第82話 田辺雫②
宣言通り雫姉は楓と夜遅くまで話をしていた。
俺は先に寝させて貰ったけど何をそんなに話すことあるんだろとか思うくらいに2人の話題は尽きないようだ。
・・・・・俺の事がネタにされていないかは怖くて聞けない。
ちなみに俺が朝リビングに行くと雫姉と楓がテーブルに突っ伏す形で寝落ちしてた。
「夏だからって風邪ひくぞ」
俺は二人にタオルケットを掛け、日課のランニングに出かけた。
そして、きっちり30分。
いつものランニングコースを走り終え帰宅すると楓が朝食を作ってくれていた。
「ケンちゃんおはよ。一緒に走れなくてごめんね」
「おはよ ちゃんと眠れたか?」
「うん。あ、あと、タオルケットありがと♡」
「う~ん 何だか朝から甘い空気が流れてるねぇ~
それに楓ちゃんが料理作るとか、お姉ちゃん驚きだよ。五月おばさん嘆いてたのにこれも健吾を思う愛の力なのかなぁ~」
「・・・あ あいの力」
ニヤニヤと楓をからかう雫姉と照れまくる楓。
とりあえず矛先が変わる前に俺は浴室に逃げてシャワーを浴びた。
「そういえば、雫姉って今日実家に戻るんだろ?バスケ部どうする?」
「今日も部活ってあるんでしょ?帰る前に見てくよ」
「了解。じゃあ一緒に行くか?楓は一旦自宅に戻るんだろ?」
「うん。私はシャワー浴びて着替えてから行くし」
流石に家に楓の制服は置いてないからな。
「あ、じゃ私も楓ちゃんに着いてっていいかな?紅葉ちゃんや五月おばさんにもご挨拶したいし」
「はい。大丈夫ですよ。お母さんも喜びます!」
そういえば、雫姉って五月おばさんと仲が良かったな。
「じゃ楓の家まで一緒に行こうか。早いけど部活は先に行ってるわ」
「うん 支度に時間掛かりそうだし、少し遅れるかもって綾ちゃんに言っておいて」
という事で、荷物をまとめた雫姉と楓を小早川家まで送り、俺は学校に向かった。着替えて体育館に入ると裕也が一人でシュート練習をしていた。
「お、裕也早いな!」
「おぉ 暑くで早く目が覚めちゃったんでな」
「そういう健吾も早いじゃん」
「ちょっと色々あってな・・・というか雫姉が後で来る」
「ん?雫姉って健吾の従姉の?帰ってきてるのか!?」
「あぁ昨日うちに泊まって、今は楓の家に挨拶に行ってる。コーチが居るから後でバスケ部も見たいって」
「・・・っ相変わらずな感じか?」
「あぁ 触らぬ神にじゃないけど、浜野さんの話題とか出すと面倒かも」
「あぁぁぁ・・・気を付けるわ」
裕也も俺と同じく昔よく雫姉には弄られてたんだよな・・・
軽くストレッチをした後、俺もメニューに従い練習を開始。
しばらくすると他の部員たちも体育館に集まり始めた。
そんな中に楓も居た。ん?1人?
「楓、雫姉は?」
「うん。お母さんと話し込んじゃって先に行って頂戴って」
「何というか五月おばさんと仲いいよな」
歳はずいぶん離れてるはずなんだけど五月おばさんとは波長が合うのか妙に仲がいい。まぁ確かにキャラ的には近い気もするけど。
高校の場所はわかるだろうし、後で来たらコーチの亮兄さんを紹介してそれで満足してくれるかな。と考えていたんだけど、俺が甘かった。。。
体育館の入口の扉が勢いよく開いたかと思うと
「亮君!勝負よ!」
と叫んで、雫姉が牧村コーチを目指しドリブルで迫ってきた。
「え!雫?」
「私からボールを奪えたら亮君の勝ち。私がゴール決めたら私の勝ちよ!」
「え?あっうんわかった」
何だか急な雫姉の登場でかなり混乱しているコーチだったけど、ちゃんと雫姉に向かいゴール前のディフェンスを開始した。何というか以心伝心?
コーチなら余裕だろとか思ってたんだけど、予想外というか冗談抜きに雫姉が上手い。コーチを翻弄するように緩急つけた動きで少しずつゴールに近づき、素早くコーチの脇をすり抜けゴールを決めてしまった。
突然の勝負もだけど、あまりの上手さに男女バスケ部ともに静まってしまった。
後でコーチに聞いたけど、雫姉は都内の強豪校のエースだったらしい。
『何それ凄くないか・・・』
「あーーーっもう。相変わらずというか前よりバスケ上手くなってないか雫!」
「ふふん。まだまだ亮君には負けないよ」
「っかいつ帰ってきたんだよ。全然連絡なかったじゃん」
「昨日だよ。健吾たちの顔見たくて空港から直接ね。今日はこの後実家に帰る予定なんだ」
「そ そうか帰っちゃうのか・・・」
何だかコーチ寂しそうだけどやっぱり付き合ってたのか?
「ちょっと亮!彼女は誰?部外者は立ち入り禁止よ」
と女子バスの三上コーチ。そりゃまぁ注意するよな。
「あ、ごめんなさい。田辺の従姉です。亮君がコーチしてるって聞いてちょっと見に来ただけだからすぐ帰ります」
「亮君?ってあなた・・・誰?」
「え~と 亮君の元彼女って感じかな。ちなみに亮君。彼女が今の恋人さん?」
「こ恋人・・・・」
「ち 違うよ三上は大学の同級生で女子バスのコーチだよ」
「ふ~ん。お似合いだと思うけどなぁ~」
「えっと」
何というか三上コーチ・・・雫姉のペースに巻き込まれてるね。
「あ、もうこんな時間。そろそろ帰るね。健吾、楓 おっ裕也に綾子も居たか。
また今後遊びに来るから、バスケ頑張ってね~!!」
と来た時と同様に何事もなかったかのように出て行ってしまった。
「え~と あの人何?」
三上コーチすみません。
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