第113話 悩み事③
森下学園との練習試合から数日が経った。
接戦だったとはいえ、負けたことに変わりはない。
ということで、男女ともに練習は今まで以上に厳しく実戦形式のものとなった。
1年生もこの半年高校バスケで揉まれてだいぶ成長してきていたし
「はぁ はぁ 健吾。もうバテたのか? シュートの精度落ちたんじゃないか」
「そ そういう裕也もスピード落ちてるぞ。今も簡単に抜かれただろ」
「くっ もう1本行くぞ!」
「おぅ !」
俺も裕也もボロボロになりながらも練習を続けた。
次の試合は冬の大会の地区予選。当然のことながら1敗で即予選終了だ。
俺達の代になって弱くなったなんて言われたくない。
絶対に負けられない。
そして、部活帰りの帰り道。
今日は楓の他に裕也と浜野さんも一緒だ。
雑談をしながら歩いているとスマホにメッセージが届いた。
[ピン]
「ん?メール?」
「なんだ健吾?おんなかぁ~」
「え!ケンちゃん浮気なの!」
「ち 違うって俺は楓一筋だ! 変なこと言うな裕也。
そもそも女じゃなくて、藤原だよ森下の」
「森下の藤原って、お前らそんな仲が良かったのか?」
「ああ、バイトも一緒だし何だか話が合うんだよな」
そうなんだよな。藤原って落ち着きがあるし何となく話しやすいんだよな。
藤原も結構俺に絡んでくるし。
時々何考えてるんだかわからない時あるけど・・・
雰囲気的には吉見に似てるかもな。
「そうそう。この間なんてケンちゃんの家に遊びに行ったら藤原君とオンラインゲームやっててちっとも相手してくれなくて」
「あーーあれは悪かった。本当ゴメン。でもちょうどボスキャラのとこでさ」
「折角夕飯作って持ってったのに・・・」
「あーーそれは健吾が悪いな。
でも小早川。健吾の家に夕飯作って持っていったりしてるんだなぁ~♪」
「・・・・・!? それは その・・・はい」
「うん。お熱いねぇ~♪」
楓自爆。浜野さんまで煽るから顔真っ赤だ。
でも、感謝してますよ。いつもありがとな楓。
それはそうと、藤原は何の用事だ。
[ちょっと相談したいことがあるんだが]
帰宅後、俺は藤原にメッセージを送った。
[悪い返事遅くなった。相談事って何だ?]
[あぁ出来れば直接話したいんだけど明日の放課後とか時間取れるか?]
[明日なら部活もバイトも無いから大丈夫だぞ]
[ありがとう。手間かけて悪いけど川北のバスターミナル前に「Woods」ってカフェがあるから、そこで会えるか]
ん?「Woods」?何だかつい最近行ったような。
[大丈夫だ。多分17:00位になるけどそれでいいか]
[問題ない。俺も多分それくらいになる悪いな手間かけて。それじゃ明日頼む]
[了解。じゃ明日な]
-----------------
翌日の放課後。
いつもの様に楓と下校し、家で私服に着替えた後、駅前からバスで川北のバスターミナルへ向かった。
そして待ち合わせの「Woods」へ。2度目だなここ。
「田辺」
「おぅ藤原。待たせたか?」
「いや、まだ来たばかりだ。コーヒーでいいか?奢るよ」
「ありがとな。じゃコーヒーで」
藤原はまだ制服だったから学校帰りにそのまま来たんだな。
「家はこの近所なのか?」
「ん?あぁここから川野辺方面にちょっと歩いたところだよ」
「へぇ この近所なんだ。
じゃ梶って知ってる?そこのマンション住んでるんだけど」
「ああ中学の時は結構良く遊んだな。梶って川野辺だよな。知り合いなのか?」
「そだな。裕也達と昔サッカーでちょっとな」
「そうか。梶ってサッカー部だったな。田辺と清水もサッカーやってたんだ」
意外となところで繋がったな。
でもまぁ学区内の中学や高校だし結構知り合いもいるよな。
結城達も藤原や夏川さんの知り合いみたいだったしな。
「で、相談ってなんだ?対面で話したいって深刻な話か?」
「・・・・なぁ田辺」
「ん?」
「恋、恋愛って何だ?付き合うってどういうことなんだろう」
「へ?ちょっとまて なんの話だ?」
「す すまん急だったな。田辺には前に由紀の事話したよな」
「ああ」
「今でも好きな気持ちは変わらないんだ。
あいつも俺に振り向いてもらうため頑張ってる。
だけど・・・・肝心の俺が何だかよくわからなくなっちまって」
もしかして吉見に続いて、藤原も俺に恋愛相談なのか?
何でだ!俺って楓が初恋&初彼女だぞ。
「あぁ 俺もそ そんなに恋愛経験があるわけじゃないんだけど・・・」
「そうなのか?優から田辺ならいい答え貰えるかもって」
優って吉見か!そうか吉見は中学時代チームメイトか・・・
って俺は吉見にそんなにいいアドバイスしたか?
結構、藤原の話って深刻じゃないか。いいのか本当に俺で。
「そ そうだな・・答えにならないかもしれないけど俺の考えとして聞いてくれ。
友達って男女問わず一緒に居て楽しい人だと思うんだ。俺にとっては裕也や福島、村田さんや浜野さん。それに藤原も大切な友達だ。
恋人は、その延長線上で一緒に居て気を遣わず安らげる人かな。そして、そんな恋人と一緒に居たいとか特別な存在になりたいとか思うのが恋愛なんじゃないかな。守ってあげたいとか独占したいとか。
俺にとっては楓だ。あいつとは今年の4月に7年振りに再会した。正直久しぶり過ぎて最初は何を話していいのかわからなかった。でもあいつは7年間俺の事を思っててくれたんだ。そしてあいつに抱き着かれたときに俺も自然と心地よい気持ちになれたんだ。それでいつの間にか自然と告白してた。で、その後であらためて思ったんだ俺はずっと楓が好きだったんだってな」
「・・・・・」
「藤原も森田さんの事が好きな気持ちは今もあるんだろ?
だったらそんなに難しく考えずに友達から仲良くしてけば、自然と本当の気持ちに気が付くんじゃないか?
あっ、ただ一緒に居るだけで相手に気持ちが伝わるとか上手い話は無いからな。気持ちに気付けたら思いはきちんと伝えないとな」
「・・・田辺。やっぱり吉見の言ってた通りだよ」
「こ これで良かったかな?あくまでも俺の考えだけど参考にしてくれれば」
「あぁ参考にさせてもらうよ。また何かあったら相談させてくれ」
「あぁまぁ俺のコメントが役にたつんならな」
そして藤原は何だか少しすっきりしたような顔をして帰って行った。
そして思った。俺・・・結構恥ずかしいこと真顔で話してなかったか・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます