第95話 親父とおっさん④ -写真-
休憩室で少し休ませてもらい個室に戻ると凛子さんと相良さんのお兄さんの幸治さんに声を掛けられた。
俺と楓、それに相良さんと小島先生の4人だ。
「何があるんだ?凛子?」
「ふふん 私からのサ・プ・ラ・イ・ズ
とりあえず洋兄と健吾君は幸治兄さんについてって、楓ちゃんと美香ちゃんは私と一緒ね」
「いったい何なんだ?」
何やらサプライズらしいので、言われた通り俺たちは幸治さんの後についていった。そういえば、マンションの件まだお礼言ってなかったな。
「あの、俺、川野辺駅前の川野辺ヒルズIIに住んでるんです。
親父から幸治さんの紹介だって聞きました。
すごくいいところで、紹介いただき本当ありがとうございます」
「そうか、健吾君があそこに住んでたんだな。
雄一君から"駅や高校に近くてセキュリティのしっかりした格安物件を紹介しろ"って随分無茶振りされたからな。それも入居ひと月前とか・・・」
「す すみません。何だかお手数をお掛けして」(それ無茶な注文だろ親父)
「いやいや。物件は埋まってた方がいいからね。住んでもらえて嬉しいよ。
でも、本当良いところ紹介出来て良かった」
「さぁ着いた。ここで二人とも着替えてくれ」
「えっ! ここって・・・・」
そう。そこは結婚式場の新郎用の衣裳部屋。
ハンガーには大量のタキシードが掛かっていた。
「この式場では、衣装をレンタルして記念写真撮影もやってるんだよ。
ここで会食するって話しを凛子にしたら、サプライズで写真を撮ろうってな。
楓ちゃんと美香さんは、新婦用の衣裳部屋に向かってるから二人も早く着替えてくれ」
「凛子のやつ・・・・・」
「でも、相良さんと先生はわかりますけど、俺と楓は何で?」
「さっき、この撮影の事を話したら雄一君と大樹君が"健吾と楓も頼む"って言ってきてな。まぁ衣装はいっぱいあるしな」
「そ そうですか」(絶対親父達楽しんでるな・・・)
という事で、俺と相良さんは急遽タキシードに着替えることになった。
写真とはいえ、式場でとか・・・何だか緊張する。
「うん。2人とも中々の男前だ。
じゃ新婦さんが待ってると思うからスタジオに行くぞ」
俺と相良さんのタキシード姿を見て満足したのかスタジオに向かう幸治さん。
俺達も幸治さんの後に続き衣装部屋の奥にある撮影スタジオに移動した。
スタジオにはチャペルを模したセットをはじめ撮影用のセットが幾つもあった。
「中々本格的なんですね」
「ここは普通に撮影スタジオとしても貸し出してるからな。
機材やセットは結構自慢なんだよ」
とスタジオの話を幸治さんから聞いていると、俺たちが来たのとは反対側の部屋の扉が開き、スレンダーラインの純白のウエディングドレスを着た楓と小島先生があらわれた。
「・・・・・ケンちゃんどうかなこれ?」
「洋さん。その似合ってますか?」
何というか色々やばい。
先生ももちろん似合ってるけど、楓のウエディングドレス姿とか可愛すぎる。
隣を見ると相良さんも同じような感想なのか先生を見たまま固まってる。
俺たちが、言葉を失っていると、
「おぉ二人とも綺麗だな!!」
「楓も先生も良く似合ってるわよ」
「新郎の二人も中々男前だな」
「ほら、新郎の2人! ちゃんと新婦さんに"綺麗だよ"とか感想の一言位言って上げなさい!」
「いいなぁ~お姉ちゃん」
スタジオに入ってきた親父達が口々にコメントを言い出した。
うん。紅葉以外はみんなちょっと酔ってるね。
一頻り皆に褒めちぎられた後、それぞれの組で撮影を行った。
凛子さんがカメラマンも手配してくれていたんだ。
「じゃ 撮りますよ!」
まずは相良さんと小島先生の2ショット。
色々な構図で何枚も撮影していた。
緊張した感じの二人が凄く印象的だったけど2人とも幸せそうな笑顔だった。
「じゃ次の方お願いします!」
「か 楓俺達の番だな」
「う うん」
何だか結婚写真を自分が撮ると思うと変な緊張感がある。
セットは選ばせてもらえたので、俺と楓はチャペルのセットの前で腕を組んだ形で写真を撮ってもらった。
「はい 2人とも表情が硬いよ! 笑って笑って」
カメラマンさんはそういうけど・・・そりゃ緊張しますって
でもいつか楓とは本当のウエディングドレスを着せてあげたいな。
そう思いながら俺は楓を見つめると自然と微笑むことが出来た。
「おっ 2人とも良い笑顔だね」
突然の撮影会だったけど、何だかいい思い出が出来た。
2ショットの後は親父達を交えた家族写真まで取ってくれた。
親父たちは普段着なので、何だか違和感のある写真だったけど、まぁこれはこれでいいんだろう。
ちなみに紅葉もスマホで俺達や小島先生を撮影してくれてたけど中々の腕前。
紅葉から写真を送ってもらったけど楓は早速自分のスマホの壁紙に設定していた。
それ、学校で見られたら絶対弄られるって・・・
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ランチ会のはずだったけど、個室に戻るといつの間にやら夕方となり、凛子さんのオーナー特権で夕飯までご馳走になった。
そして夜も更けてきたところで、その日は解散となった。
ちなみに凛子さんからは、
『ここの式場使ってくれるなら費用は大特価にしてあげるからね』
と会場をごり押しされ、手書きされた謎の割引券も貰ってしまった。
まぁ素敵な式場だったし、川野辺からも近いから嬉しいお話だけど、俺も楓もまだ高校生だし、式を挙げるのはまだちょっと早いかな。
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