第128話 冬の大会③
「でね。森田さんってちょっと天然なところもあってすごく可愛いの♪
それに夏川さんも恋愛話とか好きなのにすぐ照れちゃって」
「へぇそんな感じの子なんだ。藤原からよく話は聞くんだけどこの間会っただけだからな。夏川さんは何だか意外だなぁ」
紅葉の家庭教師を終えて帰宅しようとしていると喫茶店でのバイトを終えた楓が帰宅してきた。
何だか少し思いつめた顔をしてたので何かあったのかなとリビングに戻り少し話を聞いていたんだけど、楽しそうに話をしているし気のせいだったのかな?
「あ、夏川さんといえば、今週末女子は森下戦だろ?」
「え?う うんそうだね・・・・」
楓の表情が明らかに変わった。
そっか・・・
「緊張してる?」
「・・・やっぱりケンちゃんにはバレちゃうね。すごく緊張してる。私もだけど多分部のみんなもかな。去年も接戦だったし練習試合も負け越してるから。
それに今日夏川さんとバイトが一緒だったから変に意識しちゃって。。。」
「そっか。確かに俺達男子もだけど森下には練習試合負け越したもんな」
「夏川さんも日岡さんもすごく上手いし、あのチームって夏からレギュラーはあんまり変わってないんだよね」
「確か夏も2年生が主体のチームだったんだよな」
「うん。それに比べてうちは恩田先輩を中心としたチームだったから・・・」
「でも楓も村田さんや浜野さんも練習してきたんだろ?大丈夫だよ」
「うん」
ここまで緊張している楓も珍しいな。
確かに男子と同様に森下学園は女子にとっても最大のライバル校だし力も均衡している。それに村田さんの体制になってからは初の公式戦だしな。
変に硬くなりすぎても普段の実力を出せないだろうしちょっと心配だな。
「確か楓達の試合って午後からだよな?
俺達の試合は午前中だし会場も近かったと思うから応援に行くよ」
「え?でもケンちゃん達も試合の後で疲れてるでしょ?」
「大好きな彼女の応援だと思えば苦じゃないさ。
それに裕也や福島、由良とかも誘ったら絶対行くと思うぜ」
「ふふ 確かにそうかもね。じゃお願いしちゃおうかな。
あ、もちろんケンちゃん達も試合に勝たなきゃ駄目だからね」
「そ そりゃもちろん!」
ちょっと笑ってくれた。
俺達も3回戦だし楽な相手じゃないはずだけど気合入れて試合しなきゃな。
--------------------
そして、翌日金曜日放課後。
3回戦の前最後となる練習を行った。
試合前ということで相手チームに関するミーティングの他ミニゲームなど実践的な練習を多く行った。
特に女子は、チーム力的に見ると今回の川野辺と森下の試合が事実上の決勝戦の様なものだ。
三上コーチのもと森下のプレイに対応すべくセットプレイやシュート含め入念な練習を行っている。
そして練習終了後、村田さんが部員たちに話をしているのが聞こえた。
「川野辺高校女子バスケ部はここ数年夏・冬ともに全国に出場しています。
明日の3回戦の相手となる森下学園は練習試合で戦った通り強いですが、私達の代になって弱くなったと言われないよう絶対に勝ちにいきましょう!」
「「はい!!」」
俺達も負けてられないな。
ちなみに応援の件は福島も裕也ももちろん賛成。
特に福島は村田さんの事が心配だったらしく張り切っていた。
最も俺達も試合があるわけだし勝たないと応援なんて言ってられない。
明日は俺達も3回戦に勝って楓達の応援だ。
--------------------------
翌日
「楓!行ってくるな」
「うん。試合頑張ってね」
男子バスケ部の試合は午前中に市内の体育館で行われる為、駅前で待ち合わせて皆で移動する。
女子も市内の別の体育館で試合だけど午後からということで学校で軽くアップしてから行くとの事だ。
女子の試合を応援に行くとか言ったものの俺達の相手も3回戦に上がってきた高校なわけだから弱いはずは無いし、俺達もそれほど余裕はない。
でも、当然俺達も勝って決勝に行きたいし女子の試合に弾みをつけるためにも勝つつもりだ。
今日の相手は桐洋工業高校。最近は大きなタイトルから遠のいていたけど昔は全国大会常連の古豪だ。
ちなみに共学だけど女子生徒が少ないこともあり女子のバスケ部は無い。
そして試合開始。
ジャンプボールは長谷部が競り勝ち、落ちたボールを福島が拾い相手ゴールに切り込む。
が、相手も俺達の攻撃パターンは当然研究しているらしくゲームの起点となる福島に2人のマークに付く。
しかし、福島は冷静に逆サイドに走りこんだ吉見にパス。
先制は吉見の3ポイントとなった。
川野辺は速攻攻撃型のチームということもあり、相手チームはスピードを意識してゾーンディフェンスでゴール下を固めてきた。
ただ、以前の俺達には有効な作戦だったかもしれないけど、夏の大会以降吉見が3ポイントの精度を高め外から狙える選手に成長したため攻撃のパターンも増えていた。
相手のディフェンスを見たコーチは、長谷部を同じく3ポイントを得意とする高田に交代させ左右から揺さぶりをかけた。
そしてディフェンスに穴があくと俺と裕也が切り込みシュートを決めた。
結果"大差で"とはお世辞にも言えない得点差ではあったけど試合は川野辺高校の勝利に終わった。これで次は4回戦。順当に勝ち上がってきているなら相手は森下学園だ。藤原や笹原との再戦となる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます