第37話 幼馴染
美味しい食事を頂いた後、鮎川さんから"相談したいことがある"と言われ、俺と楓は、レストランの裏手にある鮎川さんの自宅にお邪魔していた。
お店と同じく洋風建築の一軒家だ。
元々鮎川家はこの辺りの地主さんだったらしくレストランの辺りは畑だったとの事だ。料理人だった鮎川さんのお父さんが、独立して店を出すにあたってお店や庭園を造ったらしい。
「どうぞ」
広い玄関を抜け、落ち着いた雰囲気のリビングに通された。
そして、椅子に座ったところで鮎川さんの話しが始まった。
「相談なんですが・・・・
実は、好きな人がいまして、そのことで・・・・」
恋愛相談か。俺や楓に聞かれても参考になるかどうか・・・
むしろ俺が色々相談したいんだが・・・
と楓を見ると何だか青白い顔をしている。
具合が悪いのかと思い声を掛けようとしたところ急に抱き着かれた。
「え?」
「だ 駄目だからね!いくら可愛い後輩の頼みとかでもケンちゃんは私の恋人なんだから、渡さないんだからね!」
と楓。『な 何どういうこと?』
一瞬俺も鮎川さんも呆気にとられたが、すぐに鮎川さんが答えた。
「あ、ち違います。私が好きな人って田辺先輩じゃないです。確かに先輩はカッコいいですけど、私の好きなのは栗田君です」
「「あっ」」
なるほど。楓は鮎川さんの好きな人が俺かと思ったのか。
確かに今日も元々招待されたの俺だけだったしな。
にしても。。。さっきまで青白い顔してたのに今度は顔真っ赤だぞ楓。。
「ご ごめんなさい。私の盛大な勘違いだったみたいで。。。」
「い いえ。私こそ。田辺先輩は好きというより"カッコよくて憧れます"って感じです・・・でも、本当お二人は仲が良いんですね。
今のも楓先輩が田辺先輩の事が大好きなのが伝わってきます」
(むしろ、こんなポンコツ気味な楓先輩見れて大満足ですし!)
「う うん。 ははは・・・」
何だか楓だけじゃなく俺も巻き込まれて恥ずかしいぞ。
話題を戻さなくては。
「で、栗田君って、男子バスケ部にいる1年の栗田?」
「はい」
「う~ん でも瑞樹って栗田君と仲良かったっけ?栗田君は中3の時とか男子バスケ部のキャプテンだったと思うけど、瑞樹とは言い争いばかりしてたイメージだし、むしろ、小春とか他の女子バスの子の方が栗田君とは仲良くしてたと思うんだけど」
と楓。確かにこの間も言い合いしてたな。
「先輩達って幼馴染なんですよね?」
「ああ、そうだよ。もっとも俺が転校したんで、しばらく会ってなかったけどね」
「幼馴染って家族みたいな距離感で、中々恋愛が成就されないとか言われることが多いと思うんですけど、先輩達は仲良くお付き合いされてるんで相談させていただこうかと思ったんです」
ん?ということは
「もしかして栗田とは幼馴染なの?」
「はい。保育園からずっと一緒でした。家もこの近所です。小さい頃は本当何するのも一緒で仲が凄く良かったんです。
でも、小学校の高学年くらいから周りの目とか気になって疎遠になってきてしまって、部活とかで一緒になっても本当は嬉しいのについ攻撃的になっちゃって・・・」
照れ隠しってやつか。ツンデレ?
「好きなのに素直になれないって感じか。でも何で俺達に?俺達が幼馴染で付き合ってるから?」
「はい。それもありますし楓先輩の事は尊敬しているので相談しても大丈夫かなと・・・
それと・・・この間、あいつが同級生に告白されてるの見ちゃったんです」
「そうか。それでちょっと焦りが出てきたんだ。確かに栗田はバスケのセンスも良いし、周りに気配りとかも出来るからモテそうだね」
「はい。人づてに告白を断ったのは聞いたんですが、あいつの横に知らない女の子が立つのは辛いというか…そんな風に思うようになっちゃって」
状況は分かった。。。。
ただ、真面目な話だし迂闊なこと言えないよな。
「栗田の方は鮎川さんの事をどう思ってるのかな?」
「多分・・・口うるさい女くらいにしか思ってないと思います。中学の頃から何かとあいつの行動に口出ししたりしてましたし・・・」
「わかる」
と楓
「「え?」」
「好きなのに恥ずかしくて、つい真逆の行動とったり強気な発言したりしちゃうんだよね」
そういえば、楓も昔は俺に対して・・・
「確かに俺も小さい頃はよく楓に勝負吹っ掛けられてたなぁ~」
「え!そうなんですか?」
「うん。私もケンちゃんと一緒に居たくて色々とちょっかい出してたんだ。
で、いざ会話すると照れくさくて強気な口きいてw」
「そ。結構へこむこととかも言われたなぁ~」
「も~ ごめんってば・・・」
「はは 気にしてないから平気だよ」
「・・・・・」
「瑞樹。こんな私だったけど、私が困ったり悲しんだりしているといつもケンちゃんは助けてくれたんだ。
だから長い間離れ離れだったけど好きって気持ちを保てたのかもしれない。後ね、離れ離れになった時決めたんだ。次に会うときは素直になろうって」
「栗田の本当の気持ちはわからないけど、少なくとも俺は、楓の事が好きだったし、何言われてもどこか許しちゃうところはあったよ。だからっ栗田もきっと。
でもまぁ、流石に再会したときは雰囲気変わってて驚いたけどな」
「・・・・・ありがとうございます。やっぱり先輩たちに相談して良かったです」
色々とアドバイスをしても結局のところ自分で想いを伝えるしかないんだけど、俺達の話しが少しでも参考になればいいな。
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