第136話 冬の寒い一日

「ケンちゃん・・・窓開けっぱなしで寒くないの?」

「寒いけど、掃除すると埃とかでるしな」


クリスマスも終わり年の瀬も近づいた今日。

俺は家の大掃除を行っていた。

ただ、楓が手伝いに来てくれたもののそれほど広い家ではないし普段から掃除もしているから正直それ程掃除するところは無かったりする。

ということで楓には普段も掃除してるけどフローリングや風呂を掃除してもらい、俺はキッチン周りや窓ガラスといった普段あまり掃除しないところを掃除していた。これだけでも何となく大掃除をしたって満足感はある。


「でも、この家もあと3か月でお別れなんだよな」

「そっか・・・色々あったよね。この部屋」

「そうだな。俺と楓にとっても思い出の部屋だよな」


楓に食事作って貰ったり、裕也や渋川さん達と勉強会したり、それに・・・楓と初めてしたのもこの部屋なんだよな。

そう考えると引っ越すのはちょっと寂しい気もするな。


「このままここに住んじゃえばいいのに」

「それも考えたんだけどな。うちの親って転勤族になってからは仕事が忙しくてあんまり家に居たことなかったんだよ。一人で寂しかったってわけでもないけど、帰国後は仕事も落ち着くみたいだし少しは家族の団欒ってものも味わってみたいなとか思ってね」

「そっか。それに雫姉も一緒に住むって言ってたしね。でも新しい家もこの近所なんだよね?」

「ああ まだ候補もあるし確定じゃないけど近所で探してるよ。

 この間一緒に見に行った家なんか楓の家とも近かっただろ?」

「うん。あの家なら今よりも近いよね♪更に会いやすくなるかも」


ってほとんど毎日会ってると思うんだけど。これ以上会うとなると一緒に住むことになるんじゃないか?まぁそれも悪くはないけど♪

ちなみに候補になっている家は今のところ2件ほど内見してるんだよね。

家は雫姉と俺の部屋含め4LDK位の広さで、親父の通勤も考慮して川野辺駅から徒歩圏内ということを最低条件としてで探してもらっている。

1件目は小早川家のすぐ近く。中古の建売で日当たりのいい庭付き1戸建て。

中々間取りも良かったんだけど難点は築年数が結構いってたので一部リフォームが必要かもしれないところ。リフォーム費用も結構掛かりそうだったからちょっと保留。

2件目は築浅で広さも申し分ないマンションだったんだけど川北寄りで駅から少し遠くバス乗らなきゃならなかったんだよね。

これだと川野辺駅から徒歩圏外ということでNG。


で、残る候補はまだ建築中で年明け早々に見に行くことになっている物件なんだけど資料を見た限りは俺の中で一押し。

この家は新築で予算は少しオーバーする上に3LDKと広さも条件からは外れるんだけど川野辺駅や小早川家から徒歩圏内、尚且つ6部屋のアパートが一体化した住居兼アパートの珍しい物件。

予算はオーバーだけどアパートが埋まれば6部屋分の家賃収入も見込める。

俺としてはこの家に決めてアパート部に家賃払ってでも住みたいなとか考えていた。これなら親父達とも同居しつつプライバシーも保てるからね。

多分雫姉もその方が親父達に気兼ねなく(亮兄とイチャイチャ)出来るし良いんじゃないかな。

相良さんの会社の物件だから内見の時は値引き交渉出来ないかも聞くつもり。


ちなみに内見は楓にも付き合ってもらってるんだけど、案内担当の人から新婚夫婦と勘違いされて楓はめちゃ喜んでた♪


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「よっし こんなところかな」

「わぁキッチンきれいになったね」

「油汚れとか料理するたびに気になるんだけど毎回掃除するのは大変だからね」

「・・・・で綺麗にしたばかりのところで申し訳ないけど、お昼ご飯作ろっか?」


どちみちキッチンは使うから汚れるのは仕方ないけど綺麗にしたばかりだしなぁ


「きょ今日は裕也んところに食べに行かないか?確か今日は年内最後のランチ営業だろ?」

「ケンちゃんは私が作るお昼ご飯より美玖ちゃんの作る料理の方が・・・」

「え、あ、そ、そんなことはないよ 楓の料理の方が美味しいって」

「・・・ふふありがとう。冗談だよ清水君のところでお昼にしよ。折角掃除したんだもんね」

「な・・・脅かすなよ」


真面目に焦ったよ。浜野さんの料理って冗談抜きで美味しいからいつも褒めてるし気にしてるのかと思った・・・でも裕也のところで食事=浜野さんの作る料理なんだな。まぁ間違えてはいないかも。


ということで大掃除も一段落着いたので裕也の家に向かった。


「いらっしゃいませ!って健吾に小早川じゃん。昼飯か?」

「ああ、今日って年内最後のランチだよな?折角だし食べに来た」

「そっか。毎度ありってとこかな。空いてるところ座ってメニューでも見ててくれ」

「了解」


と俺と楓は空いてるテーブルに座りメニューを見た。

俺達学生は冬休みだけど会社は今日が仕事納めのところが多いみたいでサラリーマンっぽいお客さんで店内は結構埋まっている。ランチ営業も繁盛してるみたいだな。


「楓はオーダー決まった?」

「うん。私はこの"彩レディースセット"にする。いろんなメニューが少しずつ入ってて美味しそう。これ絶対美玖ちゃんの考案だよ!美味しいはず」


前はこんなメニューなかったよな・・・

でも確かに浜野さんが考えそうなメニューだな。だとするとこれもかな?


「じゃ俺はこの"働く男の欲張りランチメニュー"ってのにしてみようかな。これも浜野さんか裕也が考えたっぽくない?」

「うんうん 雰囲気するね」


だよな。ということで注文しようとホールのお姉さんに声を掛けたんだけど


「ひさしぶり~ 健吾君に楓ちゃん」

「って裕子姉?」

「あ、覚えててくれたの!2人とも特に健吾君なんて私の事忘れてると思ってたよ」

「いや、その・・・そんなことは・・・ないですよ」


裕也の3つ上のお姉さんである裕子さん。

小さい頃は雫姉同様によくからかわれたんで印象に残ってたりする・・・確か裕也からは都内の女子大に進学して一人暮らししてるって聞いてたけど。


「年末で里帰りですか?確か都内で一人暮らししてるって」

「うん。でね可愛い娘が折角帰ってきたっていうのに食費分くらいお店を手伝えとか酷い親だよねぇ」

「はは 相変わらずですね・・・」

「こら!姉貴ちゃんと働け!」

「うっわかったわよ・・・2人の事は裕也からも聞いてるわ。結婚式には私も呼んでね!じゃ」

「え、ええ・・・」


何だよ結婚式って・・・裕也どういう説明したんだ。

ってそれより裕子姉・・・注文聞いてくれてないんだけど・・・



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