第133話 クリスマス①

期末試験も終わり今日は2学期の終業式。


「いや~健吾に小早川 今回もありがとうな!」

「うん。2人のお陰かな」

「まぁ2人も頑張ってたもんな」

「そうだね。美玖ちゃんなんてバスケやってる時より真剣な顔してたよね」

「うぅ~私だってたまにはちゃんと勉強するよ」


期末試験の後、各授業では答案返却と問題の解説が行われたわけだけど、裕也と浜野さん曰く、高校入学以来で自身の最高得点を取ったとのこと。

もちろん平均点もクリアしているので冬休み期間の補習も無しとなり2人して楽しい冬休みを迎えられるとのことだ。


ちなみに俺と楓は順位こそ出ていないけどほとんどの教科が90点以上だったので学年でも上位の点数は取れていたと思う。

まぁ頑張って成果が出るとやっぱり嬉しいよな。


「じゃまた3学期な!」

「おぅ良い年を!」


と裕也と浜野さんに別れを告げ、俺達も帰宅の途に就いた。


「楓は準備大丈夫か?」

「うん。昨日のうちに支度しておいたから大丈夫だよ」

「そか。じゃ一旦帰ったら荷物持って楓の家まで迎えに行くな」

「うん♪」


今日は12月24日。

学校は終業式だけど世間的にはクリスマスイブだ。


楓と付き合い始めて初めてのクリスマスイブ。

レストランでディナー、シティホテルに1泊などありがちかもしれないけど思い出に残るようなプランは考えてみた。

ただ、現実は厳しく近場のホテルやレストランは全て予約でいっぱい。

横浜市内まで範囲を広げてみたけどこちらも目ぼしいところは同様だ。

こういうのって夏とか秋とかの早い時期に予約が必要なんだね。

そんな事知らんし、そもそも部活とか忙しくて余裕もなかったんだよね。

・・・今更ながらに反省だ。


結局、悩みに悩んだ末以前お世話になった真壁さんに相談してみたところ、前に利用させてもらった伊豆のホテルであれば1部屋融通できるということ話になったんだ。

真壁さん経由とは言え今回は繁忙期だし正規の料金で泊ることになるから結構な出費になるけど、素敵なホテルだったし温泉もあるということで行くことを決めた。

前回行ったのは夏だったけど冬の温泉はもっと気持ちいいんだろうなぁ~


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「それじゃ いってきま~す」

「はい。いってらっしゃい。ちゃんとゴムは持ってくのよ~」

「ちょ お母さん!!」


楓の家まで迎えに行くと五月おばさんが見送ってくれたんだけど。

いいのかそれで・・・まぁちゃんと買ってあるけどさ。


「全くお母さんたら・・・」

「まぁまぁ 悪気はな・・・くはないよな五月おばさんだし」


照れて顔を赤くしたままの楓を宥めつつ、前回と同様に川野辺駅から電車に乗り横浜経由で伊豆へと向かった。

ちなみに往復の交通費は楓が出してくれることになった。

『ケンちゃんばかりに負担はかけられないから』って。

今回ばかりは俺も出費が多かったので本当にありがたい。ちょっと惚れ直した。


出発が遅かったこともあるけど、送迎バスが来る伊豆高原駅に着いたのは16:00を過ぎていた。辺りも既に暗くなってきている。

そして、電車の到着時刻はホテルに連絡を入れていたので、もうそろそろ迎えのバスが来るはずだ。


「ちょっと寒いね」

「ああ12月だもんな。でもその分温泉も気持ちいいと思うよ」

「そっか・・・また一緒に入ろうね♡」

「おっ おぅ」


夏に一緒に来た時は恥ずかしがって中々入ってこれなかったのに楓も成長?したなぁ。まあ俺も楽しみなんだけどね。

などと色々と考えているとホテルの送迎バスが到着した。


「田辺 健吾様と楓様ですね。お待ちしておりました。ホテルまでお送りさせていただきます」


と運転手さんに声を掛けられ俺達は送迎バスに乗り込んだ。


「ケ ケンちゃん? 今のって」

「ふふ 親父の真似して予約してみたんだよ。嫌だった?」

「い 嫌なわけないじゃない。むしろ嬉しいし・・・」


そう。今日の予約はサプライズということで前回同様に"田辺 健吾と田辺 楓"で予約を入れたんだよな。喜んでくれてよかった。


ホテルに到着し案内された部屋は前の部屋よりは狭いけど、専用露店風呂もちゃんと付いたオーシャンビューの洋室だ。


「わぁ綺麗!!」

「だろ。これがあるって真壁さんに聞いてここの予約を決めたんだ。

 今日は遅くまで開場しているらしいから食事の後で見に行こうぜ」

「うん!」


ホテルと海の間にある海浜公園がクリスマスイルミネーションを実施していてそれを窓から一望することが出来るんだよね。

暗くなってきたこの時間帯に見下ろすイルミネーションの輝きは光の絨毯の様にも見える。本当に綺麗だ。

それに海浜公園は雑誌などでも特集されるカップルが多い人気のデートスポットだから楓とも行きたかったんだよね。


「そろそろ食事を予約してる時間だからレストランに行こうか。

 クリスマスの特別コースらしいから期待大だよ」

「本当!前に来た時もお食事美味しかったから凄く楽しみだな」


ドレスコードはないみたいだけど、少しお洒落をして向かったホテルの最上階。

暗めの照明に静かに流れる生ピアノの演奏。何というか大人な空間だ。


「ケ ケンちゃん。何だか私達場違いじゃないかな・・・・」

「だ 大丈夫だよ。緊張はするけどちゃんと予約も入れてるし服装だってそれなりのカッコにしてきたわけだし」


俺はカジュアルタイプのジャケット、楓はニットワンピ。

2人とも背も高いし、ちょっと見は大学生のカップルくらいには見えるんじゃないかなと思いつつ受付で立ち尽くしていると、ホール係の人と思われる初老の男性が声を掛けてきてくれた。


「田辺様でいらっしゃいますか?」

「はい、予約していた田辺です」

「お待ちしておりました。真壁オーナーより予約のお話賜っております。どうぞこちらへ」

「ありがとうございます」


案内された席は部屋と同じくイルミネーションを見下ろせる窓際の席。

何だか凄くいい席だ。真壁さんありがとう!

そして、俺達が席に座ると


「食前酒・・・の代わりのノンアルコールのスパークリングです」


と俺達の年齢と店内の雰囲気を考慮してノンアルコールのドリンクがワイングラスに注がれた。

そして、サーモンやマグロなど地産の野菜などの食材を用いたオードブルから始まり、魚介エキスたっぷりのスープ、メインディッシュとして魚のムニエルと牛ステーキと見た目も味も素晴らしい料理が次から次へと運ばれてきた。


「どうしよう・・・ケンちゃん美味しすぎる」

「そ そうだな。本当美味しい。

 それにしてもクリスマスとはいえ凄い贅沢してるよな俺達」

「うん。・・・・・でもね私はケンちゃんと一緒に素敵なディナーを楽しめてるだけで贅沢だし嬉しいんだよ。今日は誘ってくれて本当にありがとう」


楓・・・・俺をこれ以上惚れさせてどうするんだよ・・・


***********************

季節外れなお話ですが、もうしばらく季節外れシリーズが続きます。

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