第129話 冬の大会④

「川野辺ファイトー!」

「「オォー」」

「勝つよ!!」

「「はーい」」


珍しく村田さん達が円陣を組んで掛け声をだしている。

気合十分な感じだ。

俺達は自分達の試合が終わった後、川野辺大学の体育館で行われている女子の地区予選3回戦の応援に来ていた。

事実上の決勝戦とも言われていたこともあり、両校共に一般の生徒も応援に来ている。夏の大会もだったけど中々の盛り上がりだ。

そして森下学園側の応援席には藤原達男子バスケ部も来ているのが見える。


「福島。当然ながらあいつらも3回戦は勝ったんだよな?」

「あぁ。さっき結果を聞いた。次の試合は森下戦だ」


そう。森下も午前中に3回戦の試合だったんだ。

勝ったということは、次の男子4回戦地区予選の決勝は森下学園だ。

だから俺達も次が勝負だけど今日は楓達女子バスみんなの応援だ。


「楓!!頑張れーーー!!」

「川野辺ファイトーー!!」


俺と福島が声を上げるとコートの楓と村田さんが手を振ってくれた。

頑張れよ楓それにみんな。


-------------

試合開始。


ジャンプボールを制したのは森下だった。

森下の長身センター佐藤さんが川野辺の大野さんに競り勝った。

すかさずボールを拾った日岡さんが川野辺のゴール下に走りこむ夏川さんにパスを送り流れる様に先制点を奪った。


「やっぱり上手いね」

「うん。ポジション取りもいいしパスも正確」

「って相手を褒めても仕方ないでしょ。森下が強いのはわかってたことなんだから逆転行くよ!」


楓と浜野さんに村田さんが声掛けしてリスタートを掛ける川野辺。

が、中々リズムに乗れない。

楓が中に切り込むも夏川さんのマンマークに上手く動けず、パスを受けた浜野さんが3ポイントを狙うと長身の佐藤さんがシュートコースを塞ぐ。


「美玖のファンだったけど今日は敵。私だって中学3年間一緒にバスケしてたんだから美玖のシュートの癖とかもわかるつもりだよ」

「珠ちゃんやるね!んじゃ柚!」


シュートのモーションから柚木さんへのパスに切り替える浜野さん。

フェイント気味な動きで相手も一瞬ボールを見失った。中々上手い!

だけど佐藤さんも川北の出身で浜野さんと一緒にプレイしてきた仲間だし、主要メンバである日岡さんも夏川さんも同じく元チームメイトだ。

浜野さんにとってはやりにくい相手だよな。


「美沙 決めろーー!」


最近付き合い始めたという高田が柚木さんに声援を送る中、柚木さんが素早くシュートを放つ。

ゴールリンクにあたってしまうが、リバウンドに走りこんだ大野さんがそのままボールをゴールに押し込んだ。


「いいぞ!!」

「どんどん攻めてこーーー!!」


声援の中、試合は進むが日岡さんが司令塔である村田さんを完全に抑え込み川野辺はペースをつかめないまま少しずつ点差を付けられていった。


そして第2クォーターが終わり点差は8。

かなり厳しい展開だ。


「柚木は大室、大野は鮎川、浜野は吉見と交代。それから小早川はPG的な動きでボールコントロールをしろ。日岡が村田についてるならその分相手も戦力が落ちるはずだ。まだ十分逆転できるぞ」

「「はい」」


三上コーチからメンバ交代を告げられコートに戻るメンバ。

若干大室さんや鮎川さんは緊張していそうだ。結構大事な場面だしな。


「瑞樹ーー、大室ーーー気合入れてけ!!」

「も もう恥ずかしいでしょ!」

「ふふ 瑞樹照れちゃって。ありがとね栗田君!」


同じ中学出身の栗田の応援で少し緊張も解けたみたいだ。

と、そんな2人がコートで活躍を見せた。

夏川さんのマークにあいながらも楓が少し後方に下がり吉見とボールを回し、1年生2人を前寄りに配置しパスを送る。スピードのある鮎川さんが楓さながらにゴール下に切り込みシュートを放つ。大室さんはそのフォローだ。

日岡さんが動こうとすると今までとは逆に村田さんが動きをけん制する。

あ、今度は大室さんがリバウンドを拾ってレイアップを決めた。


「いいぞー小春ちゃーーん」

「ナイシュー大室!」

「いいぞー2人とも」

「そのまま攻めろ瑞樹!」


えーと確か文化祭の時に一緒に来てた同じクラスの子達だよな。

山下さんと有坂君と恩田先輩の弟さんの智樹君。後は富田さんだっけな。

応援に来てたんだな(俺って記憶力いいな)


第3クォーターは1年生2人の活躍もあり点差は縮まったけど、相手も徐々にこちらの動きを読んできたため、まだ2点差で負けている状態のままだった。


「みんな。まだ負け越してる。でも2点差は逆転できるよ!

 ゴールに1歩でも近づいてゴール決めてこ!」

「「はい」」

「よし。浜野と柚木、大野。途中で交代するからアップしとけ総力戦だぞ」


ラストの第4クォーター開始。

日岡さんに抑えられていた村田さんが、フェイントでマークを外し相手のパスをカット。素早く相手コートに切り込みマークが寄ってきたところでノールックで後ろに走りこんだ楓にパス。楓がゴールを決めて同点。


「いいぞーー!楓!」


そうだよな。

1年生2人の連携も良かったけど、楓と村田さんもこの2人は中学の頃からのコンビなんだよな。その後も2人の連携と交代して入った浜野さんや柚木さん達の活躍もありついに逆転。

その後も一進一退の攻防が続いたけど試合終了間際に村田さんのマークを外した日岡さんの3ポイントシュートが決まり再び森下が逆転。


そして・・・・そのまま試合終了。

森下学園が2点差で勝利することとなった。


応援席に楓達バスケ部メンバが応援のお礼を言いにやってきた。


「折角応援に来てくれたのにごめん。。。負けちゃった」

「楓達は練習してたし全力を出し切ったんだろ。次に森下と試合した時に勝てばいいさ」

「うん」


楓もだいぶ落ち込んでる。

でも・・・・村田さんの方が重傷だな。。。


「私が日岡さんにマークを外されなければ・・・」

「・・・綾子。相手が日岡さんが上手かったんだよ。そう思っておこうぜ。

 それにあそこで日岡さんを潰せてても夏川さんや佐藤さんがフォローに入ってたと思うぜ。観客席から見てたけど2人ともボールに向けて動いていたしポジショニングも良かった。ああいう場面の練習もしてたんだろうなきっと。だから、綾子が日岡さんを抑えてたとしても点は取られていた可能性は高いさ」

「・・・・ありがとう。次は太一達だからね。私達の分まで頑張って」

「おぅ!」


試合なんだ。勝つチームがあれば当然負けるチームもある。

楓も村田さんもチームのみんなも全力で頑張ったんだ。

女子の分も次の試合は頑張らないとな。

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