第103話 文化祭③
文化祭初日。
風が心地よい秋晴れの穏やかな日だ。
今日は平日の開催ということで、基本は在校生と近隣の中学生が午後から学校見学も兼ねて来るくらい・・・ということで油断をしていたんだけど何この行列。
俺達の出店しているメイドカフェ、執事喫茶共にオープンとほぼ同時に行列が出来た。それも在校生だけじゃなく川倉高校や倉北学園、森下学園といった近隣の高校の制服を着た生徒も居る。なんでだ?
「田中先生。今日って在校生や招待客だけじゃなかったんですか?」
「ああ 他の高校の件だな。なんでも高校の文化祭を地域振興に役立てるっていうのが市の方針で決まったらしくてな。その一環で今年から各高校の文化祭時期を被らないようにしたり生徒会や文化祭実行委員を各高校のイベントに招待して相互交流することになったらしいんだよ。うちの高校もだけど最近は招待状が無いと文化祭は入れなかったりするだろ?だから、高校間の交流も少なくなってたからな」
「じゃあ今来てるのは他の高校の生徒会の人とかなんですか?」
「そのはずだな。まぁ選別は各校任せだから各クラスの代表者だとか生徒会じゃない生徒もいるかもしれないけどな」
へぇ~そんなことになってるんだ。
ってことは俺達も他校の文化祭に行けたりするのか?
それはそれで楽しみかもしれないな(授業もサボっていけるみたいだし・・・)
「それにしても大盛況ね」
「あ、山口先生。
本当ですよね。在校生はともかく他校の生徒までこんなに並ぶとは思いませんでしたよ」
そう。メイドカフェ、執事喫茶は共に店内20名前後の飲食を想定して内装を作っていた。あんまり入れるようにしても接客や調理が大変だからだ。
また、混んでるときは時間制にすることとしていたけど、既に列は40人近く開店早々に時間制限を付けて運用していた。
例年メイドカフェは人気あるらしいけど随分需要があるんだな。
「中々の盛況ぶりだな」
「これ、、、料理部とか大変かもしれませんね」
執事の服装の結城とメイド服の渋川さんだ。
「あれ、二人って店内シフトじゃなかったっけ?」
「そうだけどちょっと宣伝にな」
「宣伝?」
「そ。このカッコのまま二人で校舎内をチラシ配りながら一周してきたんだよ。
思った以上に効果があったみたいだな」
そうか。そりゃお客さんも増えるか。
結城も渋川さんも彼氏・彼女にしたいランキングの上位ランクの有名人だからな。それに二人とも衣装似合ってるし。
「渋川さん。そのメイド服凄く似合ってるわよ」
「ありがとうございます。山口先生!
あ、先生も良かったら来てみますか?予備の衣装とかありますよ?
それか・・執事衣装も着れますよ♪」
「えっ私が?私みたいなおばちゃんが着ても似合わないわよ。
ね・・・田中先生?」
山口先生の田中先生を見る視線"似合わないとは言わせない"的な・・・
「え?そ そんなことないと思うぞ。山口先生ならどんな服でも似合うよ」
「まぁ田中先生お上手なんだから。でもそうね後学のためにちょっと着てみようかしら♪渋川さん衣装貸していただける?」
「は はいこちらです」
と山口先生や渋川さんに案内されて女子用に割り当てられた控え室へと入っていった。渋川さんも山口先生の圧に押されてるな・・・
って言うか着たかったのか?山口先生。
「田中先生・・・・何だか色々と大変そうですね」
「ははは・・・もう慣れた」
先生色々とお疲れ様です。
「ケンちゃん。料理部が人手不足みたいだからちょっと手伝ってくれないかな」
「おぅわかった」
と料理部を見に行っていた楓から支援要請。
こういうのも今日の俺達の仕事だ。
文化祭は10:00-17:00までの7時間。
