第86話 夏祭り①
雫姉という巨大台風が去り、静かで平穏な夏休みが戻ってきた。
相変わらず暑い日は続いているけど、朝ランニングをして午前中は部活で汗を流し、午後はバイトだったりみんなで遊びに行ったりと中々に充実した夏休みを送っていた。
そして、今日は前にみんなで行く約束をしていた川野辺天神のお祭りの日だ。
川野辺駅前 17:00
「健吾!」
「おぅ裕也。ん?浜野さんは?」
「今、家で浴衣に着替えてるよ。去年村田が浴衣着て来てたから着たいんだってさ。そういう小早川は?」
「楓も浴衣着るとかで後から来る。あ、紅葉も一緒に来るみたいだけどいいよな?」
「いいんじゃないか。じゃ例の高坂君もかな?」
「多分な。にしても正式な付き合いは高校入ってからってしてるらしいけど、なんというか中学から中々充実してるよな・・・」
「だよな。俺とかバスケ一筋で女っ気なしだったぜ」
「俺は男子校だ。。。」
「それは酷い・・・」
酷い言うなよ・・・
「田辺君、清水君お待たせ」
「待たせたな」
と村田さんと福島が到着した。
村田さんは去年もらしいけど浴衣姿だ。去年の浴衣は見てないけど青系の落ち着いたデザインの浴衣で中々似合ってる。
そして・・・まさかの福島も浴衣姿だ。
「福島その浴衣どうしたんだ?」
「ん? 綾子の親父さんのなんだけど、綾子を待ってたら"着てけ"ってな。変かな?」
「いや普通に似合ってる。というか村田さんの浴衣と合うな」
「ふふん。私のはお母さんのお下がりだから、多分揃えて買ったんだと思う」
どうも村田さんの両親の浴衣を二人で来ている様だ。いいですなぁ若夫婦。
村田酒店もこれで安泰だ。
「あぁ~いいなぁ福島君浴衣だぁ」
「お待たせ」
「ケン兄お待たせ!」
「ご無沙汰してます先輩方」
浜野さんに楓。少し後ろから紅葉と高坂君が到着した。
何というか浴衣って女子力アップするよね。
普段ももちろん可愛いんだけど更に綺麗に見えちゃうよな。
「どう かな?」
「・・・凄くいい」
「へ?」
「お世辞とかじゃなくて綺麗だ。本当、ちょっと見惚れた」
「け ケンちゃん真面目な顔でそういうのは・・・照れるよ」
やばい・・・思わず抱きしめそうになってしまった。。。
テンション上がり過ぎだぞ。落ち着け俺。
楓もストレートに褒められて照れまくってるし。
ちなみに楓の浴衣は藍色系の落ち着いた色に花柄をあしらっている。
今日の楓は髪をアップにしていてまたこれが似合うし色っぽい。
「美玖も凄く似合ってるよ」
「うん!ありがとう嬉しいよ」
浜野さんは淡い桃色に大輪の花をあしらった浴衣だ。
こちらも浜野さんの雰囲気にマッチして凄く似合う。
紅葉と高坂君も一緒にお祭りに行くのは初めてらしく凄く楽しそうに話をしている。2人は受験生だけど、たまには息抜きもしないとな。
あ、そういえば、紅葉の家庭教師は今でも週1で続けてるんだけど、最近高坂君も来るようになったんだよな。塾の夏季講習で怪しいところなどを主に教えてるんだけど2人ともよく頑張ってる。これなら来年は2人とも俺達の後輩かな。
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「じゃ行こうか」
全員揃ったので、皆で雑談しながら川野辺天神を目指して歩きだした。
普段は人も少ない神社への道も今日ばかりは人であふれていた。
見慣れた川野辺の町も露店や祭りの提灯で彩られ違う町の様に見えるな。
「そういえば、始業式の日は、楓を探してこの道を走ったんだよな」
「ふふ そういえばそうだよね。帰りは腕組んで学校まで戻ったんだよね」
今思うと始業式、それも転入早々何やってんだというところだけど、あの時追いかけたおかげで、今楓は俺の恋人として隣に居てくれてるんだよな。
何だか不思議な感じだな。
などと色々と皆で話をしながら歩くと駅前から20分程度の距離もあっという間だ。
お祭りは神社から少し離れた公園と広場を使って行われており、沢山の露店が出ている他、地域アイドルのミニライブや和太鼓の演奏などのイベントも行われていた。
「確かに大盛況だな。俺が居たころは盆踊りと屋台が少し程度だったけど」
「本当雑誌やテレビの力って凄いよな。花火も凄く綺麗だぜ」
と歩きながら話していると参道の鳥居の下で見慣れた人影を発見。
「ん?あれって小島先生じゃない?」
「だね。隣のおじ様は噂の彼氏さんかな?」
だから地元は生徒も見てるし目立つから~と思ったけど、確か小島先生って川野辺出身なんだよな。地元の祭りにということならまぁ仕方ないか。
小島先生も彼氏さんも浴衣姿。先生も普段俺達には見せないような笑顔で彼氏さんらしき人と話をしている。何だか幸せそうだ。
それにしても彼氏が出来るとか、前にお参りした神社の御利益があったんだろうか。
いつまでも先生を観察しているのも悪いので、露店が並ぶお祭り会場へ移動した。
「あ、恩田先輩!」
「あら、楓ちゃん達も来てたんだね」
こちらは小宮先輩と腕を組んで楽しそうにリンゴ飴を舐めてる恩田先輩。
夜店のリンゴ飴ってなんというか目を引くよね。
そして恩田先輩と小宮先輩の横には前に喫茶店で会った小山内先輩と梶先輩も手を繋ぎ仲良さげに綿あめを食べていた。
4人とも浴衣姿だ。恩田先輩はもちろんだけど梶先輩も美人だよなぁ~
「おっ3位の田辺君か。久しぶりだな」
「先輩、その覚え方は恥ずかしいです・・・」
「ごめんごめん」
「ん?オサゲンって田辺のこと知ってるのか?」
「前に長谷部君のところの喫茶店でね。彼バイトしてるだろ」
「なるほど」
何となく小宮先輩も部活で会う時よりもリラックスして楽しそうだ。
4人の先輩方とはその場で別れたけど、その後も何組かのカップルに遭遇した。
まずは北島先輩と吉川先輩。
何というか普段は厳しい吉川先輩が北島先輩と腕を組んで幸せそうに歩いてた。
2人で居るときはデレるって噂は本当だったらしい・・・
そして、長谷部と湯川ちゃん
この2人も浴衣姿だった。俺達と目が合うと『見つかった!』って顔して逃げようとしたから、ちょっとからかってあげましたw
最後に1年生の集団。
相変わらずというか言い合いをしながらも並んで歩いてる鮎川さんと栗田。
後ろで大室さんが楽しそうに笑ってる。
幼馴染という3人。鮎川さんと栗田は実は両想いみたいだけど・・・どうなんだ?
そして、3人の友達だろうか、気が強そうだけど凄く綺麗な女の子と前に紹介してもらった恩田先輩の弟さんのカップル。それから元気そうな男の子と茶髪の少し派手めな女の子のカップルも一緒にいて、屋台の食べ物を食べたりしながら皆で楽しそうに遊んでいる。
何というか楽しそうでいいんだけど、1年生で彼氏・彼女持ちってどうなんだよ。
・・・俺男子校だったぞ(言うの2度目)
流石に縁結び、恋愛成就の天神様。出会った知り合いがほとんどカップルなんだけど・・・多すぎないか?
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