第21話 お礼がしたい
練習後、体育館の掃除を終え更衣室へ。
「ダンク決められたな。1年の反応も予想以上に良かったし作戦成功かな」
「あぁ何とかな、ただ、やっぱり先輩たちのディフェンスきついわ」
「だな。前の大会は先輩たちのお陰で失点も少なかったからな。次の大会で先輩たちも引退だ。穴埋め何とかしないとな」
そうなんだよな。この1週間見てて思ったけど今の2年はどちらかというとオフェンス向きの選手が多い。
新入生に都合よくディフェンス上手いやつとかいればいいんだけど。
「おつかれ~」
雑談しながら着替えをし、俺と福島と裕也の3人は相方と待ち合わせをしているので先に更衣室を出て中央棟へ向かった。
と、下駄箱のところで村田さんや浜野さん、楓だけでなく女子バスのメンバ数人が待っていた。
「田辺君 ちょっといいかな? ほら、瑞樹」
と村田さん。俺に用事があるのか?
「ん?俺 何?」
「あの~ 今朝はありがとうございました。」
「・・・あ!今朝の。ここの生徒だったんだ」
幼い感じだったから中学生くらいかと思ってたけど高校生だったんだ。
確かに制服着て、きちんとしてると高校生に見える。
朝は、何だか子供っぽい服装だったしな。。。
「はい。1年の鮎川 瑞樹って言います。女子バス入部予定です。よろしくお願いします」
「あぁよろしく。ただ、今朝の件はそんな気にすることじゃないよ」
「でも、あの後家に帰って両親に話をしたら是非お礼をしたいからお店にお呼びしなさいって。あ、うちレストランやってるんです」
「う~ん そんなご両親にまでお礼言われるほどでも・・・」
「でも。。。。」
とちょっと鮎川さんも困った様子。でもなぁ~
「い いいんじゃない。瑞樹も困っちゃうだろうし。瑞樹の家のレストランって、結構有名なお店で予約とか取るのも大変な人気店なんだよ」
と楓(何かちょっと笑顔が引きつってる気がするけど。。。)
「鮎川さんって村田さんや楓の知り合いなの?」
「うん。中学のバスケ部の後輩。いい選手だよ」
「そか。じゃあさ、鮎川さん。楓と一緒になら招待受けるよ」
「え?楓先輩?」
「え?私も?」
「あぁ、今朝って楓を迎えに行く途中だったんだよ。楓の家に寄らなければ、学校へは別の道使うし、あの道も通らなかったんだよ。だから楓も間接的に功労者ということで」
「えっあの、もしかして田辺先輩って楓先輩とお付き合いされてるんですか?」
「あぁ付き合ってるよ」
と鮎川さんは一瞬顔を緊張させ、楓の方を向き
「楓先輩! 彼氏さんに馴れ馴れしくして申し訳ありません!」
と謝罪する鮎川さん。え~と、そんなに体育系な繋がりなの??
「ちょ ちょっと瑞樹 気にしてないから大丈夫だって」
「でも、楓先輩の彼氏さんということは、以前お話を聞いた"ケンちゃん"さんなんですよね?
モテモテだった楓先輩が全ての告白を断って何年も待ち焦がれた方です。
私なんかが気やすく声を掛けるのは・・・」
「いや、俺ただの高校生だし、別にそこまで気を使わなくても」
「そ そうだよ瑞樹。ケンちゃんは瑞樹にとっても男子バスケ部の先輩なんだから普通に話しかけても良いんだよ。あ、もちろん小春もだよ」
この間、長谷部も言ってたけど"楓の王子様"って話はこんな後輩女子にまで影響を
与えてるのか・・・いろんな意味で凄いな楓。
しかし、別にモテたいとかは思わんけど、変に距離とられるのもなぁ~
「楓先輩。お心遣いありがとうございます。
では、お店は田辺先輩と楓先輩のお二人で来て頂くということで両親に伝えます。部活の無い、火曜か木曜の放課後で大丈夫でしょうか?」
「あ あぁ俺は大丈夫だ。楓は?」
「えっ うん私も大丈夫」
「わかりました。じゃぁ親と相談して日時決まったら楓先輩にメールしますね」
「うん。わかった」
「あ あと。田辺先輩。 さ さっきのダンクカッコよかったです!
じゃあ楓先輩 綾子先輩 お先に失礼します!」
と少し顔を赤くして鮎川さんは走って帰ってしまった。
大室さんも慌てて後を追って帰って行った。
「何だったんだ。。。でも面白い子だね」
「う うん」(やっぱり瑞樹 ケンちゃんの事・・・)
「何だか青春してるねぇ~ うん。太一私たちも帰ろ!」
「あ あぁ じゃな田辺、小早川」
と村田さん。楽しんでるだろ。。。
「にしても、"楓の王子様"話しって影響凄いんだな。俺も面白半分に男子連中に"あいつは凄い奴だった"とか話しを盛ったりしてたけど、もはや伝説の男みたいな感じだよな」
「ぅおい! それが原因じゃないか もしかして!」
「やべ。おい美玖帰るぞ!」
「ちょ ちょっと待ってよ裕也~」
と逃げるように帰る裕也たち。
「はぁ~何だかなぁ~」
「何かごめんね。私のせいだよね・・・」
「いや 楓は悪くないよ。裕也みたいなのが色々話しを盛った結果だろ。
それよりも・・・・・
あらためてだけど俺のこと待っててくれてありがとな」
「えっ うん。約束だったからね。信じてた。
あと・・・私にとってケンちゃんが王子様って言うのは本当だから」
最後の方は声が小さくて聞き取れなかったけど、顔を赤くしながら俯く楓は今日も可愛くみえた。
「さ、俺達も帰ろ。お腹空いた」
「うん!」
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