第87話 夏祭り②

「じゃ花火前に鳥居のところに集合な」

「「了解」」


祭り会場を皆でしばらく散策した後、一旦解散してそれぞれ祭りを楽しむことになった。


「じゃ行こうか」

「うん」


俺は楓と手を繋ぎもう一度祭り会場に戻った。

公園のメインストリートに並ぶ沢山の屋台。そして奥の広場では、和太鼓演奏等のイベントも終わり、盆踊りの準備が進められている。

俺の居た頃はこの広場の盆踊りくらいだったんだけどな。


「本当大きなお祭りになったな」

「そうだね。でもここまで大きくなったのは3年くらい前だから、まだ最近だよ」

「雑誌に出たって話だったよな」

「うん。パワースポット特集とかで"恋愛成就の天神様"とか紹介されて参拝客が凄く増えたんだよね。それでお祭りも年々大きくなってった感じかな」

「確かに参道も前はもっとボロかったよな」


神社は昔ながらのお社のままだったけど、お社に向かう途中の階段や手すり含めた参道は綺麗な石で作り直されていた。

それに今日は沢山の提灯の灯りが参道に彩を与えてより幻想的な美しさを醸し出していた。

『恋愛成就の天神様かぁ』

ふと横の楓を見る。

浴衣姿の楓はいつもにも増して人の目を引くというか、素直に綺麗だった。

男性グループの横を通りと大抵が楓を目で追っている。

当然俺に対する嫉妬の視線もあったりするわけだけど、楓という恋人の横を歩いてることが少し誇らしく思うことも出来た。

『本当天神様には感謝だな』


「ん?ケンちゃん何か言った?」

「いや。何でもない。

 それより楓、なんか食べるか?そろそろお腹空いてきたよな」

「そうだね。じゃ、お好み焼き食べようかな」


楓のリクエストに応え屋台でお好み焼きと匂いにつられてイカ焼きを買った。

そして、屋台のおっちゃんから近くにイートインスペースがあると教えてもらったので休憩がてら行ってみた。


「やっぱり混んでるよなぁ」

「ケンちゃん。あそこ空いたよ」

「おっ急ぐぞ!」


運が良かったというかちょうど1組のカップルが席を立ったので席に座ることが出来た。


「隣失礼します・・・・って小島先生!!」

「え?田辺君!」


何というか鳥居のところで楽しそうにしていた小島先生と彼氏さんにまたもや遭遇してしまった。何というか・・・気まずい。


「え~と、その小早川さん浴衣似合ってるわねぇ~ 今日は田辺君とデートかな」

「あ、ありがとうございます。はい・・・」


小島先生。明らかに話題ずらしてるな・・・彼氏さんの事は触れていいものか。


「美香の生徒さん達かな?」

「え!はい」


と、まさかの彼氏さんからの話しかけてきてくれた!


「初めまして。美香、君たちからすると小島先生って言った方がいいのかな?

 とお付き合いしている相良です。僕も川野辺高校のOBなんだよ。」

「は はじめまして。先生にはいつも色々とお世話になってます。卒業生の方なんですね。」


ん?何だか変な挨拶だなこれ。

というか先生の彼氏に何を話しすればいいんだよ。


「先生、先生カッコいい彼氏さんですね。馴れ初めは、何処で知り合ったんですか!」


楓が攻める。女子は恋バナ好きだなぁ

でも先生顔真っ赤になっちゃってるし。


「そ そういう話はこ今度また・・・・洋さんそろそろ行きましょか!」

「ん?あぁ じゃ君達もお祭り楽しんでね!」

「はい。ありがとうございます」


先生恥ずかしがって行っちゃったよ。

それにしても、相良さんの顔ってどこかで見たことあるような・・・


「ケンちゃん早く食べよ!」

「お おぅそうだな」


まぁ先生の事はおいといて、俺達は買ってきたお好み焼きとイカ焼きを食べた。

お腹が空いてたこともあるけど、こういうところで食べる食事って何故か美味しいんだよな。

そして、食事を終えた俺達は少し休憩した後、参道を歩き天神様にお参りに来た。

楓は、お祭りの前に俺と再会できたお礼を言いに行きたいって言ってたからな。


祭囃子が聞こえる中、二人で手を繋ぎ参道を歩く。

途中、何組かのカップルとすれ違ったけど、皆幸せそうに見えるしやっぱり御利益があるのかな。


そしてお社に到着。

始業式の日。俺はここで楓と再会し告白した。

まだ数か月前の話しなんだけど随分前の事の様にも思える。

お賽銭を入れ、お祈りをする。


「天神様。ケンちゃんと再会させてくれてありがとうございました。今とても幸せです。出来ればこれからもずっと一緒に居たいです。どうかよろしくお願いします」

「楓・・・」

「一緒にいるの嫌?」


潤んだ瞳で楓が見つめている。


「天神様。俺からもお礼を言います。楓と会わせてくれてありがとうございます。楓の事は幸せにします。俺からも一緒に居られるようにお願いします」

「ケンちゃん・・・」


楓が俺に抱き着いてきた。

なんというか・・・・お互いプロポーズしたようなもんだよなこれ・・・

何だろう今更ながらに猛烈に恥ずかしくなってきたんだけど。

近くに居たカップルにも聞こえてたのか、顔赤くして俺と目を合わせてくれないし・・・って村田さんと福島!!


「お おぅ 相変わらずお前ら仲いいな」

「か 楓も中々大胆だね♪」


やめてあげて!

楓も俺に抱き着きながら自分のセリフが恥ずかしくなったのか耳まで赤くしてプルプル震えてるから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る