第88話 祭りの後に

「居たなら声掛けてよ!」

「ごめんごめん♪ 何だか2人だけのいい雰囲気作ってたからさ」

「もう! でもまさか2人もここにきてるとは思わなかったなよ」


まだ照れて顔が少し赤い楓。

花火の時間も近くなってきたので、お参りを済ませた俺達はお社を後に祭り会場へと参道を歩いていた。


「ここの天神様ね。楓や田辺君にとって大切な場所かもしれないけど、 私と太一にとっても思い出の場所なんだ」

「思い出の場所?」

「うん。その・・・去年ここで太一に告白したの・・・・」

「「おおっ!!」」


楓と声が揃ってしまった。無言だが福島も目線を逸らせてるし(照れてるなこいつ)


「あの頃ね楓も心配してくれてたけど、私も意地張って素直じゃなかったでしょ?」

「う うん。。。ちょっとツンデレが拗れてたよね」

「うっ・・・否定はしないけどさ。でね、この神社の事は楓から聞いてたし最近は恋愛成就とか縁結びとか色々話題にもなってたでしょ。

 だから、私も天神様に少し勇気をもらおうかなって思って・・・」

「何だか綾ちゃん可愛い♪」

「うぅ・・・」


ほぅそんなことが。っていうか村田さん。自分で語りだして恥ずかしがるとか完全に自滅してるんだが・・・

そんなやり取りをしながら歩いていると待ち合わせ場所の鳥居に到着した。


「おぅ福島たちと一緒だったんだ」

「あぁ天神様で偶然な」


裕也達と合流した俺達は、花火が見やすいという公園内にある見晴台に移動した。会場からは少し離れるけど裕也曰く河川敷から打ち上げられる花火を見るには最適らしい。


「確かにここからだと河川敷までよく見えるな」

「だろ!ここって静かだし地元の奴くらいしか来ないから穴場らしいんだよな」


ちょっと自慢気な裕也。確かにこの辺りは裕也が一番詳しいのかもな。


「でも、去年は祭り会場から見たじゃん」


と村田さん。そうなのか?


「誰かさんたちがイチャついてて来るのが遅かったから行かなかったんだよ」

「うっ・・・そ それはゴメン」


また村田さん自爆してる。でもそっか去年告白したとか言ってたもんな。


『ヒュ~~ バン バン』


花火が開始された。

河川敷も近いので夜空に浮かぶ色とりどりの大輪はより大きく見える。

それに音も大迫力だ。


「わぁ綺麗~」

「うん。凄く近く見えるね」

「音も結構大きいんだね」


よくある大花火大会の様な凝った仕掛け花火とかはないけど、シンプルな花火は純粋に綺麗で迫力がある。


「楓」

「ん?ケンちゃん」


俺は楓の肩に手を置きそっと抱き寄せた。

イチャイチャするなとかからかわれそうだけど今は何となくこうしたい気分だ。

そして、花火が幻想的に夜を照らす中、俺はあらためて楓に言った。


「楓。好きだよ。これからもずっと一緒に居よう」

「うん。私もケンちゃんが大好き。こちらこそよろしくね」

「あぁ」




楽しい時間にも終わりはあるものだ。

花火も終わり、祭り終了のアナウンスが流れると屋台やイベント会場の撤収が始まった。会場に居た沢山の人も駅の方向に流れていく。


「じゃぁ名残惜しいけど、そろそろ帰ろうぜ」

「うん そうだね。あっ結構遅いし裕也君の家に泊ってもいいかなぁ♪」

「え?あぁ多分大丈夫だよ。ちゃんと自宅には連絡しろよ」

「もっちろん♪」


「家に帰ったら22時近いな」

「そうだね。結構遅くなっちゃった」

「その・・・去年も良かったけど今年の浴衣姿も綺麗だったぞ」

「も もう帰り際に言う!」


「遅いし楓と紅葉は家まで送ってくからな。高坂君も一緒に行くだろ?」

「は はいもちろんです!」

「ケンちゃんよろしくね」

「優君もありがとう♪」


来年もまたみんなでお祭りに来れたらいいな。


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数日後


祭りも終わり、暑い日はまだまだ続いているけど夏休みも既に後半戦。

相変わらず、部活にバイト、遊びにと繰り返しな日々を過ごしている。

だけど、こういう日常って言うのがある意味幸せなのかもなぁと思ったりもしている・・・なんというか、それくらい今年の夏は楽しく充実していた。

何だか、2学期から普通に授業受けるの辛くなりそ・・・・


「ケンちゃん!暑いし早く行こ!」

「そうだな って引っ張るなよ」

「へへっ♪」


楓が俺の手を引っ張って走り出した。

今日はこれから楓とプールに行く予定だ。

何だかこういう楓を見てると小さい頃を思い出すよな。

男勝りで、何かというと俺に突っかかっきた幼馴染の楓。

でも今は学内でもトップクラスの美少女で俺の恋人だ。

約束を守って俺は川野辺に帰ってきたわけだけど、楓は7年もの間俺を待っていてくれた。

これからもこの可愛い幼馴染を大切にそして一緒に歩んでいけたらと最近よく思う。祭りの夜。天神様にお願いしたように・・・



第1章 -完-


********************

あとがき


ということで冬の寒い時期に夏休みの話でしたが、1章はこの夏休み編にて終了となります。

といっても元々全体構想は決めていたものの章立ては考えてなかったので、2章もすぐに開始予定です。夏休み明けの2学期からスタートし文化祭に修学旅行、クリスマスにお正月と2学期から冬休み位までを2章とする予定となります。

リアルではどこぞの小説のおっさんと同じくシステムエンジニア何て仕事をしているのですが、少し忙しくなってきたので更新ペースは落ちるかもしれません。昨日も帰宅は日付け変わる直前で。。。

ただ、執筆活動はストレス解消・気分転換も兼ねてますので、今後も続ける予定です。よろしければ引き続きお付き合いいただければと思います。

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