第54話 恋バナ

宿舎に戻り、楓達と別れ湯冷めしないうちにと宿舎の温泉に入った。

内風呂にサウナ、露天風呂や壺風呂等など最近の温浴施設並みの充実した設備。

ちょっと温まって出るつもりだったけど、裕也と二人のんびりと温泉を楽しんでしまった。

ちなみに予想はしていたけど、湯船につかっていると裕也から今日の成果についての報告を求められた。

まぁ色々と気を遣わせたみたいだしということで、一部始終を報告したんだけど、裕也からは『砂糖吐きそう』とだけ言われた。どういう意味だ?


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そして部屋に戻り、気が付けば眠れない午前二時。

男たちは恋バナを楽しんでいた。


「なぁ長谷部は湯川ちゃんとその後どうなんだよ?」


と裕也。お、それは俺も気になるな。


「・・・この間の連休に告白して付き合うことになった」

「「「おぉ!!」」」

「やるじゃん長谷部。湯川ってバレーボール部のだろ?去年クラス同じだったけど、結構男子人気高いんだぜ」


と結城。確かに明るくて親しみやすい子だよな。


「そ そうなのか?」

「あぁ。その子を落とすとは長谷部もやるねぇ~」

「うっ。。そういう結城はどうなんだよ。好きな子とか彼女とかいるのか?」


と長谷部。結城は多分・・・


「好きな子は・・・・いるよ」

「誰、誰?」


と裕也。本当こういう話好きだな。


「誰かは言えないけど、綺麗で頭が良くて・・・・ちょっと高飛車で天然なところはあるけど凄く優しい子だ。ただ、なんというか好きな奴がいるみたいでな。

 俺の片思いだよ・・・」

「・・・渋川だろ?」


と裕也。いやストレートにお前・・・


「ぶっ、。。。な なんで?」

「いや、お前嘘とか下手だろ。最近よく健吾のところに来てるけどお前の目線いつも渋川を追ってるぞ。多分クラスの大部分のやつ気が付いてるんじゃないか?」

「ま、まじか 俺そんな無意識に・・・」

「でもまぁ想いはそのうち伝わるんじゃないか?健吾には小早川が居るわけだし、そのうち諦めるだろ」

「そうだと良いんだけどな・・・」


夜の男子部屋。

この後は裕也の濃い目のイチャイチャ話を聞かされ、甘さにやられて1人2人と寝落ちをしながら、いつの間にやら朝を迎えた。


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翌朝

正直寝不足だったけど、朝食前に皆で眠気覚ましにと再び温泉に入りに行った。

朝から温泉とか贅沢すぎだろ本当に。

などと思いながら皆でのんびり湯船につかり身体を温めた。

本当この宿、普通に金を出しても来てみたいレベルの素晴らしい宿だね。

そして、浴衣を着た状態でそのまま大宴会場に向かった。


「おっはよーー」


と楓。今日も元気だ。

楓達も朝風呂に入ったのか浴衣を着ている。

そして美肌の湯が利いたのか、気持ち肌がつるつるな気がする。

それにしても女性の浴衣ってなんでこんなに色気を感じるのだろうか。


夕飯同様に席に座ると、宿の係りの人が、朝食のトレイを運んできてくれた。

焼き鮭に味噌汁、漬物、納豆等の和定食だ。


「シンプルだけど薄味で美味しいね」


そう。健康を考えてなのか塩分控えめの上品な味付け。

特にこの大根やナスの漬物がまた絶品。

思わずお土産屋で買ってしまいそうな味だ。というか"買い"決まりだな。


食事の後はバスの時間まで昨日同様に自由時間。

昨日は外の温泉にも入れたので、楓と宿舎の近辺を散歩することになった。


朝の林道。若葉が付き始めた木々の中を歩く。

何というか清々しい気分だ。

と楓が話しかけてきた。


「ケンちゃん。私さぁ今凄い幸せ」

「ん?どうした急に」

「4月にケンちゃんが帰ってきて、それだけでも嬉しかったのに告白してくれて恋人同士になれてデートとかして。今もこうして二人きりで手を繋いで歩いてる。

 こういうの凄く憧れてたんだ」


と俺を見つめてくる。何これ俺の彼女凄く可愛いんだけど。

俺は周りに人が居ないことを確認すると、そんな楓を抱き寄せキスをした。


「俺もこんな素敵な彼女が出来て、凄く幸せだよ」

「ケンちゃん・・・・・すき」


何分経っただろうか。随分長い間二人で抱き合っていた気がする。


「もう少し歩いたら宿舎に戻ろ」

「うん」


俺達は再び手を繋ぎながら林道を歩き、朝の森を堪能した。

『また楓と旅行したいな』

そんな気持ちにもなれた。


散策を終え宿舎に戻ると、荷物を持った学生がちらほらロビーに降りてきていた。まだ時間もあったので、楓と土産物屋に入り家族への土産物を買った。

俺は今朝食べた漬物とバスケ部メンバ用にお約束の温泉饅頭を買った。

楓も部活のメンバ用の饅頭と家族用にお菓子を買い込んだ。

お土産を選んだり買ったりするのも旅行の楽しみの1つだよね。

土産を買った後は一旦それぞれの部屋に戻り荷物をもってロビーに向かった。


「はい。11時だ。各班メンバは全員居るか?」

「「は~い」」

「ん。その返事を信じよう。じゃバスに乗れ~」


と小島先生。点呼取んなくていいのか先生。というかまだ酔ってる?

先生の声を合図にバスに乗り込み俺達は一路[川野辺町]へ


楽しい旅行だったな。





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