第146話 紅葉の受験①
1月も半ばを過ぎ寒さも日に日に増してきたとある金曜日。
「ちゃんと受験票持った?場所はもちろんわかるよね」
「も~お姉ちゃんったら・・・そんな心配しなくても大丈夫だって」
「受験するのは紅葉なんだから、楓が緊張しても仕方ないだろ?」
「そうだよ・・・気持ちはありがたいけど、あんまりお姉ちゃんが緊張してると私も緊張しちゃうよ」
「う~ゴメン」
今日は川野辺高校の入学試験の日だ。
もちろん今日は紅葉も川野辺高校を受験する。
紅葉は俺にとっては妹みたいなもんだし家庭教師として勉強も教えてきた。
出来れば合格して来年の春は後輩として入学して欲しい。
ちなみに川野辺高校の学生は試験ということで休みになってるけど、1、2年生各クラスの学級委員と生徒会役員は受験生の誘導など学校の手伝いで登校。
つまり2年A組の学級委員である俺と楓も登校なわけです。
「じゃ、紅葉。俺達は先に行ってるからな」
「紅葉なら大丈夫! 試験頑張ってね!」
「うん。ケン兄もお姉ちゃんもありがとうね」
紅葉を家に残し俺達は高校へと向かった。
が、楓は何となく不安そうだ。
「楓。やっぱり心配なのか?」
「うん。あの子ってしっかりしてそうで肝心のところでミスが多いから・・・」
「う~ん。模擬試験とかした限りは結構いい点とってたし大丈夫だとは思うんだけど・・・」
「今日は、高坂君も一緒に受けるんだよね?彼は大丈夫そう?」
「ああ。最近は一緒に勉強見てあげてたけど彼も結構いい点取れてたし大丈夫じゃないかな。そういえば藤原の妹さんも川野辺高校受けるって言ってたよ」
「へぇ藤原君って妹さんが居たんだ」
「川北中だな。紅葉が川野辺受けること話してたらうちの妹も受けるんだって」
「藤原君が通ってる森下学園じゃないんだね」
「兄妹で同じ学校ってのも恥ずかしいとかあるのかもよ」
「そんなものかなぁ~」
などと話をしているうちに学校に到着。
今日は食堂を受験生の休憩スペースとして利用し、1年生から3年生の各教室が試験会場となる。このため今日の手伝いに参加する俺達は東棟の視聴覚室に集合となっていた。
視聴覚室に入ると前の方には先生方と恩田先輩曰く"押しが弱くて影が薄い"という生徒会の面々が座っていた。
派手な感じはしないけど、どこら辺が影が薄いのかはよくわからない・・・
教室内を見渡すと、中程の席にB組の学級委員の吉見と森川さんを見つけたので俺達はその隣に座った。
「よっお疲れ」
「ああ田辺と小早川か。今日はよろしくな」
そして少し待っていると3年の学年主任をしている前田先生が今日のスケジュールと役割を説明してくれた。
ざっくりいうと1年生の学級委員は校内外に立って受験生の誘導。
俺達2年の学級委員と生徒会メンバは試験官となる先生方のアシスタントとして教室で待機ということだった。
説明が終わり、1年生は一部の先生に引率され校外の持ち場へと出掛けて行った。
俺達はこのまま少し待機して割り当てられた教室に移動する。
「そういえば楓って1年の時も学級委員だったんだろ?去年も手伝ったのか?」
「うん。駅の近くで案内板持って立ってたよ。もう寒くて・・・」
「確かにこの時期外で立ってるだけって結構寒いよね」
と楓や吉見たちと話をしていると
「あなたが田辺君と小早川さん?」
と生徒会の・・・誰だっけ?
「あ、私はC組の白石です。生徒会書記の・・・って知らないよね」
「え~と顔と名前は何となく・・・」
一応生徒会選挙は俺も投票したし・・名前も聞いたような気はする・・・ただ名前と顔は一致してなかったり。
「いいんです。気にしないでください。いつもの事ですから」
「はぁいつもなんですね・・・で何か御用ですか?」
「あ、ごめんなさい。麻友ちゃんや隆君からあなた達のこと聞いててお話してみたいなぁって」
「麻友ちゃんと隆君って渋川さんと結城か」
「はい。2人とは同じテニス部で仲が良くて」
「そうなんだ!」
と吉見や森川さん含め俺達は待ち時間の間、白石さんと色々話をした。
白石さんは気さくで話しやすく中々会話も楽しかった。
コミュ力高いし、話も面白いし全然普通な気がするけど。
「よ~し、そろそろ移動するぞ!」
前田先生の号令を受け、教室内でくつろいでいた皆が持ち場へと移動を始めた。
「あ、もう私達も教室に移動みたいだね。じゃまた今度ね!」
「おぅ」
白石さんは小走りに他の生徒会メンバのもとへと走っていった。
全然"押しが弱くて影が薄い"って感じはしなかったけどな。
「面白い人だったね」
「そうだな」
楓も同じような感想みたいだ。
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そして、試験が始まった。
あいにくの空模様だったけど、電車やバスの遅延もなく受験予定者は全員無事会場に到着。
今は各教室で、努力してきた成果を見せるべく試験問題と格闘している。
きっと紅葉や高坂君、それに藤原の妹の美里ちゃんも何処かの教室で試験を受けてるんだろうな。
試験は午前中に3科目を行い午後に2科目。
1教科当たりの試験時間は短いけど緊張感を持続するのは中々大変だ。
気持ち的にはみんな頑張ってきたわけだし合格させてあげたいけどな・・・
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試験が終わり、俺達は後片付けを手伝って解散となった。
五月おばさんに夕飯を誘われていたので、小早川家に楓と帰宅すると、当然のことながら紅葉が帰宅していた。
「あ!おかえりケン兄、お姉ちゃん」
「おっ随分明るいな。試験出来たのか?」
「うん。高坂君と答え合わせした感じでは結構いい点数いってると思う。
あっケン兄の予想問題と似たのもあったよ!」
「そっか。合格出来てるといいな!」
「うん♪」
「ほらほら健吾君も楓も早く手を洗ってらっしゃい。夕飯にするわよ」
「「は~い」」
受かってるといいな紅葉。
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