第97話 ディフェンスライン

秋の連休も終わり、いつもの生活が戻ってきた。


2学期も文化祭や体育祭、修学旅行と相変わらずイベントは多い。

そうなると学業優先の進学校ということで部活が出来る時間は限られてきてしまうわけだけど、俺達はそれぞれの課題を明確にして無駄なく練習を行い成果を求めていた。

福島部長の体制になってから行った練習試合は今のところ2勝1敗。

地区予選のライバル校でもある森下学園には残念ながら負けてしまった。

得点力はそれなりに維持は出来ていたけど、やはりディフェンスが強かった3年生が抜けた穴は大きく、まだまだチーム内の連携含め課題も山積みな状態だ。


「栗田、吉見!足が止まってるぞ! 由良サボるな!」

「「「はい!!」」」


1年の栗田に2年の吉見と由良、現状この3人がディフェンス寄りの選手としてコーチの指導を受けている。

中々にスパルタだ。。。


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「田辺先輩。少し居残り練習付き合っていただけませんか?」

「ん?いいけど、裕也じゃなくていいのか?」


練習終了後、俺は栗田に声を掛けられた。

栗田は裕也の弟子というか中学からの後輩ということで良く一緒に居残り練習してるんだよな。


「はい。清水先輩からは、たまには自分以外の選手も経験した方がいい。特に田辺先輩を抑えられるようになったら一人前だって言われてまして」

「はは、随分持ち上げてくれてるな」(ってあいつ帰りたかっただけなんじゃ)


「あれ?ケンちゃん居残りするの?」


栗田と話していると楓が話しかけてきた。女子バスも練習終わったんだな。


「ん。少し栗田の練習に付き合おうかと思ってな」

「あ、小早川先輩。すみません田辺先輩お借りしちゃって・・・」

「え?はは いいよバスケ部のためだもん。

 っていうか私も手伝っちゃおうかな」

「え?」

「パス回しするオフェンスをディフェンス一人でって結構な特訓になるよ」


なるほど。俺と楓でゴールに攻め込み栗田が一人でって事か・・・

結構どころかかなりハードじゃないかそれ。


「是非!是非お願いします!」


やるんか栗田。しんどいぞ多分。。。。

ということで、栗田の特訓スタート。


「楓!」


俺は楓にパスを送りゴール下に走り込んだ。

パスを受けた楓も素早くゴール下に向かいドリブルを開始。

朝のランニングや筋トレの成果か俺も楓も持久力や瞬発力は以前よりアップしている。栗田も良くディフェンスをしているけど、ショートパスやフェイントを繰り返しゴールに近づく俺と楓は抑えられずゴールを許してしまった。


「はぁ はぁ や やっぱり先輩達凄いですね。。。それにコンビネーションというか息もぴったりで・・・」

「え? ほんと? ケンちゃんと息がぴったり!! もう栗田君ったらぁ~」


何だか楓が照れまくってるが、別にそういう意味で言ってるんじゃないと思うぞ。それにバスケ部ではクールキャラじゃないのか?


「だらしないぞ栗田」

「身内を抑えられないで全国で勝てるか!」

「え?先輩達帰ったんじゃ」


と吉見と由良が体育館に戻ってきた。


「俺達も居残りするつもりだったんだけど、何だか栗田が面白そうなことやってるから見てたんだけど、折角だし混ぜてもらおうかと思ってな。

 田辺、小早川、構わないだろ」

「おぅ全然平気だ。俺と楓のコンビネーションに勝てる奴はいない!」

「ケンちゃん♡」

「・・・・イチャつくのは構わんが、男女ペアで試合は出れないからな」

(ちっ このバカップルが)


ん?さりげなく由良の奴バカップルとか言ってなかったか?


「私も参加させてもらっていいかな?」

「え?恵?」

「芳樹が練習するって言ってたから一緒にと思ったけど、何だか面白そうだし。

 ほら、鮎川あんたも参加したいんだろ!」

「あ、先輩。。。私は」


吉見の双子の妹で女子バスの吉見恵と1年の鮎川さんだ。

恵さんは確か由良の彼女だから待ってたのかな?

鮎川さんは・・・栗田だよなやっぱり。まだ告白してないのかな。


「戸締りしに来たんだけど何だか面白そうね。私達も混ぜてくれるかな」

「コーチ!それに小島先生」


ということで何だか人数が揃ってしまったので5対5のチーム形式で練習をすることになった。。。栗田の自己練習じゃなかったのか?


牧村コーチチーム:牧村、田辺、小早川、鮎川、小島先生

三上コーチチーム:三上、由良、吉見恵、吉見優、栗田


何だか変なことになってしまったけど、中々面白い練習にはなった。

三上コーチのチームはディフェンス主体の選手ばかり。

逆に牧村コーチ側はオフェンス主体のチーム。

あっ小島先生は・・・運動不足解消って言ってたので・・・お察し


元々はディフェンスの練習としていたので、ハーフコートを使い、牧村コーチのチームが常に三上コーチのチームを攻める形で進め、俺達がボールを取られたら1本終了ということで練習が行われた。

結果的に女子バスの楓と鮎川さんの連携や男子バスの由良、吉見、栗田の連携練習も出来た。体育館の利用申請は1時間しかしてなかったので20:00には終了となったけど、コーチたちも楽しんでたし、今後正式に練習メニューに入るかも。


「ふふ ケンちゃんとチーム組んで部活でバスケが出来るとは思わなかったよ。それに息がぴったりとか♡」

「確かにな。普段は男女別れて練習してるし、一緒にチーム組むことも無いもんな」


うん。栗田グッジョブだ。"息ぴったり"が楓のツボにはまったらしい。

何だか凄く機嫌がいいぞ。また練習付き合ってやるからな!


でも まぁ確かに俺も楽しかった。

楓も村田さんもスピードとフェイントなら男子に負けてないし、浜野さんもシュートの正確さは男子より上だ。逆に男子側もパワープレイ含め女子には無いものも持っている。上手く練習できれば相乗効果も見込めるかもな。


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<家が同じ方向なので何となく一緒に帰る栗田と鮎川>


「はぁ~田辺先輩や牧村コーチとチーム組めるなんて今日の練習最高だったわ!

 楓先輩はもちろんだけどみんなうまかったなぁ~

 まぁ栗田君は相変わらずだったけどね」

(もう~私のバカ。栗田君と試合出来て楽しかったって言いたいんでしょ!)


「う うるせ!人数増えたとは言え、田辺先輩と小早川先輩だけでも強力なのに牧村コーチまで入ったら勝てるわけないだろ」

「あら、私はカウントしてくれないのかしら?私のオフェンスも止められないんじゃないの?」(駄目よ私!何を煽ってるの)

「ふん 鮎川だけなら余裕だ」

「へ へぇ私は余裕なんだ。中々言うじゃない」(何?私は眼中になかったの?)

「自信たっぷりだな。それなら次の部活の後、俺と勝負するか」

「受けてやろうじゃないの!後で泣いても知らないからね!」

(だから煽っちゃダメだって私。でも2人きりで居残り練習って悪くないかも)

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