第148話 先生の結婚式②
「いや~ 洋のやつメチャクチャ緊張してたなぁ~」
「全くだ。普段堂々としてるのにな。むしろ美香先生の方がちゃんとしてたぞ」
「何言ってるのよ雄一さんも緊張して私の指に指輪はめるの手間取ってたじゃない」
「そ それはだな・・・」
「拓也もだよねぇ~結婚宣言いうときセリフ忘れちゃって・・」
「え~と」
何やら親父達は墓穴を掘ってるらしい。
でも、ああいう場面になったら俺だって緊張しそうだ。
控室に戻り皆でしばし歓談。
相良さんの家は川野辺地区古くからの大地主ということもあり、披露宴は結構参列の方も多いようだ。
今も相良さんのお父さんや後を継いだお兄さんの幸治さんのところにスーツを着た会社の重役っぽい人たちが挨拶に訪れている。
『もしかしなくても小島先生玉の輿ってやつだよな』
相良さんとは居酒屋で知り合ったとか言ってたけど、何処に出会いがあるかわからないもんだ。
その後、披露宴会場の準備が整ったということで会場に移動すると既に先生達の友人や職場の同僚と思われる方々が席に着き始めていた。
思ったより広い会場で100人以上は居たんじゃないかな。
流石は地元の名士の息子だ。相良さん自身も交友関係広そうだしな。
俺と楓も案内係りの人の指示で田辺家、小早川家に割り当てられたテーブルに着席した。結婚式とはまた違った雰囲気で和やかなようでも緊張する。
そして、全ての参列者が席についたところで、親族席に座る凛子さんから司会を託された永田さんが新郎新婦入場を告げた。
照明が暗くなりスポットライトが当たる中、相良さんと先生が入場する。
式を終えて安心したのか、結婚式よりは少し緊張が解けた様にも見える。
そして、司会の永田さんに紹介されウェルカムスピーチを行う相良さん。
「本日はご多用のところ、私たちのためにお集まりくださいましてありがとうございます。
先程私達は人前式でみなさまの承認を受け、念願だった夫婦になることができました。今はとても幸せです。 本日はお世話になっているみなさまへ感謝をお伝えしたいと思いこのような場を設けさせていただきました。 短い時間ではありますが、お楽しみいただけたら幸いです」
ちょっとプレゼンでもしているような雰囲気のしゃべりだったけど、通る声で聴きやすくしっかりとした口調だった。相良さんカッコいいな。
そして、そんな挨拶の後は永田さんによる新郎新婦の紹介。
さっきの式で聞いた紹介と内容はほとんど同じだったけど、今回はスクリーンに2人の小さい頃や学生時代の写真なども投影されアレンジが加えられていた。
「わぁ小島先生可愛い!」
「相良さんもカッコいいな。川野辺高校時代はサッカー部とか言ってたよな」
そして写真の中の先生達も歳を重ねていった。
小島先生の写真には、三宅先生達との旅行写真や高校教師になってから俺達との写真が映し出され、相良さんの写真では親父達との学生時代の写真から就職してからの飲み屋での写真や同僚との社員旅行などの写真が映し出された。
全部思い出の写真なんだろうな。
そんなプロフィール紹介の後は、主賓挨拶とし相良さんの会社の社長と川野辺高校の校長先生が祝辞を行った。
どちらも偉い人のはずだけど何となく軽いフレンドリーな挨拶だった。
その流れで2人の出会いのきっかけとなった居酒屋の店長さん(相良さんの学生時代の先輩でもある)による乾杯と新郎新婦によるケーキ入刀が行われるなど和やかな雰囲気で式は進められた。
そして、食事が始まり歓談タイム。
本来はしばらくの間は余興等も無いわけなんだけど、この時間帯で俺は凛子さんと相談してサプライズを用意していた。
「え~それでは次ですが、ちょっとサプライズ演出となります。新婦の美香さんは川野辺高校の教師ということは紹介させていただいたかと思いますが、今日はその生徒さん達からのお祝いビデオメッセージを受け取っています。それでは生徒さん達からのメッセージで~す!」
「え!何それ!予定に無かったよね!」
司会の永田さんの言葉に慌てる美香先生。
『期待通りのナイスリアクション!』
確かに予定にはなかったです。
進行上あまり時間は取れないけどクラスのみんなからメッセージを送りたいって凛子さんに相談したところ永田さんと調整してくれたんだよね。
と、会場のスクリーンに川野辺高校の校舎が映し出されビデオメッセージがスタートした。
まずは先生が副担任を務める俺達の2年A組だ。
黒板一杯に書かれたお祝いメッセージと先生を模した可愛らしいイラスト(黒板アートby早瀬)を前にクラスのみんなが並び、代表して裕也と浜野さんがお祝いメッセージを告げた。
「ども清水です」「浜野です」
「「この度はご結婚おめでとうございます!」」
「え~俺も美玖も数学の点数が悪いのでいつも迷惑を掛けてますが、そんな俺達にも熱心に授業や補講をしてくれて先生には凄く感謝しています」
「新郎の相良さん。先生は私たちにとって歳の離れたお姉さん的な存在でもあります。ホームルームでも生徒と一緒になって真剣に話をしてくれる素敵な先生です。ちょっと天然なところもありますが幸せにしてあげてください!」
「「「お幸せに!!」」」
そして、画面は体育館に切り替わりバスケ部メンバが映し出された。
コート前に男女バスケ部メンバとコーチや先生が並び、今度は村田さんと福島が代表としてお祝いメッセージを告げた。
「「先生!それに新郎の相良さん!ご結婚おめでとうございます!!」」
「先生が女子バスケ部の顧問になってから練習試合の調整など他校とのコミュニケーションが凄くやりやすくなりました!それに明るい先生のおかげで辛い練習も楽しく乗り切れています!」
「先生は女子バス顧問なので直接の指導は受けていませんが、先生が顧問になられてからバスケ部は男女ともに全国大会にまだ出場できていません。お祝いの意味も込めて次は必ず全国に出場します!見ててください!」
「「せ~の」」
「「「お幸せに!!」」」
そして最後。映像が終わり会場が映し出され、新婦である美香先生がカメラで映し出された。
「え?私?今度は何?」
慌てる先生のところに俺と楓は花束とみんなからのメッセージを書いた色紙を持って向かった。
「「先生。ご結婚おめでとうございます」」
「田辺君・・・小早川さん・・・あ ありがどう~」
せ せんせい・・・泣きすぎですって・・・お化粧が・・・
サプライズ大成功だったけど、先生は予想以上の大号泣だ。
「川野辺高校2年A組とバスケ部のみんなにも拍手をお願いします!」
永田さんの言葉を受け会場に響く拍手の音。
サプライズ成功かな。
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