第62話 勉強会とカップケーキ

土曜日

今日から県大会の予選が始まる。

ただ、うちの高校はシード扱いなので2回戦から参戦だ。

という事で、今日は午前中練習をした後に隣町の倉北学園で行われている1回戦を偵察に来ている。今日の1回戦の勝者が2回戦の相手になるからだ。

ちなみに女子は別の高校で予選が行われているので今日は別行動をとっている。


「きれいな高校ですね」

「そうか。田辺は来るの初めてだよな。この学校は新設校で、まだ創立6年だったはずだから設備も比較的新しいんだ」

「去年は勝てたけど、話ではスポーツ特待生という事で有力な選手を集めてるらしいから油断はできないんだよな」


と裕也と福島。

なるほど6年っていうと俺が転校した後だもんな。そりゃ綺麗なわけだ。

そんな話をしながら体育館に着くと丁度男子の試合が開始されるところだった。


倉北の長身選手がジャンプボールを制し、弾かれたボールは倉北の選手が素早く拾う。そして、そのままドリブルで相手ゴールへ切り込んだ。


「パス回しも中への入りも上手いし早いな」

「あの選手去年居なかったよな?1年ってわけじゃないだろうから編入生か?」

「うわっあの距離からシュート決めたよ」


去年戦った先輩や福島たちの話しだと、ずいぶんレギュラーメンバが入れ替わってるそうだ。それに他校からの引き抜き等で戦力補強をしたとなると結構強敵になるかもしれないな。


結局試合は大差で倉北学園の勝利。2回戦の対戦相手に決まった。


------------------

偵察を終え、皆でバスにて帰宅。

バスの中は、今日の試合を受け、マークやディフェンスなどのちょっとした作戦会議の場になってしまっていた。それだけ今日の倉北の試合は衝撃的だった。

月曜の朝練は、試合に向けてのミーテイングを行うということで今日は駅前で解散となった。

皆が家に向かう中、俺と裕也は勉強会の待ち合わせのため駅前に残った。

そして、駅前で軽く食事を済ませ、渋川さん達との待ち合わせ場所とした時計塔に向かった。


「あ、田辺君!!」


と渋川さん。

清楚なワンピースに身を包んだ渋川さんとラフなTシャツにジーパン姿の結城。

どちらもスタイルが良いので絵になる。


「お待たせ。結構待ったせちゃった?」

「あ、まだ来たばかりですから大丈夫ですよ。後は小早川さんと浜野さんですね」

「そうだけど、2人は家の場所を知ってるから、先に家に行こうか」


という事で、楓には先に家に行くことをラインし家に向かった。

ちなみに楓からは、浜野さんと食材を買ってから行くとの返信があった。

どんなおやつが出るのかちょっと期待だな。


***********

「わぁ綺麗に片付いてるし、結構おうち広いんですね」

「一人暮らしだって聞いてたからもっと散らかってるかと思ったよ」


と渋川さんと結城。ちゃんと掃除はしてますよ俺。

それに人が来るのに散らかしてちゃダメでしょ。


「健吾って結構几帳面だからな。それとも小早川が片づけに来てくれてるのかな♪」

「こ これは俺が自分で掃除してるんだよ!」

「わかった、わかった♪」


裕也の奴、渋川さん達が来てるから、わかってて言ってるな。


「楓たちはまだ時間掛かりそうだから先に初めてようか」


と、渋川さん達にソファに座ってもらい勉強会を開始した。

今日は、授業で先生が言っていた出題範囲の問題や類似問題についてお互い教え合ったり、出題されそうな問題を予測し解いてく形で勉強していく。

とりあえずは、俺が用意した数学と英語の予想問題を皆でチェックし始めた。


「わぁ 凄く綺麗にまとまってる」

「ノートの取り方も性格がでるね」


と渋川さんと結城。驚いてるみたいだけど普通じゃないか?

とりあえず、俺の予測問題を皆で解いてみた。

流石というか渋川さんは何なくクリア。

結城と裕也は・・・

かなり悩んでいたので、親切丁寧に解説してあげた。


「なるほど。健吾はやっぱり教えるの上手いな」

「本当。田辺は塾の講師とか出来るんじゃないか?」


と裕也と結城。煽てても何も出ないぞ。


「あ、そういえば小早川の妹の家庭教師をやってるって言ってなかったか?」

「あぁ週1回だけどな。楓だと甘えちゃうからって頼まれた。来年俺達と同じ高校受けるらしいよ」


などと雑談を交えながら勉強をしていると


「こんにちわ~ 来たよ~」


と浜野さんの声。楓も一緒だ。


「いらっしゃい。先に始めてたよ」

「うん。こっちもおやつ用意してきたよ」

「仕上げだけするからちょっとキッチン借りるね」


と楓と浜野さん。

『おやつは嬉しいけど浜野さんも勉強しに来たんだからね・・』


とりあえずキッチンを浜野さんに任せ、楓も交えて勉強会を再開。

楓が用意していた英語と国語、渋川さんが用意した地理や世界史等など

二人とも流石というかポイントを良く抑えてるしノートの取り方もきれいだ。


と何やら良い香りが・・・・


「何だか美味しそうな匂いがしますねぇ~」

「あぁバニラの香りというか」

「紅茶も良い香りが・・・」


とキッチンの方を見ると浜野さんが


「お待たせ~」


とテーブル一杯にカップケーキやパンケーキ、クッキーを並べていた。

そして家から持ってきたらしいティーカップに紅茶も注いでくれていた。


「きゃ~美味しそう!!」

「すごーーい」


と楓と渋川さんも大量のお菓子を見てテンション上がりまくり。

楓はともかく、渋川さんもこういうのが好きなところは女子高生らしいな。

パンケーキは楓と買ってきたというフルーツやアイスで彩られ、お店に出せるんじゃないかというレベル。カップケーキやクッキーもドライフルーツを練り込んでなんとも美味しそうな出来栄えだ。

下ごしらえはしてきてあったみたいだけど、この短時間でこれだけの数を作るとは浜野さん凄いな。


「中々上手くできたと思うから、早速食べてくださいな!」

「「いただきます!!」」

「美味しい!このパンケーキふわふわ。それにバニラ風味!」

「このクッキーも美味しいですわ」

「カップケーキもいけるぜ!」


大好評だ。冗談抜きで本当美味しい。


「ありがと!やっぱり喜んで食べてもらえると作った方も嬉しいね♪」


と浜野さん。

結構な量のお菓子があったけどほとんど完食だ。

お腹が満足した後は、浜野さんも交え勉強再開。

お礼と言っては何だけど、浜野さんも良い点取れるように教えますよ~♪

余ったクッキーをポリポリ食べながら20:00過ぎまで頑張りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る