第36話 ご招待

今年のゴールデンウィークは飛び石連休状態。

という事で休みの合間に学校もあるので、ずっと遊んでばかりもいられない。

今日は平日。

朝練と部活は休みだったけど普通に学校で授業を受けてきた。


今はその帰り道だ。

いつもの様に楓と手を繋ぎ歩いていると楓が話しかけてきた。


「そういえば、瑞樹からの食事のお誘いだけど今度の木曜大丈夫?」

「ん?大丈夫だよ。何時から?」

「ディナータイムは当分予約でいっぱいらしくて、ランチの遅い時間でテーブルの用意が出来そうだって」

「何だか色々と気を使ってもらって申し訳ないよな。

 あ、お店は確か駅からバスだったよな。駅前の待ち合わせでいいか?」

「うん いいよ。じゃあ瑞樹に連絡しておくね」


と楓。評判の店ってことだし、申し訳ないと思いつつ今から楽しみだ。


------------------------------

そして木曜日。

楓と駅前で待ち合わせしバスに揺られること10分。

幹線道路沿いにある鮎川さんの家のレストランに来た。

個人経営らしいけど大きな駐車場に洋風庭園。そしてレストランは趣のある洋風の建物だったりと、いわゆる高級店の香りを醸し出している。


「楓・・・何だかこういう店って高校生の身分としては緊張するな」

「だ 大丈夫だよ。瑞樹の家だし・・・・」


自腹では多分もう少し大人になってからじゃないと来れないようなお店。

『大丈夫だよね』と時間を確かめ緊張感を持ちながらレストランに入った。


「いらっしゃいませ 何名様でしょうか?

 って楓先輩と田辺先輩じゃないですか!いらっしゃいませ!!」


と最初気が付かなかったけど、お店の制服を着て営業スマイルで微笑みかけてきたのは鮎川さんだった。


「み 瑞樹じゃない びっくりした!招待ありがとね。今日はお店手伝ってるの?」

「はい。休みの日はホールの仕事手伝ってるんです。お小遣いもくれますし♪」

「そうなんだ。ところで瑞樹その制服お店のだよね。すごく可愛いよ」


と鮎川さんの服装を褒める楓

確かにフリルのついたエプロンにシックな落ち着いた色のワンピースがメイド服調で中々可愛い。


「ありがとうございます。実は私もこの制服は結構気に入ってるんです。

 あの〜。田辺先輩の感想はどうでしょうか?」


とちょっと顔を赤くしながら鮎川さんが聞いてきた。


「ああ よく似合ってると思うよ」

「あ ありがとうございます!! じゃぁお席にご案内しますね」


と嬉しそうな顔をして窓際にあるテーブルに案内された。

何だか楓が褒めた時よりテンション高めだったな。


「鮎川さんが来てくれたおかげで少し緊張もほぐれたな」

「・・・・」

「ん?どうした?」

「瑞樹可愛かったね」

「ん ああ」


ちょっと楓の口調キツメだ。

俺が鮎川さんに可愛いって言ったから拗ねてるのか?

やきもちやきだなぁ・・・まぁそこも可愛いけど♡

よ~し それなら。


「でも、楓が一番かわいいよ」


と耳元でささやいてみた。


「にゃにを!!」


と噛み噛みで照れてる。

と前を歩いていた鮎川さんが立ち止まった。


「先輩 こちらです」


案内された席は、窓の外に中庭が見える素敵な席だった。

お店は幹線道路のすぐ脇だけど、きれいに手入れがされた中庭が目隠しとなり静かな森の中にある様な雰囲気を出していた。


「中に入るとまた雰囲気違って落ち着いた感じだよな」

「うん。私も入ったの初めてだけど、これなら予約がいっぱいなのもわかる」


素敵な席に案内されたからか少し楓の機嫌も直ったようだ。

それとも耳元のささやきが利いたのかな?


それにしても広い店内は満員だが、周りの客は主婦や年配の客が多い。

ちょっと自分たちには浮いた感じで緊張するけど、その分料理に期待だね。

そして、少し待っていると


「はじめまして。瑞樹の父です。今回は、うちのちくわを助けていただいたという事で本当にありがとうございました」

「いえ 当然のことをしただけですし、むしろご招待頂き申し訳ないくらいです」

「とんでもない。ちくわは家族同然ですので、本当に感謝しています。

 お口に合うかわかりませんが、今日はうちの料理を楽しんでってください」

「ありがとうございます。楽しみです」


という事で鮎川さんのお父さんにお礼を言われ、美味しい料理でもてなして頂いた。

こういう場に慣れていないのでテーブルマナー的なところは気になったけど、

前菜のカルパッチョから始まり、鱈のワイン蒸し、ローストビーフ、カニのパスタと次から次へと出てくる豪華な料理に大満足。

楓を見るとあまりにも美味しいからか顔が緩みっぱなし。

そして、食べながら思ったけど、普通に頼んだら結構お高いコースだよこれ・・・

大満足で楓と談笑していると普段着に着替えた鮎川さんが近づいてきた。


「どうでした?うちの料理」

「もう最高だったよ!これだけ美味しければ予約いっぱいなのもわかる」

「ああ。どの料理も食べやすい味付けで本当に美味しかった」

「ありがとうございます!満足して頂いた様で良かったです」


と鮎川さん。やっぱり自分の家の料理褒められればうれしいよね。


「あの、私も今日の手伝い終わりなんですけど、よかったらこの後少しお時間頂けないですか?」

「別に構わないけど、どうかしたの?」

「ちょっとご相談したいことがありまして・・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る