第63話 特別練習

翌週月曜日。

今週末は倉北学園との試合。

そのため、今日の朝練は制服のまま試合についてのミーティングだ。


「以上が今期の倉北学園の最新情報だ。

 放課後は各自に合わせた形で指導するから各自資料には目を通しておくように」


とコーチ。

大会のトーナメントが決まった段階で、相手高校の情報は集めていたけど、昨日の倉北は大半が資料と異なるメンバだった。

資料に出ていたメンバはベンチに居たので、意図的に隠してたんだろうな。

と皆が教室等へ移動する中、福島が資料を見て難しい顔をしていた。


「福島。どうかしたのか?」


清水と二人で福島に近寄り声を掛けた。


「あぁ。倉北のセンター昨日は気が付かなかったけど、仙台に居た頃のチームメートみたいだ」

「仙台の頃って、福島が居た中学って県大会常連の強豪だよな」

「そう。あいつは1年の頃から、ずば抜けててレギュラーに定着してた。確か県内の強豪校に推薦で入学したって聞いてたんだけど」

「倉北に居るってことは引き抜かれたんだろうな」

「そうだな。とりあえず要注意だ。他の選手も良い動きしてたし、結構厳しい試合になりそうだな」

「あれ~ 太一どうしたの? そろそろ行かないと授業始まっちゃうよ♪」


と女子バスのミーティングを終えた村田さんが、福島の手を取って教室棟の方へ走って行った。


「じゃ じゃあまた放課後な!!」


と引っ張られながら福島。

さっきまで真面目な顔してたのにちょっとニヤケ顔。

あいつは、真面目に考え過ぎるところがあるから、村田さんはちょうどいいストッパーなのかもな。


「ほら、何見てるの。私たちも行かないと遅れちゃうよ!」


と楓と浜野さん。ですよね・・・

俺と清水も楓や浜野さんを追う様に教室等へ向かった。


------------------------

そして昼休み。

いつもの様に・・・・ではない。

今日は、渋川さんと結城が来ていない。

元々居たわけではないけど、毎日来ていたので居ないと『どうしたんだろう?』という気もしてしまう。

そんなことを楓と話をしていると、大崎さんが一人で教室に入ってきて事の顛末を教えてくれた。


何でも勉強会の帰り道に結城が渋川さんに告白をしたということだ。

そこまで聞いて、『今日来てないのはお互い気まずくなって・・・』とか思ってしまったけど、渋川さんからの答えは「散々待たせて告白するのが遅いです!」で2人は晴れて恋人同士になったって話だ。

大崎さんが言うには、渋川さんは小さい頃から結城の事が好きだったらしいけど、結城は昔から女性に人気で、常に周りには女性が居たことから自分の片思いで、自分には恋愛感情は無いと思っていたとの事。

また彼女もプライドが高いので自分からは告白も出来なかったらしい。


結城からの告白は、渋川さん的に凄くうれしかったらしく、大崎さんも昨日は渋川さんに捕まってほぼ1日惚気られたらしい。

"あの渋川さんがねえ"という気もしたけど、それだけ思いがあったんだろうね。


あ、ちなみに俺への思いは、最初に会ったときに言っていた通り純粋に

"お友達になりたい"

ってことで恋愛感情はなかったらしい。何というか表現があれだったけどな。


で、今日は結城に念願の手作り弁当を作って二人でイチャイチャしながらランチを楽しんでるらしい。

大崎さんも誘われたらしいけど、流石に空気を読んで遠慮したみたいだ。

明日以降はテニス部の友人と一緒にお昼を過ごすとの事。

大崎さんは2人の想いを知っていたらしく色々と裏で動いてたみたいだけど、ようやく一安心だ。

今は"今度は自分の彼氏を探す!"と張り切っている。


まぁこれで、お昼は楓と二人の時間に戻れるわけだな。

と横を見ると俺と同じ事を考えていたのか、楓と目が合いお互い照れ笑いをしてしまった。。。


------------------------

放課後


「よし、朝話した通り今日から特別メニューだ。今から選手全員の特徴をカバーするのは難しい。ポジションごとにマンマークする相手を決め練習を行って貰う。朝渡した資料は読んできたな!とりあえずは基礎連から開始するが、順次俺が回って指示を出す」


とコーチからの指示を受け、ポジションごとに集まり筋トレやパス連などを開始した。俺はシューティングガードやスモールフォワードを行うことが多いけど、この部活ではスモールフォワードとしてオフェンス重視で動いている。

由良と佐藤さんも同じポジションだ。

ちなみに部長の小宮さんや清水はシューティングガード。福島はポイントガード、畑さんや栗田はパワーフォワード、長谷部や森野さんはセンターだ。


「スモールフォワード組 集まれ!」


コーチの号令で一旦練習をやめる。


「お前らは、天野をマークしてもらう。

 天野はタイプで言えば田辺に近い。オールラウンド何処でもこなせるが、どちらかというと攻撃型だ。

 ということで今日は田辺を仮想天野ということで1対1の練習を行ってもらう。田辺はゴールを狙い相手は田辺からボールを奪うか3分守り切れ。どちらかが勝ったら次のメンバに交代。全員終わったら攻守交替だ」

「「はい!」」

「あの~、仮想天野をやるのはわかったんですが、俺の交代は・・・・」

「田辺!とりあえず頑張れ!」


ということで1時間近くほぼ休みなしに走り回りましたわ・・・・

みんな容赦ないし。

何だか足腰がシンドイ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る