2章 7年目の秋~冬

第89話 新学期

長かった夏休みも終わり2学期が始まった。

休み明けということで、何処か気怠いところはあるけど、もはや日課となっている楓との早朝ランニングはちゃんと続けている。

ただ、夏に雫姉のペースについていけなかったのが悔しかったので、最近は俺達も走るペースを上げ距離も少し増やしている。負けてられないからな。

あ、雫姉といえば、牧村コーチこと亮兄とは順調みたいだ。

毎日の様にメールのやり取りもしているらしくて、冬は旅行もかねて牧村コーチの方からアメリカに会いに行くらしい。雫姉も楽しみにしているみたいだ。


そして朝練。新部長の福島の元でいつも通りに行われている。

根が真面目な福島も部長になったことで今まで以上に気合が入っている。

まぁ副部長の裕也が良い感じに力が抜けているからバランスは良いのかな?


で、朝練を終えての授業。

相変わらず眠くはなるけど、教師を目指している身として居眠りだけはしないように先生に失礼が無いように心掛けている・・・でも眠い。寝たら負けだぞ俺!


さて、そんな感じで2学期もスタートしたわけだけど、始業式の日に席替えがあった。今までは楓の隣だったんだけど、今回は裕也の後ろの廊下側の席になった。

残念ながら楓や村田さんとは席が離れてしまったけど、まぁ同じ教室内にいるわけだしそれ程気にはしていない。

ちなみに俺の隣は、バレーボール部の川野さん。中学の時はバスケ部で楓とチームメートだったらしい。


「あ あの田辺君 よろしくね」

「あぁこちらこそ」


楓と背の高さは同じくらいだけど川野さんはショートカットでちょっとボーイッシュな感じの美人さんだ。ん?何だか川野さん少し頬が赤いな。

・・・なんて思いながら川野さんと会話してたら楓に睨まれた。

『う 浮気とかじゃないからな・・・』


そんな感じで日は進み、今はとある木曜日の午後。

ホームルームの時間だ。今日の議題は文化祭の出し物について。

進行は学級委員の俺と楓。

担任の田中先生は・・・教室端の机で居眠りをしている(いいのか?)


「え~と 文化祭の出し物だけど、一応他とは被らなかったということで前回決めた執事喫茶で確定になりました。

 で、立案は早瀬さんだったと思うけど、もう一度全体像や必要な準備とか説明を頼めるかな。それを受けて役割分担とか決めたい」

「オッケー!」


と意見出しを行った早瀬さんが俺と楓の方に出てきて説明を始めた。

早瀬さんは文芸部の部長で、見た目はいわゆる真面目な文学少女って感じなんだけど、仲が良い浜野さんが言うには結構"腐"なお方らしい。


「基本的には珈琲とケーキとかの軽食を提供する喫茶店なんだけど、フロアは執事の恰好をした男子と男装した女子が行います。軽食提供はバックヤードを料理部のメンバー中心にお願いしたいと考えてます」

「フロアだけど、何人くらい必要だ?男子全員はいらないだろ。」

あんまり人数が居てもなお客さんが入りにくいだろうしな。


「執事がメインだからね。交代や休憩も考えて男女で10人~15人位かな。

 田辺君と、それから小早川さんも執事お願いね!

 背も高いし男装の小早川さんとか超萌え!」

「え!私もなの?」

「そ!男装した小早川さんと田辺君のカップルとかもうたまらんですよ!!!」


早瀬さん・・・色々妄想してくれてるみたいだけど勘弁してください。

でも、楓の男装はちょっと俺も見てみた気がするなぁ~


「料理担当は・・・美玖ちゃん 5人位いれば大丈夫かな?」

「うん。メニュー次第だけど運ぶのは執事さんだろうし、作り置き出来るものを中心にして当日は盛り付けだけする形にすれば大丈夫かな。それから当日調理する場合は家庭科室を借りることになると思うから重森先生に許可取る必要あるよ」

「了解。念のためそれは俺の方で頼んどくよ。

 言い忘れてたけど、飲食関係は家庭科室近辺の教室に集められるから家庭科室を使うとしても運ぶのはそれ程手間はかからないはずだよ」

「あ、それいいね!」


と浜野さん。割り当てられる教室はくじ引きみたいだから出来るだけ近い部屋が取れるといいな。でも浜野さんの料理はマジに美味しいからちょっと期待だな。


「後は、服とか店内の内装はどうする?」

「あ、裁縫とか私結構得意なんだ。何人か手伝って欲しけど服は私が作るよ」

「早瀬さん。私も結構裁縫とか得意だから手伝うよ!」

「ほんと!小早川さんが手伝ってくれるなら助かるよ」


そういえば楓も縫物とか得意だったよな。

早瀬さんは、確かコスプレとか好きって聞いた気がしたから結構本格的な衣装作れるのかな。期待できるのかも。


「じゃぁ早瀬さんは大体の必要経費見積もってくれるかな」

「了解!」

「あと、店内の内装はどうする?」

「俺やるよ。DIYとか結構得意なんだ」


と長谷部が手を上げてくれた。手先起用だもんな。


「了解。手伝える人は長谷部を手伝ってくれ。

 店内の内装イメージは早瀬さん何かあるか?」

「うん。ラフスケッチは夏休みに書いてみたから後で見せるよ」

「おっ仕事が早いね。よろしく頼むよ!」


ということで大枠の方向性を決めたところで今日は終了。

後は食材や衣装、内装と見積もりだして予算取りして・・・

結構面倒だけど、この辺りは学級委員の俺と楓、それから実行委員の結城の仕事だな。文化祭は11月だから後2か月。意外と余裕ないかもな。

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