第79話 海水浴①

8月のとある土曜日。川野辺駅前 午前8時。

-海水浴当日-


「は はじめまして。高坂 優です。今回はお招き頂きありがとうございます」

「緊張しなくていいよ。紅葉がいつもお世話になってます。姉の楓です」

「俺は田辺 健吾。楓の彼氏って言い方でいいのかな?紅葉から見るとお兄さんみたいな感じだな。よろしく!」

「は はいよろしくお願いします」


川野辺駅前の待ち合わせ場所。

俺と楓は早めに来てみんなを待ってたわけだけど、紅葉が連れてきた"友達"が高坂君だ。背は紅葉より少し高い位で眼鏡をかけた真面目そうな子だ。

変なのが来たら未来の兄として、どうしようかと思ってたけど礼儀正しいしこの子なら多分大丈夫だろう。


「優君。お姉ちゃんたち優しいからそんなに緊張しなくて大丈夫だよ」

「そうそう。年上ばっかりで緊張しちゃうかもしれないけどリラックスして大丈夫だからね」

「はい ありがとうございます」


何というか、楓も紅葉の友達がいるとお姉さんモードだな。

凄くしっかりした優しいお姉さんって感じに見える。


「でも楓先輩も田辺先輩も川野中では有名人ですし、やっぱり緊張しますよ」

「ん?楓はともかく俺も?」

「はい。楓先輩が帰りを待っている王子様っていうことで・・・」

「あ・・・それか」

「なんかゴメン ケンちゃん・・・」


でも、楓が卒業しても話題になってるとかある意味凄いな。

まぁそんな話で親睦を深めていると裕也や福島たちも到着した。


「おぅ健吾 お待たせ!」

「招待ありがとねぇ~」


まずは裕也と浜野さん到着。

浜野さんの家は少し離れているということで昨日は裕也の家に泊まったそうだ。

両家公認とは聞いてたけど本当にね。


「ごめん、待たせちゃった?」

「あっ大丈夫だよ早く来てただけだから」

「良かった。今日はよろしくね♪」


と少し遅れて福島と村田さんも到着。


「ところでさ、さっき駅の反対側で小島先生見ちゃった!

 何だかチョイ悪な感じのおじさまの車に乗るとこだったんだけど、あれって最近出来たって噂の彼氏かな。今からデートかな?」


と村田さん。

小島先生。デートはおめでとうな感じですけど地元だと色々と目撃されちゃいますよ。


「まぁそうかもしれないけど、先生もプライベートだし、そっとしておこうぜ」

「そうだけどさぁ・・・」

「とりあえず、全員揃ったし行こうぜ」


ということで、歩きながら初対面の紅葉や高坂君を皆に紹介し電車で目的地を目指した。

目的地の海までは約1時間半。最寄りの駅からは、ホテルの送迎バスが迎えに来てくれることになっている。


「う~ん 天気が良くて気持ちいいね」

「だな。日中はもっと暑くなりそうだし、泳ぐにはちょうどいいかもな」


ビーチの最寄り駅という葉川海岸駅。

別荘地が多いらしく、駅の規模は小さいけど外観は中々におしゃれな感じの駅舎だ。海が近いからか、潮風も心地いい。


真壁さんからは駅に着いたら連絡が欲しいと言われていたので、先程電話を入れたところだけど、"すぐ迎えに行く"とのこと。至れり尽くせりで何だか本当申し訳ない。

そして、駅前で雑談や土産物屋を見て時間をつぶしていると"MAKABE Resort"のロゴが入ったマイクロバスが駅前のターミナルに入ってきた。


「田辺君 お待ちどうさま!」

俺たちの前に停車したマイクロバスから真壁さんが降りてきた。


「さぁ暑いだろ。バスに早く乗ってくれたまえ」

「「はい!」」


真壁さんに促され俺たちはバスに乗り込んだ。

というかオーナー自らお出迎えですか・・・超VIP待遇だな。


駅前を離れたバスは、海沿いの道路を10分弱走ると”ここ日本?"と考えてしまうほどに美しい白亜の建物や砂浜が見えてきた。


「もしかして、今日案内頂けるのって、あの砂浜ですか?」

「あぁそうだよ。この辺り一帯がMAKABE Resortの所有地だ。夕方また駅まで送っていくから、それまでの時間たっぷり楽しんでってくれ」


何というか人も余りいないし、海岸貸し切りみたいな感じだぞこれ。


そして、バスを降りて案内されたのは、シャワールームと更衣室も完備している海水浴客用という綺麗なコテージ。

10人用という事で大き目の作りで、俺たちが全員入っても十分な広さがあった。

そしてなにより砂浜はコテージの目の前で、建物の中から海を眺めるだけで何だかリゾート気分が味わえる。


「なんだか 想像の上をいく凄さだな・・・・」

「プライベートビーチってみんなこうなのか?」

「多分、この先自費ではこういうところ来れない気がする・・・」

「僕、一生の思い出にします」


ちょっとビビる男性陣。うん裕也多分俺もこの先自費だと来れないと思う。

これに対して女性陣は


「ねぇねぇドリンクバーまでついてるよ!これ飲んじゃっていいのかな?」

「シャワー室や更衣室も素敵!早く着替えて海行こうよ!」

「うん!うん!早く行こう!」

「お姉ちゃんジュースは後でいいでしょ!」


かなりテンション高め。

ん?楓は喉乾いたのか?(ある意味平常運転?)


とりあえず、パラソルや浮き輪等の遊具もコテージの倉庫に入っているという事だったので早く着替え終わった男性陣は設営を行いながら女性陣を待った。

思った以上に広い砂浜・・・・・・時間が10時過ぎとまだ早い事もあるかもしれないけど人は数えるくらいしかいない。

本当貸し切りみたいだな。

じりじりと暑くあってくる気温にじんわりと汗もかいてくる。

"日焼け止めを塗っとかないと明日とかやばいかも"と荷物から日焼け止めを取り出しているとコテージから楓達が出てきた。


「裕也く~ん」


ピンクのかわいらしいながらも結構大胆なカットのビキニを着けこちらに走ってくる浜野さん(結構過激ですね)

その後ろを、少し恥ずかしそうに急ぎ足でついてくる村田さんや楓、紅葉。

村田さんと紅葉はワンピースタイプの水着。楓は一緒に買いに行った黒のビキニだ。

3人ともパレオを腰に付けているけど・・・やっぱり刺激が強いねこれ。

高坂君なんか固まっちゃってるよ。

まぁお姉さま方の水着姿も魅力的で刺激強いだろうけど、紅葉の水着姿も初めて見るんだろうからな。

俺たちも理性を抑えるの大変かも・・・・

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