第38話 遊園地デート

5月の連休も今日で最後。

学校が始まれば、全国模試にスポーツ大会、中間試験とイベントが盛りだくさんだ。模試も近いし勉強をすべきところなんだけど、今俺は隣町に新しくできた遊園地"リバーランド"に楓と遊びに来ている。

何故かといえば、顔見知りの肉屋のおじさんが、地元商店街向けに配れた招待券をくれたからだ。


「ケンちゃん 次あれ乗ろうよ!」

「おぅ ってあのコースターか?」

「うん!」


遊園地の開園時間にあわせて到着した俺達は、行列が出来る前に人気のアトラクションを中心に楽しんでいた。

結果的にコースター系が多いんだけど流石にコースター3連続はきついぞ。

楓が楽しそうにしてるので付き合ってるけど・・・・


「ふぅ楽しかった。これでコースターは全制覇だね♪

 あ、もしかしてケンちゃん疲れちゃった?大丈夫?」

「ん? あぁ大丈夫だよ。コースターが続いたから少し酔ったのかもな。楓は平気なのか?」

「うん。私は平気。ごめんね無理させちゃって」

「大丈夫だよ。ちょっと休めば回復する。ちょっとここで待ってて、喉乾いたから何か買ってくるよ」


ふう~ まだ午前中なのに結構疲れてるな俺・・・・

と自販機でお茶を購入し楓のところに戻る。

するとベンチに座る楓の前で大学生っぽい男二人が楓に話しかけていた。

どうもナンパみたいだ。


「ねぇ 君1人?大学生?よかったら俺達とランチでも食べに行かない?」

「結構です。連れが居ますので」

「連れの子も大学生かな?よかったらその子も一緒にどう?」


とナンパ男は楓の肩に触れようと腕を伸ばした。


「連れが何かしましたか?」


ベンチ脇に戻った俺はナンパ男の伸ばしていた腕を掴んだ。


「「え?」」


俺の方が背も高く、自然と睨みつけるような視線も送っていたこともあり、明らかに男達は動揺していた。


「で、何か御用ですか?」


と掴んだ手首を少し強めに握る。


「ひっ お 女の子が一人でいたからちょっと心配になってだな、、、

 まぁ連れがいるなら大丈夫だ。じゃ俺達は帰るから手を離してくれ」

「失礼しました。彼女がナンパされてるのかと思いまして。まぁ今時そんな低俗な事する人いないですよね。それではお気を付けて」


ともう一度睨みつけながら手首を離し男を解放した。

男は手首を摩りながら出口の方へ逃げるように去っていった。


「ケンちゃんありがとう。何だかしつこくて・・・」

「俺こそゴメンな。1人にしたらナンパ野郎が来るとか考えてなかったよ」

「大丈夫気にしないで!むしろカッコよくて惚れ直したちゃったよ!それより次行こうよ!今日は全アトラクション制覇するんだからね!」

「お おぅ・・・元気だな楓」


テンション高めの楓に引きずられる様にその後もアトラクションを楽しんだ。

最近の遊園地には珍しいレトロな感じのお化け屋敷やミラーハウス、それに最近では珍しいレトロゲームを多く収容したゲームセンターなど

何気に小さい子供だけでなく俺達世代や大人も楽しめるような作りだ。


そして、日も暮れてきた夕方。

最後のアトラクションとして選んだのは大観覧車。

園内の小高い丘の上に作られた園内のランドマーク的な施設だ。

横浜やお台場の観覧車に比べると規模は比べられないレベルで小さいけど、丘の上にあるということで街の夜景を見下ろすには十分な高さがある。

そして、ゴンドラは2人席と4人席のタイプがありそれぞれの列で行列が出来ていた。もちろん、俺達は2人用のゴンドラの列に並んだ。


「次の方どうぞ~」


俺達の番だ。思ったより狭いゴンドラは2人並んで座るタイプ。

ちょっと閉塞感はあるけど、楓と2人肩が触れ合うくらいの距離感で、カップル客に人気らしい。


「け 結構狭いね」

「あぁ」


肩が触れ合うということは当然お互いの顔の距離も近く妙に緊張してしまう。

無言のまま上昇するゴンドラ。

そしてゴンドラが徐々に最高地点に近づくと遠くに横浜地区や都内高層ビル群が見えてきた。夕闇の中の都心の明かりも中々に綺麗だ。


「綺麗だね」


と景色を見る楓の肩に手を回し自分の方に引き寄せる。


「ケンちゃん・・・」


俺の腕に抱かれながら目を閉じる楓。

前とは違って少し長めのキス。

ゴンドラが最高地点を通過し降下が始まるまでお互いの唇を重ねていた。


家でのファーストキスの後も何度かキスはしたけど、まだまだ初心な俺達は顔が真っ赤になってしまう。これって慣れるもんなんだろうか。あぁ顔が熱い・・・


ゴンドラが出口に近づいてきた。

俺が先にゴンドラを降りて、楓の手を取りゴンドラから降ろす。


「きゃっ!」

と降りる際につまずいて転びそうになる楓。

俺は慌てて支えようと反対の手を楓の肩に伸ばした。

『ムニュ』

「ん?」(何だか柔らかい?)

「・・・・・」


「大丈夫か?楓」

「あああ ありがとう ケンちゃん。。。。。

 で でも、そろそろ"胸"から手を離してほしいかな。。。」


と真っ赤になりながら楓。

そして俺もこの時に楓の胸を掴んでいることに気が付いた。


「あぁーーーー ち違うんだこれは肩を掴もうとして」

「う うん わかってるから大丈夫だよ。

 そ それにケンちゃんだったら嫌じゃないし・・・」

「え?」


何だか最後の方は小声で聞こえなかったけど、凄いことを言われた気もする。


「そ そろそろ閉園時間だよな。帰ろうか」

「う うん名残惜しいけどね。夏には近くに水族館も出来るみたいだからまた来ようね!」


でも楓の胸。結構大きかったな・・・・・

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