第27話 もう少し近づきたい
金曜日。
朝練を終え、教室に入り授業までのひと時。
隣では、同じく朝練から戻った楓と村田さんが雑談している。
俺は意を決して、少し離れた席に座る裕也のところに行った。
「裕也。ちょっといいか?」
「ん?健吾か。なんだ?」
「ここじゃちょっと。廊下出れるか?」
「あぁ大丈夫だけど」
と裕也を連れて廊下に出て人気のない廊下の端に移動した。
「で、こんなところ何の用だ?」
「あのさ、裕也って浜野さんと付き合ってどれくらいだ?」
「ん?どれくらいって、高校に入って知り合ったから1年くらいかな
それが、どうしたんだ?」
「1年か。いや、この間ショッピングモールで会ったとき、裕也のお母さんも気に入ってるとか家族ぐるみの付き合いしてただろ。もっと付き合い長いのかと思ってな」
「う~ん。確かに1年の割には距離感近いかもな。まぁ もしかしたら俺が美玖にベタ惚れだからかもしれないけど」
「裕也が?」
「ああ、少し前の話しになるけど、去年のちょうど今だったかな、俺な練習中に足怪我しちまったんだ。完治できる怪我だったんだけど、それで少し自暴自棄になってたところで村田に美玖を紹介されたんだよ。
美玖は元々川北のバスケ部で主将やってた選手でな、その関係で村田や小早川とも知り合いだったみたいなんだけど交通事故で足を怪我しちまって一時期は車椅子の生活だったんだ。
それが、リハビリに苦労しながら何とか普通に生活したり、調子よければ走ったり出来るくらいまでになったんだと。
それでその経験が活かせるんじゃないかって村田が、美玖に俺のリハビリを頼んでくれたんだ」
「浜野さんにそんなことがあったんだ」
「ああ。でな正直、美玖の話しを聞いて自分が恥ずかしくなったんだ。俺の怪我は頑張れば完治してまたバスケが出来るじゃないかって。
美玖も当時はバスケを離れて普通に料理研究会とか女の子っぽい同好会に入ってたんだけど、俺のためにバスケ部のマネージャーになってくれて親身に協力してくれて・・・・
そのうち、何ていうかすっかり惚れちゃってな。
怪我が完治した復帰戦の後、告白して付き合う様になったんだ」
「なるほどな~ それだけ尽くされたら惚れるわな」
「だろ~ お袋もそのあたりの事知ってるから余計に美玖を気に入ってるんだ。
でもな、もう少し話があって、これは後から村田に聞いたんだけど、実は俺達が中学の頃、川北との練習試合で美玖は俺に一目惚れしたらしいんだ。
自分で言うのも何だけど、当時主将やってたし結構モテたんだよな俺。
で、高校が一緒になって、声掛けたくてどうしようかと思ってバスケ部の練習とか見に来てる中で俺が怪我してな。
自分の経験が活かせるかもって病院に見舞いに来たってわけ」
「はぁ~ 浜野さんは初めから裕也の事が好きだったんだ」
「そういうこと。まぁ怪我とかリハビリとか関係なく、美玖みたいに可愛い子なら普通に告白されたら付き合ってたけどなw」
「っか結局最後はノロケかよ」
「まぁそういうなって。お前らの方が最近は甘々だろ
で、話ってこれで終わりか?」
「あ、いや本題は別でな。
その、なんというか浜野さんとそれだけ親密なら今更な質問なのかもだけど、
キスとかその先とか普通にもう済ませたりしてるのか?」
「な、なんだよ、あらたまって・・
まぁ、そのなんだ、まぁ俺も健全な男子高校生だしそれなりにな」
「だよなぁ~」
「どうしたんだ?」
「紅葉ちゃんって覚えてるか?」
「ん?小早川の妹?」
「その紅葉ちゃんだ。昨日勉強教えに行ってたんだけど、休憩中に『もうお姉ちゃんたちキス位した』とか聞かれてな。
何気に俺、彼女とか初めてだし、頃合いというかタイミングというかよくわからなくて」
「なるほど。それでこの質問か。でもまぁ、焦ることないんじゃないか?
こういうのって本人同士のタイミングだろ」
「確かにそうなんだけど、前に村田さんや浜野さんが彼氏とのデートとかエッチな話とかしてるの羨ましかったとか言ってたんだよな。楓なら彼氏位直ぐできただろうに俺が待たせたせいで・・・・」
「そうか。。って美玖や村田はエッチな話しって何を話してるんだ?
俺や福島の事色々話してるのか?それのが気になるぞ」
「まぁ、それはそれとして。俺が楓の事リードしなくちゃなと思ったんだよ。
まぁ焦るつもりはないけどな」
「わかった。何かあれば遠慮なく言ってくれ。小早川も健吾も大切な友達だからな」
「ありがとな」
「あぁ。だから村田や美玖が俺と福島の何を話していたか機会があったら探っておいてくれ。。。」
「あ、あぁ。。。」
と始業のベルが鳴ったので、慌てて教室に戻った。
再会してまだ2週間。
慌てるつもりはないけど楓との距離をもう少し縮めたいな。
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