第134話 クリスマス②
レストランでの食事を楽しんだ俺達は、再び送迎バスに乗ってイルミネーションイベントを開催している海浜公園に移動した。
イベント中ということもあり、ホテルも海浜公園とのシャトルバスを運行しているんだ。
公園入口で入園チケットを購入し、ゲートをくぐると、そこは光の世界だった。
ホテルからの眺めも綺麗だったけど、見上げる高さにある木々に取り付けられた青や緑のLED。それに花を模して花壇に配置された赤や黄のLED。
そこには幻想的な世界が広がっていた。
「きれい・・・・」
そういう楓の横顔も光に照らされていつも以上に輝いて見えた。
「楓もきれいだよ」
「ほぇ!?ケンちゃん不意打ちはだめだよ」
「あ、ごめん声が漏れてたわ」
「よ 余計に恥ずかしいよ・・・い 行こ!」
照れ隠しか俺の手を引いて園内の遊歩道を進んでいく楓。
少し冷たい海風が吹く中、時期もあるだろうけど園内は肩を寄せ合いながら幸せそうに歩くカップル客が大半を占めていた。
抱き合っていたり、キスしていたり・・・
・・・うん。正直一人では来たくないなここ。
当然のことながらそういう中を歩いていると俺達も何となく意識してしまう。
最初は手を繋いでいるだけだったけど、徐々に距離は縮まりいつしか楓も俺に寄り添うような形で歩いていた。
「ち 近いかな・・・」
「いや いいんじゃないかな」
俺もそっと楓の肩に手を回し抱き寄せるような形で歩く。
驚いたのか一瞬ビクッと震え俺の事を見つめる楓。
何だか可愛い。
普段の街中でこんなこと恥ずかしくて出来ないかもしれないけど、周りの雰囲気もあり俺も楓も少し大胆になれた。
雰囲気って大事だね・・・・まぁお互い照れてることには変わりないけど。
園内を少し歩き噴水広場に到着すると海浜公園の職員さんが写真撮影のサービスを行っていた。噴水とイルミネーションをバックにベストショットで写真を撮ってくれるらしい。
「楓、俺達も撮ってもらおうか」
「うん♪」
少し寒かったけど列に並ぶこと30分。
俺達の番が来た。俺のスマホを職員さんに渡し噴水の手前に楓と並ぶ。
「はい。彼女さんもう少し彼氏さんの方に寄って~
は~い そうそう!
彼氏さんも彼女さんも少し照れた感じで良い笑顔だねぇ
はい!撮りま~す」
[カシャ]
「はい!もう一枚!」
[カシャ]
「は~いお疲れ様ぁ~ 次の方~」
「何というか職員さん手馴れてるな」
「うん・・・あっという間だった」
長く並んだ割に撮影は一瞬だったけど、写真はものすごく綺麗に取れていた。
噴水が水を噴射するタイミングにあわせて撮られた写真は、俺たち2人はもちろんの事、公園のランドマークになっている洋館も木々や花壇のLEDの光もが綺麗に1枚の写真に納められている。
・・・あの職員さん凄いな。
その後も2人で沢山の写真を撮りクリスマスの思い出を心に刻み込んだ。
そして園内を1時間程度散策したところで最終の送迎バスの時間も近くなってきたため名残惜しかったけどホテルの部屋に戻った。
「綺麗だったな」
「うん。凄く良かった♪連れてってくれてありがとね」
「でも 夜はやっぱり寒いな。ちょっと冷えたよな」
「え・・・うん確かにちょっと冷えたかな うん」
「・・・そろそろ入ろうか」
「え、あ、う うん」
ちょっと俺が無理やりに誘導した感もあるけど何となくな雰囲気になり、俺と楓は部屋に備え付けられた露天風呂に向かった。
一応窓ガラスを閉めることも出来る様だけど、浴槽部分がベランダに作られていて湯船に浸かると外の空気を感じることが出来る。
もちろんここからもイルミネーションは良く見える。
前回来た時と同じようなシチュエーションだけど、楓もだいぶ慣れたのか今日は2人揃って浴室に向かった。
もっとも慣れたとはいってもお互い明るい中で裸になるわけで・・・・色々と見えてしまうので恥ずかしいことは恥ずかしい。
そして浴室の扉を開けると・・・・
「「寒っ!!」」
楓と2人慌てて掛け湯をして浴槽に入った。。。
12月の露天風呂は寒いっす。
前に泊まった部屋よりも浴槽も少し狭かったけど2人で入るにはちょうど良い大きさ。また浴槽・浴室の壁は檜で作られており、ほんのりと木の香りがして気持ちも落ち着かせてくれる。
そして、何よりも湯船に浸かりながら見る景色もまた素晴らしかった。
地上には綺麗なイルミネーションが瞬き夜空を見上げれば満点の星。
そして・・・隣には愛しい楓が居る。
温泉も心地いいし何だか贅沢な気分だ。
ふと楓と目が合うと楓は少しはにかみながら俺の肩にもたれ掛かってきた。
肌と肌が触れ合う・・・今はまだ駄目だ俺!頑張れ理性!
「今日は本当にありがとうね。家族みんなで過ごすクリスマスももちろん楽しいんだけど、いつか素敵な彼氏と・・・ケンちゃんと過ごせたらなぁってずっと思ってたんだ」
「楓・・・俺こそありがとうな。楓と一緒で凄く楽しかった。
また来年も・・いやその先も楓と一緒に過ごせたらと思う」
「・・・・・ケ ケンちゃん。
ま またプ プロポーズみたいになっちゃってるから・・・本気にしちゃうぞ!」
「本気にしてくれていいよ」
「え?」
海浜公園が閉演したのか灯っていたLEDの瞬きが一斉に消灯した。
明るく瞬いていた地上の光が消え辺りが静かな暗闇の世界に戻る。
「Merry Christmas」
月明かりの中で俺は楓にそっとキスをした。
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