第112話 再戦②
次の試合に向け女子チームがアップを開始する中、俺と裕也は応援してくれていた結城達のところに移動した。
「田辺、清水!」
「おぅ結城。応援に来てくれてたのに悪かったな」
「いや、ほとんど勝ってた試合じゃんか。凄かったぜお前ら。特にアリウープとかNBAかと思ったぜ」
「本当です。最後のは藤原君の運が良かっただけですよ」
「はは 褒め過ぎだって」
藤原君?そっか結城達とは同じ中学か。
確かにあのシュートは・・・何度も狙って出来るもんじゃないよな。
「渋川さん達は藤原と中学が一緒だったんだよね?」
「はい。浜野さんや吉見君もですけど藤原君と笹原君は中学でクラスも一緒だったんです」
「そうか。でもそうだよな。運もあったかもしれないけどやっぱあいつ凄いよ」
「だな横田や笹原も凄いけどバランス見ると藤原が一番要注意かもしれないな」
俺達が藤原の話で盛り上がっていると渋川さんの横に居た大崎さんがコート脇に吉見を見つけ声を掛けた。
「吉見君!お疲れ様。残念だったね」
「ああ、そうだな。でもやるだけはやったし次の大会で勝てればいいさ」
大崎さんに声を掛けられた吉見も俺たちの方に移動してきた。
何というか今日は吉見も活躍したからな。
これだけ接戦になれたのも吉見が後半で得点に絡む機会が多かったからだと思う。
それにしても大崎さんに対して話してる吉見は何だか楽しそうだ。
俺には恋愛が良くわからないとか感情が余りないようなこと言ってたけど大崎さんは吉見の感情をいい感じに引き出してくれているのかもな。
「美津子! 優君!」
森下学園側のコートから1人選手がこちらに走ってきた。
確か副部長の夏川さんだったかな?
ラウムでバイトしてるらしいけどまだシフトが被ったことはないんだよな。
なんだろっていうか名前呼びしてるってことは知り合いなんだろうな。
「2人とこうやって話しするのは久しぶりだね。元気にしてた?」
「う うん。唯香も元気そうで」
「あぁ・・・」
楽し気に話しかけてくる夏川さんに比べて、何だか吉見と大崎さんの表情は硬く気まずそうな雰囲気だ。仲が良いわけじゃないのか?
「2人とも変な顔しないでよ。美津子と優君付き合う事になったんでしょ?
恵から聞いてるよ。私も嬉しいんだよ2人が付き合うようになって」
「唯香・・・」
「だって、私が優君と付き合いたいとか言わなければもっと早く2人は付き合ってたのに・・・
私、2人の気持ち知ってたのに・・・本当に申し訳ないと思ってたんだ」
「そんな・・・だって唯香だって吉見君の事が好きだったんだし」
「そうだ。俺が色々とはっきりしなかったのが悪いんだよ」
何やら色々揉めているような気がするけど大丈夫なのか?
確実に色恋沙汰の話しだよなこれ。俺も裕也も心配になり横に居る渋川さんと結城を見た。
が、何だか2人とも落ち着いた様子で3人を見ている。
「なぁ結城 あれって大丈夫なのか?」
「ん?あぁ多分大丈夫だよ。元々あの3人仲良かったんだけどな色々あって疎遠になっちゃっててな。
仲直り出来る様に俺たちもちょっと大崎の後押ししてたんだよ」
「うん。恵ちゃんも気にしてて、夏川さんに話してたみたいだし後は3人次第かなって」
ふ~ん。何だか色々とあるんだな。
しかし・・・夏川さんも大崎さんも中々の美人さんだし吉見はやっぱりモテるんだな。
「2人とも気にしすぎだよ。
気にするなら3人ともみんな悪かったでいいじゃない。
だからもうこの話は終わりにしよ」
「・・・・」
「この間ね。恵に2人の事を教えてもらったの。
その時に言われたんだ。3人は友達なんだから唯香もお祝いしてあげてねって。
恵はね。多分私が2人と話をするきっかけをくれたんだと思うんだ。
私もね2人が・・・2人が私に遠慮して中々付き合わなかったから気にしてたんだよ。だから・・・本当におめでとう」
「・・・ありがとう唯香」
「うん。それにね・・・私も最近気になってる人が居るんだ。
2人も付き合い始めたことだし、私も勇気だして告白してみようかなって思ってるんだよ」
「そうか。頑張れよ夏川」
「ありがとう。じゃそろそろ行かないと。
試合前だけど、もやもやした気持ちで勝負したくなかったから・・・。2人とも仲良くね!」
「ああ、夏川に言われなくても仲良くするさ」
「まったく私の時とは偉い違いね・・・じゃ今日の試合は男子同様私たちが勝たせてもらうからね!」
と吉見達と笑顔で別れた夏川さんはバスケ部の仲間のところに戻っていった。
何というかカッコいいな夏川さんって。
再び横を見ると結城と渋川さんも満足そうな顔をしている。
これで良かったのかな?
その後に行われた女子の試合は、俺達には残念な結果だった。
接戦ではあったが、夏川さんの宣言通り森下学園の勝利となったんだ。
男子同様に僅差だったけど、PGの日岡さんとSFの夏川さんの活躍が目立った試合だった。
川野辺高校をよく研究してきたというか、得点源である楓や吉見 妹、それに前回活躍した浜野さんらをフリーにさせないディフェンス、それに起点となる村田さんを抑え込んだ日岡さん。どれをとっても森下学園が1枚上手だった。
男子・女子共に僅差とはいえ、負けは負けだ。冬の大会まではもう1か月を切っている。もう一度気合を入れなおさないとな。
***************
森下学園のメンバの試合後の様子は「幼馴染は俺と付き合いたいみたいだけど、もう無理かも」の閑話に続きます。
7年後の約束は基本月、水、金、余裕があれば日で更新を行ってますが、日曜は誤字脱字のチェックをやろうかと思うので、1日早いですがアップさせていただきました。
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