俺達は3交代でシフトを作って交代で店内・見回り/支援・自由行動とチームを分けていた。ちなみに今は俺と楓のチームが見回り/支援で結城と渋川さんのチームが店内、吉見と森川さんのチームが自由行動だ。
「あ、田辺君。手伝いをお願い!予想以上にお客さん多くて・・・」
「何すればいい?」
「うん。田辺君は長谷部君と湯川さんと入れ替わってコーヒー作るのお願いできる?長谷部君のお店で慣れてるよね?」
「おぅコーヒーなら任せとけ!注文が入ったら作ればいいんだよな」
「うん。長谷部君と湯川さんには調理の方にまわってもらうからお願い!」
「田辺。頼んだぞ」
「任せとけ!」
と長谷部と湯川ちゃんを送り出し俺はひたすらコーヒーを煎れる係となった。
コーヒーの香りって何だか落ち着くなぁ~
と注文伝票を見ながらコーヒーを煎れているとメイドカフェの方から歓声が聞こえた。
「「おお!!!」」
なんだ?料理部のメンバも気になったのか店内を覗いてみると・・・
メイド服に身を包んだ山口先生が田中先生に接客をしていた・・・
夫婦でどんなプレイだよw
ちなみにお世辞抜きで山口先生のメイド姿は似合ってる。
まぁメイドさんって言うよりはメイド長的な雰囲気だしてるけどな。
-------------------
12:00を過ぎたけど一向に客足は減らない。
他の校内を見てきたクラスメイトの話だと他の教室も賑わってはいるが、俺達のところがダントツだそうだ。
っうか多分時間制にしたから何度も来てるやつとかいるよな。
さっき見たやつとかまた並んでるし。
忙しい時間が続いていたこともあり自由時間あけの交代メンバが来てくれたんだけど俺達はまだ調理室で手伝いをしていた。
「田辺君、楓ちゃん。二人はこの後店内でしょ?
ここは交代してもらうから、店内に入って貰って大丈夫だよ」
「そうか?じゃ楓行くぞ!」
「うん。じゃ美玖ちゃんも頑張って!」
「二人ともありがとね♪」
俺達は浜野さんが作ってくれたサンドウィッチを急いで食べ、休む間もなく店に入った。もちろん二人とも執事服だ。
「「楓先輩!!」」
1年の鮎川さんと大室さん。
それに友達か女子生徒数名が店内に入った楓を囲んだ。
「楓先輩カッコいいです」
「流石先輩っすね。男装も素敵です」
「初めまして山下といいます。あの・・・先輩素敵です」
「あ あの富田です。凄く綺麗です」
何というか宝塚的なノリなんだろうか。皆目つきが違う。楓お姉様的な。
一緒に来たのか栗田と恩田先輩の弟さん(智樹君だったっけな)もテーブルに座っていたが、こっちはメイド姿の村田さんの接客にニヤケまくっていた。
村田さんは村田さんで妙に似合ってるんだよな・・・メイド服。
ちなみに俺は俺で、そこそこ女子からの受けもよく一緒に写真撮られたり色々と話しかけられたりした。
まぁその度に楓の視線が怖かったことは・・・・まぁ
そんな店内。俺達のシフトもあと少しというところで紅葉達が入ってきた。
「お姉ちゃん!ケン兄ちゃん」
「こんにちわ」
「おっ来たな紅葉。それに高坂君もいらっしゃい」
「もぅケン兄ちゃん。今日は私もお客様だよ」
「悪い。そうだな。じゃあらためて・・・
"おかえりなさいませお嬢様。どうぞこちらの席へ"」
ん?どうした紅葉。
「お お姉ちゃん。ケン兄ちゃんが凄くカッコいいんだけど!!」
「何言ってるのよ。ケンちゃんはいつもカッコいいでしょ?」
「うん。でも今日はいつもの数倍カッコいいよ」
「・・・・・あ あの」
高坂君。無理に会話に入らなくてもいいからな。
この二人はいつも家ではこんな感じだ。
こうして文化祭初日はバタバタしながらも何とか終えることが出来た。
あ、ちなみに紅葉と高坂君は、カップル専用のパフェを食べて帰りました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます