第145話 ドレスアップ

「ねぇケンちゃん このドレスどうかなぁ」

「・・・・」

「変?」

「いや きれいすぎてヤバい」

「もう!ケンちゃんさっきからどのドレス着ても同じ反応じゃない!」

「いや、マジでどれ着ても似合ってて・・どれがいいとか難しくてさ」

「そ そう言って褒めてもらえるのは嬉しいけどさ♡」


俺と楓は今、凛子さんの結婚式場に来ている。

俺と楓が結婚する・・・というわけではなく相良さんと小島先生の結婚式に俺と楓も親父達と一緒に呼ばれたからだ。

式は来週末なんだけど"折角だからドレスとか着てみない?"と凛子さんに誘っていただき学校帰りに寄らせてもらった感じだ。

この式場は前に俺と楓も利用させてもらったけど2階が撮影スタジオになっていてウエディングドレスやタキシードだけでなく参列者用のドレスなどのレンタルもある。


「しっかし、2人共仲いいわね~ 見てる方が恥ずかしくなってくるわよ♪

 私なんか女子校だったから高校時代は彼氏とか夢だったのよ」

「あっ凛子さん お仕事お疲れ様です。でも凛子さん美人さんだからモテたんじゃないですか?」

「ま まぁね。近くの高校の男子とかに出待ちとかされたことはあったかな」

「「おぉ!!」」

「流石ですね凛子さん!」

「でも・・・うちの高校って結構男女交際とか厳しくてね。高校時代は結局彼氏とか作れなかったな」

「そうなんですね」

「ま、私の場合は、高校の反動で大学では取り巻きの男子とかたくさんいたけどね!」

「す 凄いですね・・・」


この人の場合、美人で行動力あるから冗談に聞こえないのが怖いよな・・・


「誠子先輩や五月先輩に聞いてみな。絶対大変だったって言うから」

「あ、母さんたちも同高校でしたもんね」

「そ。先輩達もモテたよ~。誠子先輩とか弓道部で凄くカッコよくて女子から人気高かったからね」

「へぇ~」


母さんたちの高校生時代とか考えたこともなかったからなぁ。

親父達とは大学のサークルで知り合ったとか言ってたけど、大学違うし・・・まぁサークル同士の合コンとかだよなきっと。深く聞くのは止めておこう。


「それで、服はまだ決まってなさそうね?2人とも背は高いしスタイルも良いからどれ着ても大抵着こなせそうだけど、楓ちゃんが今着てるのは比較的今年のトレンドのドレスかな」

「やっぱり流行りなんですね。この間雑誌で見たのと似てたので着てみたんです」

「おっ!ちゃんとチェックしてるんだね。私はそれお勧めだな。彼氏の健吾君からしたらどのドレスも甲乙つけがたいかもしれないけどね」


相変わらずしゃべりというか人をその気にさせれるのが上手いな。

楓なんてすっかりその気になってるし。


「はい。俺もそれでいいと思います。確かにどのドレスの楓も素敵でしたけどね」

「・・・ほんとに素で楓ちゃんを褒めるな君は」

「そうですか?」

「まぁ最近はうちのバカ兄貴も年甲斐もなく美香ちゃんの事可愛い可愛い言ってるけどな」

「へぇ相良さんが?あんまりそういうイメージ無いけど」

「まぁでも美香ちゃんは確かに小柄で可愛い系だけどな。あ、健吾君と楓ちゃんからしたら学校の先生か」

「あ、でも私何となくわかります!小島先生って何だか可愛い感じしますもん」

「でしょ~!」


何やら小島先生ネタで凛子さんと楓が盛り上がってる。

衣装決まったんならお腹空いたしそろそろ帰りたいんだけど・・・

俺の着る服何て最初の10分くらいで決まったぞ。


「あっそうだ。2人共この後時間ある?お腹空いてるだろうしよかったら食事してかない?」

「えっ良いんですか?」

「まぁ私と一緒だからレストランのまかない料理だけど味は保証するよ!」

「「是非!!」」

「おっけ~ じゃ2人の分も頼んどくから出来たら呼ぶね。あ、五月先輩には電話しとくよ」

「はい。ありがとうございます」


凛子さん・・・いい人だな俺達がお腹空いてるの見越して夕飯まで。

それに普通の料理があれだけ美味しいレストランのまかない料理とか期待しちゃうな。


貸衣装から制服に着替えた俺達は凛子さんからのお呼びが掛かるまでロビーで待つことにした。


「ねぇねぇ小島先生ってどんなウエディングドレス着るのかな」

「この間写真撮ったときのとは違うデザインのにするんじゃないかな?」

「え~でもあのウエディングドレスも凄い似合ってたと思うんだけどなぁ」

「確かに先生綺麗だったよな・・・あっもちろん楓の方が綺麗だったけどな」

「そ そこまではやきもち焼かないから先生綺麗ってことでいいし・・・」


とか言いつつちょっと楓嬉しそうだな。

でも、先生どんなドレス着るのかな。


「あ、2人共ここに居たのね。準備出来たわよ!」

「「待ってました!」」


ということで時刻は20:00を過ぎ、既に閉店したレストラン店内に案内された俺達は職員の方々と一緒にまかない飯をいただく事となった。


「えっこれがまかないですか?普通にメニューとして売れそうですけど」

「うん。凄く美味しいです!」

「おっそれは良かった。現役高校生男女が美味しいってさ近藤!」

「ありがとうございます!」


近藤と呼ばれた調理服を着た若い男性が笑顔で応じていた。

この人が作ったのかな?


「凛子さん。あの方が作ったんですか?」

「そ。レストランじゃまだ見習いなんだけど、練習も兼ねてまかないを作って貰ってるの。まかないはここのほとんどの職員が食べるから、食べ終わった後に感想を言ってあげてるのよ。勉強にもなるし腕を磨くにはいいでしょ」

「確かに。でも本当美味しいですよ」


そんなこともあり凛子さんだけじゃなく、いつの間にか式場やレストラン、スタジオのスタッフの方々とも仲良くなってしまった。

そしていつも何やら


"結婚式と披露宴は是非うちで!"


という流れが出来てしまった・・・俺も楓も大学には行きたいし結婚はまだだいぶ先ですけどね。

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