第144話 森下学園②
冬の寒空。少し雪も降ってきた週末土曜日。
今日は年明け1回目となる練習試合の日だ。
[シュパ]
「ナイシュー健吾 いい感じだな3ポイント」
「ああ 最近こればっかり練習してたしな。裕也の方はどうだ?」
「まぁなんとかな。ただ、最近は福島に任せっきりだったから覚えるのが大変だぜ」
今日の試合、俺達は普段と異なるポジションでプレイするなど色々と新しい試みを試すようコーチから指示を受けていた。
そして、俺と裕也についてはそれぞれ課題も出されていていた。
俺は普段あまり打たない3ポイントの精度を上げること。裕也は福島が起点となっている各種セットプレイの指示だし。
俺が外からも得点を稼ぎ、裕也は福島とシフトすることでマークを分散させるなどを考えての課題だ。
とりあえず俺達は挑戦する側になったわけだし出来ることは全てやる感じだな。
「さて、もうひと頑張りするかね」
「おい健吾。来たみたいだぞ」
福島が先導する形で森下学園のバスケ部メンバーが体育館に入ってきた。
「「よろしくおねがいしま~す!!」」
入り口で挨拶をすると森下学園のメンバーは割り当てられたコートにて練習を開始した。今日は昼休憩を挟んで男女それぞれ2試合ずつ試合を行う予定で、午後に試合を行う女子バスケ部は旧体育館と校庭を使って練習している。
まずは俺達が勝って楓達につなげないとな。
ということで、両校揃ったのでアップを行った後は早速練習試合となった。
「え?田辺がジャンプやるのか?」
「ああ 折角強豪チームと練習試合が出来るんだから今回は色々と試させてもらおうかと思ってな」
「なるほどな、清水も吉見もいつもとポジショニングが違うと思ったら・・・でも俺達相手に通用するかな?武田遠慮するなよ!」
「どうだろうな。まぁそのための練習試合だよ」
[ピッ]
牧村コーチの笛に合わせて試合が開始された。
背の高さは森下の武田の方が少し高かったが、ジャンプ力で俺の勝ち!
俺は手首を返して斜め前に走った吉見の方にボールを弾いた。
「吉見!」
ボールをキャッチした吉見は、普段であれば3ポイントを放つが、今日は素早くドリブルに入りゴール下へと切り込んでゆく。
が、素早く笹原や藤原がゴール下のカバーに入る。
「悪いがそんな簡単に通さないぜ」
「悪いな笹原。通るつもりは無い」
「え?」
とドリブルの流れから吉見の背後に走りこんだ俺にパスを出した。
そして俺は今日の課題3ポイントを放った。
[シュパ]
「ナイスシュー田辺!」
近づいてきた吉見とハイタッチ。
吉見も思った通りのプレイが出来て満足げだ。
「何だか調子狂うな・・・横田攻めてくぞ!」
「おぅ」
森下からのリスタート。
笹原からのボールを横田が受け得意のドリブルに入るが、その前には長谷部が立ちふさがる。
「って俺のマークお前かよ」
「そういうことだ」
横田は森下の中ではスピード重視で比較的小柄な選手。これに対して長谷部は川野辺で一番背が高い選手。
横田が巧みにフェイントで抜こうとするが、長谷部は長い手足でディフェンスをする。長谷部はスピード面の強化を課題とされていたけど、横田を抑えられれば自信になるんじゃないかな。
「横田!」
「ちっ富田!」
ドリブルのスピードを止められてしまい思う様に動けなくなった横田はフォローに入った富田にパスを出す。
そしてパスを受けた富田には
「俺には清水か」
「そういう事。1対1なんて中学以来だよな」
「中学では負けてたけど、俺だって成長してるんだぜ」
と緩急をつけたフェイントで裕也を抜き去る富田。
「ご苦労さん!」
「えっ福島?」
笹原のマークに付いていた福島が清水のフォローに入りボールをカットした。
「悪いな富田。お前のマーク本当は福島なんだ」
「くそっ」
そして裕也のサインを受けてのセットプレイで得点を追加。
コーチの考え通りに森下を翻弄し得点を重ねることが出来た。
が、相手も強豪校ということで優勢な状況は長く続かず、第2クォーターに入る頃には容易に得点を取るのが難しい状況になってきていた。
ただ、今回の試合は戦術のテストという意味合いもあったので、勝利よりも選手交代を多用し部員それぞれに経験を積ませることを優先した。
結果ギリギリ勝利!
正直第4クォーターでは逆転もされたし負けたかと思ったけど、最後に打った3ポイントで1点差だけど逆転できたんだよね。
コーチから経験優先とは言われていたけどやっぱり負けるよりは勝った方が嬉しいからね。
その後、男子の2戦目は1年主体で勝負した。接戦になったものの残念ながら敗退。そして午後行われた女子の試合は2戦とも勝利に終わった。
女子も俺達と同様に課題を与えられて練習していたけど、今日は浜野さんがPGとして動き村田さんがそのフォローをする形を試していた。
足の具合もあるから長時間は無理みたいだけど、元々浜野さんは視野が広い選手だったのでPGとしてのボールさばきは中々のものだった。
もちろん楓も大活躍で、冬の大会に負けた悔しさからか得点を重ね勝利に貢献した。
「あ~~ 何だか悔しいな」
「この間は俺達が負けたんだしいいだろ?」
「そう言ってもな・・・」
と笹原と福島は部長同士でなにやら言いあっているが、今日の結果で第一段階クリアな感じかな。
まだまだ課題はあるし、余裕で森下に勝てるレベルではないけど少し先が見えてきたかな。
帰ったら楓と試合の振り返りかな。
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