第104話 文化祭④

文化祭2日目。


「そこもうちょっと左にずらして。うん。それくらいで」

「誠君 椅子の向きはこれで大丈夫?」

「ああ大丈夫だ。ありがとう美代」


と長谷部と湯川ちゃんが、仲良さげに開店前の店内レイアウトを一部修正していた。昨日予想以上にお客さんが来たため、テーブルを少し詰めて収容人数を増やすためだ。最も増やしすぎても接客側が大変なので数席増やす程度だけどね。


今日は土曜日ということもあり在校生の親や、学校のOG/OB、それに昨日来た近隣の中学生や高校生も来るのでお客様も昨日より増える可能性が高い。

ある意味本番だ。


「確か、五月おばさん達も来るんだよな」

「うん。午後は混むだろうから早いうちに来るとか言ってたかな」

「だとするとちょうど俺達が店番の時かもな。

 楓のメイド服とか見たらおじさんビックリするぞ」

「な 何だか親の前でメイド服とか照れるね・・・」


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「楓ちゃん素敵!!」

「お お母さん恥ずかしいから・・・」


オープンして30分くらいたったところで小早川家ご一行が到着した。

何というか五月おばさんのテンションが高い。

シックなメイド服を着ている楓をいろんな角度で写真に収めている。


「あ、健吾君も楓の横に並んで!あっ何かポーズ取った方がいいかしら?」

「五月おばさん・・・ほ 他のお客様もいるので・・・」

「あらごめんなさい。何だか娘と未来の息子のメイド服や執事服が似合いすぎてて、つい興奮しちゃって。じゃ後1枚だけ!誠子と雄一さんにも送るから♪」


どうやらうちの両親にも写真を送るらしい・・・結構恥ずかしいぞ。


「うん。いい写真撮れた。二人の結婚式で使えるわね」

「お お母さん!!」


これでうちの親も居たら大変だったな。

あっでも来年は・・・うちの親も来るのか?


「小早川さんのお母様って中々面白い方ですね。

 それにもう結婚の話までされているとは流石ですわ。

 私も隆さんのご両親にもっとアピールしなくちゃ」


楓、何だか渋川さんに変なところ感心されてるぞ。

でも五月おばさんは相変わらずだな。大樹おじさんも大変だ。


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「どう?繁盛してる?」

「あ、小島先生お疲れ様です。見回りですか?」

「そうだな。今日は私と三宅先生が見回り当番なんだよ。

 まぁ午前中で仕事も終わりだから後少しだけどな」

「へぇ。午後は三宅先生と見て回るんですか?」

「い いやその・・・ひじゃなくて 相良さんを呼んだんで2人で回るんだ」

「おっ 相良さんが来るんですね。先生達も仲いいですよねぇ」

「う うるさい! 天然でイチャイチャしてるお前らと一緒にするな!」


天然でイチャイチャって・・・毎回言われ方違うよな・・・

でも先生達のイチャつきも大概ですよ・・・


「あっ小島先生。今の聞いてましたよ!噂の婚約者さんが来るんですね」

「うっ早瀬。聞いてたのか」

「聞いちゃいました ということで小島先生には婚約者さんを更に惚れさせるあることをしていただきます!」

「あること?」

「ということで、今からこのメイド服に着替えちゃって下さい」

「な なんで私がメイド服を着なきゃならないんだ」

「もうメイド服が嫌いな男性なんていませんよ。先生スタイル良いし絶対似合いますって。こんな服着て"おかえりなさいませご主人様♡"とか言ったら、もう婚約者さん更に先生の事好きになっちゃいますよ!」

「・・・は 早瀬、もうそろそろ洋さん来るから、早く着替えようか・・・」

「はい♪」


結局着ちゃうんですね・・・

チョロすぎですよ・・・


そして、到着した相良さんに

「い いらっしゃいませ ご ご主人様」

と少し噛みながらも定番のご挨拶でお迎え。

早瀬さんの想定通りというか、相良さんも小島先生のメイド姿は大絶賛。

確かに小柄でスタイル抜群の先生は女子高生には無い色気というか何というか、昨日の山口先生にも通じるものが感じられたし凄く似合ってた。


先生も気に入ったのかメイド服のまま相良さんの手を引いて校内に消えていった。あれ、後でみんなに弄られるパターンだな・・・

小島先生って結構天然だよな~


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「よっ健吾。中々執事服似合ってるじゃん♪」

「え!雫姉どうして?」

「ふふん 昨日編入の手続きで一時帰国したのよ。

 本当は直ぐ帰る予定だったんだけど、亮君に川野辺高校の文化祭の事聞いてね戻る前に寄ってみたんだ。亮君も職員室に寄ってくるって言ってたけどもうじき来るはずよ」

「そうなんだ。というか亮兄にはちゃんと会うんだね」

「い いいでしょ 遠距離で付き合ってるんだからたまには」


「えぇ雫姉!!なんで」

「おっ楓ちゃんと綾子ちゃんはメイドさんか二人も中々お似合いだね♪」


と雫姉は楓達と楽し気に女子トークを始めてしまった。

楓、村田さん・・・まだ仕事中だよ~


雫姉は、しばらくして現れた亮兄に連れられて他の出店に移動していった。

今日は二人で文化祭を見て回り、そのまま空港へ向かうそうだ。

でも、編入手続きって言ってたけどもうあと半年もしたら雫姉も親父達もこの町に来るんだよな。俺も一緒に住むわけだし・・・何だか日が経つの早いな。


雫姉たちが去った後も俺達の店は相変わらずの賑わいだった。

カップル用パフェも早々に品切れとなったし、映えを狙って作ったアイスとベリー系ジャムが彩るパンケーキ等も飛ぶように売れた。

売上集計は後で行われるけど、金額的には資材費用考えても黒字でいけたんじゃないだろうか。


そして17:00。文化祭終了を告げるアナウンスが流れる中でメイドカフェと執事喫茶は営業終了となった。


「何だかあっという間だったな」

「ほんとだね。でもケンちゃんと一緒の文化祭 楽しかったなぁ~」

「ああ 俺も凄く楽しかった」


まだ後片付けはあるけど、こうして2日間の文化祭は終了した。

明日1日休みを挟んで明後日は体育祭だ・・・疲れたんですが。。

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