第81話 田辺雫①
成田空港
俺と楓は国際線の到着ロビーにいる。
「ねぇケンちゃん あれ雫姉さんじゃない?」
「おっ多分そうだな」
そう。俺の従姉でアメリカ留学中だった雫姉が久々に日本に帰国するという事で空港までで向かえに来たんだ。
「健吾!楓ちゃん久しぶり」
「ご無沙汰」
「お姉ちゃん久しぶりです」
田辺 雫。親父のお兄さんの娘さんで、年齢は俺や楓の3つ上。
都内に住んでいたんだけど小さい頃はよくうちに遊びに来ていたので、俺たちもよく遊んでもらった。
特に楓は懐いていてアメリカ留学後もメールのやり取りをしていたみたいだ。
ただ、俺や裕也は・・・よくからかわれてたりもしたのでちょっと苦手だったりもする。
合流後、俺が雫姉の荷物を持ち、3人で横浜駅行のバス乗り場へ向かった。
今日は俺のマンションに泊まるんだそうだ・・・・何故か楓も。
折角帰国したんだから都内の実家に帰ればいいのに俺の知らぬ間に計画が練られていたらしい。雫姉曰く、楓と語り明かしたいとの事。
家主の俺は今日初めて聞いたんだけど・・・
到着したバスに乗り込んだ俺達は、座席に座りお互いの近況報告など色々話をした。
「それにしても随分急だよな。久々に昨日電話が来たと思ったら明日帰国するとか」
「ごめんごめん。連絡したつもりになってたんだよ」
相変わらずというか無計画というか・・・
「にしても私も背は高い方だけど、二人とも背高くなったよね。高校のバスケ部なんだよね?」
「はい。今回は全国大会の3回戦まで行ったんですよ」
「へぇ結構強いんだね。男子は亮君がコーチやってるんでしょ?」
「あぁ。指導も上手いし、色々と勉強させてもらってるよ」
「ほぅ〜 亮君も成長したんだね」
雫姉と牧村コーチは同い年。家も学校もバラバラだけど、俺や楓を通して知り合い。交流はあったようだ。
特に付き合ってたとか言うのは聞いてないけど・・・どうなんだろ。
「夏休みでも部活やってるんだよね。私も見に行っていいかな?」
「大丈夫だと思いますよ。ケンちゃんの身内だし」
「というか雫姉、バスケとか興味あるの?」
「言った事なかったっけ?私中学・高校ってバスケ部だし今も向こうで時々友達とバスケやってるよ」
「そうなの?知らなかったよそんなの」
「まぁ聞かれなかったし。楓ちゃんは知ってたよね?」
「はい。前にアドバイスとかもらいましたし」
というか親戚の俺より楓の方が詳しいって・・・
でも雫姉は背も高いし、確かにバスケ向きなのかもな。
「っか俺より楓の方が雫姉の事詳しいな・・・」
「妬かない妬かない」
と俺達のやり取りを見て急に雫姉がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「仲いいねぇお二人さん。そういえばさぁ・・・二人って付き合ってるんだよね?」
「う・・あぁ付き合ってるよ」
「ほほぉ〜 健吾も楓ちゃんもいろんな意味で大人になったんだねぇ〜」
「うっ・・・・」
「はは 警戒しなくて大丈夫だよ。別にからかいはしないから。当時から2人ともいがみあってる様で傍から見ると何気に好き合ってたしね。思いが成就出来てよかったんじゃない?」
・・・俺達って周りからはそうみられてたのか?何だか照れるんだけど。
「し 雫お姉ちゃんこそどうなんですか!美人さんだしモテるんじゃないですか?」
おっ楓の反撃だ。確かに雫姉は黙ってれば美人だ。
「う~ん モテることはモテるけど今のところ彼氏は居ないよ。何となくこれって感じの人いなくてね」
「そ そうなんですか?」
「そうなんです」
モテることは認めるんだね雫姉。。。でも彼氏いないのは意外だな。
そんな感じで昔話やアメリカでの生活の事など、色々話しているうちに横浜駅に到着。俺達は最寄りの川野辺駅に向かうべく電車に乗った。
「電車も久しぶりね。向こうではほとんど自動車移動だったからなぁ」
「雫姉 向こうで自動車持ってるの?」
「うん。田舎の大学だからね。無いと不便で。川野辺の駅からは近いんだよね健吾の家って」
「まぁ5分もかからないかな」
「うん。それじゃ家に行く前に食材とか買ってこう。泊めてもらうお礼に何か料理を作ってあげるよ」
「え!雫姉って料理とか出来るの?」
「これでも向こうじゃカフェでバイトしてるからね。結構色々作れるよ」
何だか意外だな。雫姉って家庭的なイメージがあまりなく・・・なんて言ったら何されるかわからないし黙っておこう・・・
買い物をして家に着いた後、雫姉は”朝まで楓と話がしたい!!”とか言っていたはずだが疲れたのかソファで寝てしまった。。。。相変わらず自由な人だ。
まぁ時差もあるし普通に眠かったんだろうな。
夕方になったら起こしてあげよう。
ということで雫姉が寝てしまったので、俺と楓は高校生らしく夏休みの宿題を初めてみた。早いうちに終わらせないと遊びに行けないしな。
「ケンちゃん この問題どうやればいいの?」
「これか?これは、この教科書の18ページの公式を使えば簡単に計算できるよ」
教え合いながら出来るので1人で勉強するよりは効率もいいし、何よりお互いの目があるので中々サボれない(これ大事)
ということで宿題は思ったよりもはかどり気が付けば六時半。
3時間近く勉強してしまった。
そして、あんまり寝すぎると夜中眠れなくなってしまうので雫姉も起こした。
何だかだいぶ寝ぼけてたけど、目を覚ました後は、約束通り夕飯を作ってくれた。見た目もきれいなハンバーグ。
何だか悔しいけど美味しかった・・・
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