第98話 実行委員

9月も終わり気が付けば10月。

毎日部活にバイトに勉強にと同じような日々の繰り返しだけど日が経つのは早い。来月は文化祭、体育祭それに修学旅行とイベントが立て込んでくる。

そして、この10月はそれらの準備と中間試験をクリアしなくてはならない。

部活も練習試合のスケジュールが幾つも入ってるしで中々にハードスケジュールだ。


特にその中でも一番準備が大変なのは文化祭だ。

うちのクラスの出店は執事喫茶。

案を出してくれた早瀬さんと半ば強引に決められた結城が実行委員として全体を取り仕切っているが、学級委員をしている俺と楓も生徒会や各種先生方や委員会との根回しに奔走している。

そんなある日


「田辺、ちょっといいか?」


放課後、俺と楓が文化祭と体育祭の資料のチェックをしていると結城が話しかけてきた。


「ん?何だ?」

「文化祭の件なんだけど、B組はメイドカフェをやるらしいんだ」

「へぇ。やっぱりそういうの多いんだな」

「あぁ。それでな、あっちの実行委員は麻友なんだけどA組と合同で店を出せないかって相談があったんだ」

「合同?どういうことだ?」


普通クラスごとに予算もらって出店するはずだけど。


「B組も出展内容が似てるだろ?料理も出すらしいけど、作るのはやっぱり料理部メンバが対応するらしいんだ。だから調理部門とか備品をある程度統一すれば、お互いのクラス予算のコストカットも出来るし、人員の調整も効率がいいんじゃないかってな」

「なるほど。確かにいいかもしれないな。メイドと執事も入れ替わりで登場させたりするのも面白そうだしな」

「だろ。どうかな?」

「渋川さんの案か? 俺は賛成だけどクラス担任とかに許可は必要かもな」

「そうだね。予算二組分まとめるわけだし先生の許可は必要そう。

 後は、もう備品とか買い始めてるものもあるからまとめて動くなら早くしないとね」


確かに内装や備品は既に早瀬さんや長谷部を中心に動き始めている。

早めに動いた方が良さそうだ。

でもB組か。結城は渋川さんと一緒に文化祭をやりたいだけかもしれないけど、B組には福島も居るからな。村田さんも喜びそうだ。

というか村田さん可愛い系だしメイド服とか似合いそうだからB組の応援に行ってもらうか?楓も執事とメイドを兼任で・・・


「ん?ケンちゃん今何か変な想像とかしてなかった?」

「へ?い いや何にも。早く調整しないとなって」

(村田さんや楓のメイド姿想像したのがバレた?最近の楓は妙に感が鋭いよな)


「じゃあ俺はB組とA組の必要部材の再調査するから、田辺たちは先生方の許可取り頼めるかな。俺より2人の方が先生の受けも良さそうだし」

「そんなことは無いと思うけど、調整の件は了解だ」


ということで、俺と楓は職員室に向かいA組の担任である田中先生とB組の担任の山口先生に渋川さんの案を説明しに行った。

学校内では喧嘩していることが多い田中先生と山口先生だけど、実は近々結婚するという情報を相良さんから聞いていた。

まだ秘密って話だったけど本当意外な組み合わせだ。


「というわけでA組、B組で合同出店出来ないかと思うんですが、よろしいでしょうか?」

「そうだな。実際の店は別々で運営しつつ共通部分を合同でって話だろ。

 クラスごとの活動は維持できるわけだし、俺は問題ないと思うぞ。

 山口先生はどうですか?」

「そうね。私も問題ないと思うわ。

 それにコストカットが上手く出来ればその分の予算で補るところもあるでしょうしね」

「じゃあ 合同出店でよろしいでしょうか?」

「あぁ。ただ出店書類の修正は必要だから、後でA組とB組の実行委員に顔を出すよう伝えといてくれ」

「「はい!」」


うん。何とか上手くいきそうだ。じゃついでに・・・


「あの、先生方、話し変わりますが、

 今度ご結婚されるとかでおめでとうございます」

「「な なんでそれを!!」」


お~ 想像通りかなり驚いてるな。


「この間、相良さんにお聞きしたんです」

「相良さん?相良先輩? ってなんで田辺が?って田辺?

 もしかして田辺って雄一さんの身内か?」

「はい。雄一は俺の親父です。それに楓の親父さんも先生方とは知り合いらしく」

「小早川・・・って大樹先輩の娘さん?」

「そういえば、連休に雄一先輩が一時帰国するとか聞いてたけどその集まりね」

「はい、俺と楓も呼ばれたので。

 先生方のお話も色々と聞かせていただきましたw」

「うっ・・・相良先輩口止めしておいたのに・・・おしゃべりなんだから。

 とりあえず、近いうちに周知するからそれまでは秘密にね」

「「はい」」


悪い話じゃないし秘密にすることもないと思うけどな。

色々と大人の事情でもあるのかね。


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<放課後のバスケ部>


「よ~し 今日の練習はここまで。

 来週末は森下と練習試合だ。前回負けてるし今度こそ勝つぞ!」

「おお!!」

「じゃ1年!後片付けは頼んだぞ」

「「お疲れ様です!!」」


とコーチと福島部長の指示に従い片づけを始める1年生たち。

その中の栗田に俺は声を掛けた。


「栗田。今日も居残りやるか?」

「はい。やるつもりですが、今日は練習相手大丈夫です」

「ん?裕也は今日風邪ひいて休みだろ?大丈夫なのか?」

「はい・・・・その今日はみず・・鮎川さんが」

「・・ほほぅ。鮎川さんねぇ~」

「ち違いますよ。あいつとは中学の時も同じような練習してたし、先輩達は駄目でもあいつくらいには勝ちたいし・・・その」

「はは からかうつもりは無いよ。

 楓が言ってたけど、鮎川さんのオフェンスは中々センスいいって。

 女子バスでもかなり期待されてるみたいだしな。

 彼女相手にゴール守るのは結構大変だと思うぞ」

「はい!望むところです」


中々やる気になってるな。

まぁ好きな子の前でカッコいいところ見せたいってのもありそうだけど、冗談抜きで鮎川さんはレギュラーになれるレベルみたいだから栗田も油断できないはずだ。


ま、それにしてもバスケはおいとくとして、栗田も鮎川も両想いなんだし、どっちかが告白すれば上手くいくんだろうけど。

2人とも素直じゃないし中々難しいもんだな。

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