第143話 お姉さん
「あなた達が田辺君と小早川さん?」
「はい。田辺は俺ですが」
「小早川は私です」
とある平日の昼休み。
裕也や浜野さんと集まって弁当を食べていると3年生と思われる美人さんが俺と楓に声を掛けてきた。
「そう!あなたたちが」
と俺と楓をジロジロ見ている。なんだ一体・・・
「あの~何でしょうか・・・」
「あ、ごめんなさいジロジロ見ちゃって。聞いてた通り中々お似合いのカップルだなと思って」
「え!お似合いですか私達!やっぱりそうですよね~」
何やら楓はご満悦。チョロ過ぎるぞ・・・。でも聞いてた通り?
「え~と先輩は?」
「あ、ごめんなさい名乗ってなかったわね。私は3年A組の森田 綾女。元生徒会の副会長で、由紀の姉よ」
「由紀って・・・由紀ちゃんのお姉さん!」
「ええ。先週末由紀たちと川野辺水族園行ったでしょ?もう由紀ったら2人の事を凄く楽しそうに話すからどんな人達かなと思って」
森田さんのお姉さんか。って川野辺高校の先輩だったんだな。
でも・・・・何というか森田さんは小柄で可愛い系だけどお姉さんは・・・セクシー系というか綺麗系だな。胸デカ!
「ん?ケンちゃん 何だか目つきがいやらしいよ」
「え?いや、そ そんなことないぞ」
「確かに先輩綺麗だけどさ・・・」
「いや その、大丈夫!俺の一番は楓だから!」
って俺は何を言ってんだ・・・
こら裕也!浜野さん!そこで笑うな!
「ふふふ 聞いてた通り、あなた達って本当面白いわね」
「聞いてた通りって・・・森田さん何て言ってたんですか・・・」
「見てる方が恥ずかしくなるくらいの仲良しカップルって言ってたわよ」
「・・・・・」
嬉しいような、恥ずかしいような・・・
だから、裕也と浜野さんはそこで頷かない!
ってクラスのみんなも・・・
「あ、ごめんなさい。別にからかってるわけじゃないのよ。
仲が良くていいなって。それに2人にはお礼も言いたくて」
「お礼?」
「ええ。由紀と和志君って、仲違いしてた時期もあったんだけど本当2人とも最近は仲が良くて。田辺君達のおかげなところもあるのかなって」
「はぁ・・・」
「あ、昼休み終わっちゃうわね。そろそろ教室戻るけど、またあの子達とも遊んであげてね!」
と先輩は自分の教室へと戻っていった。
3年A組っていうと恩田先輩や小宮先輩とも知り合いかもしれないな。
「何だったんだろうな?」
「うん」
本当に俺達を見に来ただけなのか?
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放課後。
今日はバスケ部の練習日だ。
今週末は森下学園との練習試合があるため、何だかみんな少しテンションも高めで気合も入っている。
「ヘイ!福島!」
ゴール前でパスを受けその流れでレイアップを放つ。
基本的なシュートだけど基礎は大事だよな。
ということで今はペアを組んでパスをしながらゴール下に走り込みシュートを打つという練習中。
単純練習だけどダッシュでパスをしながらということで繰り返すと結構疲労も溜まるし、そうなればシュート精度も落ちてくる。
疲れている状態でも正確なシュートが打てるようにということで練習しているわけで・・・ミスったら罰ゲームという名のスクワットが待っている。
とりあえず今のところ外してはいないけどもう何回シュート打っただろ。そろそろ疲労がヤバいわ・・・
「よ~し集合!」
と牧村コーチの声。助かったかも・・・
「今週末の試合だけど女子バスの三上コーチとも話したんだが、練習試合だし少し実験的なポジショニングを試してみようかと思う」
「実験的?」
「そうだ。プレイの幅を広げるということで普段とは異なるポジションについて試合をしてもらう。うちは森下に比べて部員数も少ないから個々の選手が対応できる幅を広げたい。まぁ田辺と清水は既に複数出来ているから2人には他に課題を与えるつもりだが、皆は練習だと思って色々とチャレンジしてみてくれ」
「「はい!」」
裕也と俺は別に課題って・・・面倒そうなことしか思いつかないんだけど・・・
「裕也はSGとPGだろ普段プレイしてるのって」
「ああ、中学ではほとんどPGやってたけど、ここは福島が居たしな。
健吾はSFとPFだっけ?」
「ああ。この高校に来てからはSFがほとんどだけどな。それよりコーチの言ってた課題って何だろな」
「まぁキッついんだろなきっと」
「だろうな・・・」
そして、その後コーチからの貰った課題は・・・予想通りしんどそうだった。
そういえば、練習終わりの時間帯に久々に小宮先輩と恩田先輩が部活に遊びに来てくれた。
2人共成績は学年でもトップクラス。受験は何処を受けるにしても問題ないとされていたけど川野辺大学に推薦枠で既に合格が決まっていた。
小宮先輩はコーチや福島と話をしているけど、相変わらずな人気の恩田先輩は楓達女子部員に囲まれていたんだけど、
「あ、田辺君」
「え?はい、何でしょう」
急に恩田先輩に声を掛けられてしまった。
「今日さ、昼休みに綾女が会いに行ったでしょ」
「綾女って・・あ、森田先輩ですか」
「そうそう。何か言われた?」
「・・・楓と"仲が良いわね"って」
「・・・う~ん。直接は言わなかったか」
直接って・・・何ですかそんな思わせぶりに。
「先輩・・・森田先輩が何か?」
「あ、多分だけど田辺君と小早川さんを生徒会にスカウトしようとしてるのよ綾女」
「へぇ生徒会ですか・・・って、え?」
「え!私とケンちゃんをですか?」
「うん。今の生徒会も選挙で選ばれた優秀な子達なんだけど、ちょっと押しが弱いとうか存在感薄いのよね。綾女もそのあたりを気にしてて・・・
綾女の妹さんと2人って知り合いなんでしょ?妹さんから2人の事聞いて興味持ったみたいなのよね。ほら!2人ってキャラ濃いし」
それは褒められてるのか?というか先輩にキャラ濃いとか言われたくないっす。
「でも、俺としてはバスケ頑張りたいし生徒会は・・・」
「あ、無理強いはしないと思うから大丈夫よ。悪い子じゃないし。
でもあの子なりに学校の事考えてるから興味があったら手伝ってあげてね」
「はぁ」
生徒会か。。。
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