第26話 紅葉の家庭教師②

「とりあえず、採点しちゃうから紅葉はお菓子でも食べとけ」

「うん。今度こそ休憩するよ」


と、紅葉にはお土産に買ってきたお菓子とお茶を与え採点に入る。

1時間では時間が足りないかと思ったけど、結構回答は埋まっている。

それに正解率も結構なものだ。


「えーと。英語、数学共に8割正解だな。

 間違えてたか所もちょっとしたミスだったし中々優秀だぞ。ただ、受験はちょっとしたミスでもアウトだからそういうミス無くせるよう勉強しようか」

「うん。よろしくお願いします!」

「じゃ、今日の授業は間違えたところの説明からだな」


点数が良かったせいか何だかやる気になってくれたみたいだ。

塾の講習とかには行ってるみたいだし大丈夫とは思うけど、出来れば希望する高校に合格させてあげたいし俺も教えるの頑張らなきゃな。


「ねぇねぇケン兄先生ぇ~」


と何故か少し甘えた声の紅葉


「ん?なんだ」

「今度6月に全国模試があるんだけど、成績良かったら何かご褒美くれない?」

「ご褒美?」

「うん。目標があると頑張れるし!」


確かにそれはあるかも。


「どんなご褒美が良いんだ?」

「う~ん。まだ決まってないけど、後で考えておく」

「まぁあまり無茶なお願いとかじゃなければいいよ。成績の基準はどうする?」

「じゃぁ、志望校判定がA判定に入れたらでどうかな。前回はBだったんだよ」

「そうだな。ちょうどいいくらいか。それでいいぞ」

「やった!ケン兄ありがと!」


とその場の雰囲気で約束もしてしまったが、この日はミスした問題の解説と類似問題をいくつか行い勉強会終了となった。

人に勉強を教えるとか物事を伝えるのって凄く疲れるね。


「ケンちゃん 先生役お疲れ様。ご飯の準備できたってよ」

「おぅ今行く!」

「わぁ私もお腹空いた~」


休憩の後、食事の手伝いに行っていた楓がやってきた。

最近は五月おばさんについて料理を習っているらしい。

それにしても、紅葉じゃないけどお腹空いた。今日の献立はなんだろ。

と紅葉の部屋を出てリビングへ向かう。


「どう?紅葉はちゃんと勉強した?」


と五月おばさん


「ええ。今日は簡単にテストやったんですが結構成績良かったですよ」

「そう。それならいいけど、出来れば好きな高校行かせてあげたいしちゃんと勉強して欲しいのよね。」

「元々成績も良いみたいですし、あまり教えることないかもしれませんが僕も出来るだけの事はしますよ」

「よろしくね。さて、夕飯にしましょ。今日は肉じゃがよ。」


と五月おばさんは楓に視線を向ける。


「最近ね。料理が全然できなかった楓が、作り方とか色々聞いてくるの。

 以前は『少しは料理とかも出来るように』って言っても全然やる気を出さなかったのに作ってあげたい人が出来ると変わるもんねぇ~

 今日も仕込みは楓がやったのよ」

「お お母さん!」

「今は健吾君にお弁当作ってもらってるみたいだけど、今度は楓がお弁当作ってくれると思うから楽しみに待っててあげてね」


そうか。楓のというか彼女の手作り弁当か~

楽しみすぎるなこれ!


「楓!俺のためにありがとな。楽しみに待ってるからな」

「お お母さん ハードル上げすぎだよ・・・」


「もう。お姉ちゃんたちの惚気はいいから、早く食べようよ。お腹空いた!」


と紅葉の抗議もあり、ようやく夕飯開始。


肉じゃが・・・何だか凄く久々に食べた気がする。

うちの母さんこういうのあんまり作ってくれなかったからな。

料理が下手なわけではないけど豪快というか何というか・・・

それに比べて五月おばさんって本当料理上手だ。


「どう?お味は」

「はい。ちょうどいい味付けで凄く美味しいです」

「そう 良かったわね楓」

「う うん」


と照れて頬を染める楓。


「やばい。お姉ちゃん可愛すぎるよw ケン兄が惚れ直しちゃうよ」


とスマホを取り出し姉を撮影する紅葉。あっその写真後で欲しい。


「も 紅葉はからかわないの!それから写真!!」


とじゃれ合う姉妹。

というか最近、楓が可愛くて仕方ないぞ俺。どうしたもんか。


「ごちそうさまでした。美味しかったです」

「はい。肉じゃがたくさん作ったから、後でタッパーに詰めてあげるわね」

「ありがとうございます。肉じゃがとかって2日目も味が染みていいですよね」


食事の後は、リビングで雑談。

1人暮らしが寂しいわけではないけど、こういう時間はやっぱり楽しい。


「そういえばケンちゃん。雫姉さんとは会ったりしなかったの?」

「姉さんは大学の寮に居たし同じアメリカでも結構住んでるところが離れてたから、会っても年1,2回くらいだったかな」

「そうかぁ~。雫姉さんとはメールとか時々やり取りしてたんだけどケンちゃんの情報あんまり知らないみたいだったから。

 今回、帰国することも知らなかったみたいだし」

「そだね。アメリカに引っ越してすぐのころは色々と観光案内してもらったりもしてたけど、最近はご沙汰だったから」

「う~ん。雫姉さんにも会いたいなぁ~」


雫姉さんは、俺の従姉で大学2年生。アメリカの大学に留学中だ。

俺や楓も年齢が近かったので小さい頃はよく遊んでもらっていた。

楓は特に雫姉さんに懐いてたけど、今でもメールとかやり取りしてるってのは知らなかったな。


「俺も今度久々に連絡してみるよ。去年はバイトしてたみたいだけど、夏場は大学も休みだろうしね」

「うん またみんなでどこか遊びに行きたいね」


時刻はいつの間にやら22:00。おじさんに挨拶してからと思っていたけど、明日も朝練があるしということで、この日は帰宅することにした。


「じゃ また明日迎えに来るからな」

「うん。また明日!」

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