきました皆さまの見守る中結婚の宣誓をいたします。
これからの人生、生涯変わらぬ愛を約束し、夫婦として生きていくことを誓います。そしてお互いを思いやる愛にあふれた温かい家庭をつくっていきます」」
「新郎 洋」
「新婦 美香」
そして、その流れで結婚証明書への署名を行い、いよいよ指輪の交換。
「続きまして、指輪の交換でございます。新郎から新婦へ、新婦から新郎へリングを贈ります。指輪交換しましたら、皆さまどうぞ祝福の拍手をお願いいたします」
と凛子さんの宣言後、相変わらず緊張した面持ちの2人はぎこちなくもお互いの指に指輪をはめた。
そして新郎新婦が指輪と結婚証明書を参列者にお披露目。
大きな拍手とシャッターの音が鳴り響いた。
「ご参列の皆さまのご承認を得て、ここにめでたく相良洋さん、小島美香さんの結婚が成立いたしました。ご結婚おめでとうございます!」
再び大きな拍手。2人共幸せそうだ。
「相良さん!先生!おめでとう!!」
ちなみに式の後に行われたブーケトスは、富田先生が執念でブーケをゲットしていた。先生って美人なのになぜか男運無いらしいからなぁ~
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