第90話 電話
[ブーーーー、ブーーーー]
ん?なんだ携帯の着信?誰だよこんな夜中に。
「はい。田辺ですが・・・」
「健吾か!遅い時間に悪いな。寝てたか?」
っ親父か。
時差があるんだから向こうは日中かもしれないけど、こっちは夜中だぞ。
「まぁこっちは夜中だからな。そりゃ寝てるよ。で、どうかしたのか?」
「いやな来週、そっちに帰るから久しぶりに会えたらと思ってな」
「帰る・・・ん?帰国するの?」
「あぁ少し仕事が落ち着いたんでな。ちょっと用事があるのと来週はお彼岸だろ?久しぶりに親父たちの墓参りにも行きたいしな」
墓参りかぁ。そういえば俺も帰国してからまだ1回も行ってないな。
「墓参りなら俺も行くよ。まだ1回も行ってないし」
「おぅそうだな。それが良い。その時に色々話とかも聞かせてくれ。
何というか楓ちゃんとの話とかな♪」
「お 親父。。。」
そうだった。ホテルの予約を田辺楓とかしちゃう人だったわ・・・
「あっ後、この間 学生時代の親友から久しぶりに電話があってな、そいつとも会う予定なんだ。俺と同い年なんだけど随分若い女性と今度結婚するらしくてな。羨ましいから少しからかってやるつもりだよ」
「へぇ~その人も川野辺の人なの?」
「あぁ相良ってやつでな、そのあたりの地主さんの息子さんだよ。
結婚相手は川野辺高校の先生って言ってたけど小島さんって健吾知らないか?」
「・・・さ相良さんに小島さん?」
「何だ健吾知ってるのか?」
「小島先生はうちのクラスの副担任だよ。それに相良さんはこの間お祭りで先生と一緒にいたんで少し話したよ」
「そうなのか。それはまた凄いめぐりあわせだな。相良はお前が小さい頃に何回か会ってるんだぞ。写真とかもあるんじゃないかな」
写真・・・そうかそれでどこかで見たような気がしたのか。
後で探してみよ。
「うん、そうだな小島さんは連れてくるように相良に話してるから、健吾も楓ちゃん連れて来なさい」
「は?俺や楓は要らないだろ。親父の友達なんだし」
「まぁそう言うな。お前たちが居た方が、小島さんも気が楽だろ?」
「いや、かえって緊張するんじゃ・・・」
「ん。寝てたんならあんまり長電話は悪いな。帰国する日時とか決まったらメール入れるからちゃんと迎え位来いよ」
「って、ちょっと話し聞いてる?」
ふぅ。なんだか相変わらずだなぁ。
にしても帰ってくるのか。まさかここには泊まらないよな。
親父とお袋も雫姉とは違う意味で疲れる人達だからなぁ
・・・先生には、話しておいた方が良さそうだな。
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「小島先生」
「ん?田辺か。どうかしたか?」
6限目の数学の授業の後、俺は先生に声を掛けた。
「授業の事じゃないんですが、ちょっとお時間貰えますか?」
「あぁ大丈夫だ。ここで大丈夫な話か?」
「はい。先生今度のシルバーウィークに彼氏さんの友達に会う予定とか無いですか?」
「え?な なんで田辺がそんなこと知ってるんだ」
「やっぱり会うんですね」
「あ あぁ高校と大学時代の親友ってことで私を紹介したいってことだけど」
「それ、うちの親父です」
「えええええ。なんで!!」
なんでと言われても・・・
明らかに焦ってるな。話しておいてよかった。
まぁ俺の親父ってことは生徒の親だからな。
「この間お祭りでご挨拶したとき、何だかどこかで見たことあるような気がしてたんですけど、俺小さい頃に相良さんに会ったことあったんですよ」
と昔の写真を取り出した。
写真には小学校1年生くらいの俺とまだ若い両親それに相良さんが写っていた。
「ね。相良さんでしょ?」
「・・・なぁ田辺、この写真スマホで撮影してもいいか?洋さんの若い頃の写真とか私も持ってないし!」
「え ええ全然構いませんよ」
と言うとスマホを取り出し、写真を撮影しはじめた。そして相良さんのところだけをトリミングしてニヤニヤしながら保存していた。
(俺とか親父たちは切り取られてたんだけど・・・)
「で、そもそもの用事はなんだったっけ?」
と写真を撮って満足したのか小島先生が聞いてきた。
「え いやまぁ用事って程の事でもなかったんですけど、俺も楓と一緒に相良さんと会うことになりそうなので事前に先生には話しておこうかなと思っただけで」
「・・確かに当日その場に田辺や小早川が居たら結構焦ってしまっていたかもしれないな。
ん。気を使ってもらったんだな。ありがとう」
「あ、いやどうも」
とそれだけ言うと職員室の方に歩いていってしまった。
大丈夫だろうか・・・
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「え!おじさん達帰ってくるの?」
いつもの帰り道。楓に親父達が帰国することを話した。
「あぁ 昨日の夜に電話があってな。お彼岸にあわせて帰国するらしい」
「そうなんだ。おじさん達に会うのも久しぶりだなぁ~
あ、うちにも寄るように言ってよね。お父さん達も喜ぶから」
「あぁもちろんだよ。親父たちも行くつもりだろうしな。
とりあえず、帰国日程とかわかったら連絡するよ」
「うん」
お袋と楓のお母さんである五月おばさんは、女子高校時代からの同級生らしく仲が良いんだよな。
大樹おじさんは親父の1つ上の大学時代の先輩で、親父が五月おばさんを紹介したらしい。
そんなこともあり両家共に仲が良く今でも交流が続いている感じだ。
「でな、帰国したときに学生時代の友達と会うらしいんだけど・・・・
その相手ってのが小島先生の彼氏らしいんだ」
「ふ~ん・・・・ってこの間、お祭りで会った人!!」
「あぁ。親父の同級生らしくて、俺も小さい頃に会ってたらしい。
一応小島先生には伝えておいたけど、親父からは俺と楓にも来て欲しいって」
「え?ケンちゃんはわかるけど、私も?」
「楓は、親父が俺との関係を気にしてたから単純に会いたいだけだと思う」
「そ そうなんだ。何だか緊張するね」
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2020/1/30 内容はほぼ同じですが一部文書配置を変えて加筆しました。
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