第18話 サッカー対決
朝練で疲れた体に鞭打つように今日の1限と2限はC組と合同で体育だ。
正直怠い。多分3限と4限は確実に寝るな。
そんな感じで、裕也とダラダラと柔軟体操をしているとC組の方からリーゼント男が一人俺の方歩いて来た。
「おい田辺! 今日の体育のサッカー俺と勝負しろ!」
「ん?誰?」
何だか朝から変な奴に勝負を挑まれた。
「俺だ! 梶 竜太郎様だ!」
「梶・・・・ あぁ楓に告白してフラれた梶か!」
「おい その覚え方やめろ。本当やめろ。マジやめろ。」
大事なことだから3回言ったのかな?
「と、それよりお前"田辺健吾"だろ?川野小学校に居た」
「え?あぁ川野小に居た田辺だけど」
「やっぱりそうか。この間見たときにどこかで見た気がしてたんだ。
それに清水裕也と一緒にいるなら間違いない。名前聞いてもしやと思ったんだが、お前俺の事覚えてないのか?」
「・・・・知らん」
「即答かよ! 俺だ川北小サッカー部キャプテンだった梶だ!」
「でも、知らん」
「本気で覚えてないのか! お前の永遠のライバル梶様だ!」
「だから、知らんって。何なんだよその面倒くさいの」
「・・・・・健吾 覚えてないか? 小3の時の大会で戦った川北小」
と裕也。
「確かに川北とは試合した気がするけど・・・・・・・・
あ、あれか 俺らにボロ負けしたチーム」
「そうだ。ただ、あのチームのキャプテンは中々上手かっただろ?あれが梶だよ」
「あああ!!」
「ふっ 思い出したか永遠のライバルよ!」
「いや 今一つ。。。」
「んだよ 俺ってそんなに印象薄いのかよ~」
結構落ち込んでる。。。流石に悪い気がしてきた。。。
「悪い。俺3年の終わりで転校しちゃったから当時の記憶薄いんだ。裕也はその後も大会とかで顔合わせてたんだろ」
「ああ。中学からはバスケ始めたから知らないけど小学校の間は何度か試合とかはしてたな。まぁ健吾は忘れてても仕方ないさ」
ナイスフォローだ裕也!
「だよな。で、梶は何で俺と勝負? 楓のことならこの間話した通りだぜ」
「小早川の事はもういいんだ」
「ん?そうなのか?」
「ああ。お前ほどの男なら俺も安心して小早川を任せられる」
「そうか。それはありがとう(何だか上から目線でイラつくが。。。)
じゃあ何で勝負するんだ?」
「あの試合。俺の中では屈辱だった。特にハットトリック決めた田辺!お前は許せんのだ。俺はあの試合の後から打倒川野小、打倒田辺を誓ったんだ。
川野小とは、何度か対戦し勝つことも出来た。ただ、田辺!お前には負けたままだ。この気持ちを抑えるためにお前を今日ここで倒す!」
と俺をビシっと指差しポーズを決める梶。
「なぁ裕也。梶ってこんな痛いというか面倒なやつなのか?」
「う~ん 正直1年の時から梶が居るのは知ってたけど面倒そうだから絡まなかったんだよな」
「面倒とか言うな!地味に傷つく!」
意外とノリがいいなこいつ。
「はい はい。わかったけど勝負って何するんだよ」
「簡単だ。体育の授業の中でA組対C組の試合がある。前後半各20分のミニゲームだが、それで勝負だ!」
「あ、1対1じゃないのね」
「サッカーはチームプレイだ。C組には同じ川北にいた古川や岡部もいる。お前たちには負けん!」
なるほど。取り巻きのあいつらも川北繋がりだったんだな。
「わかった。その勝負受けてやろう。こっちには裕也も居るからな!」
ということで、よくわからないけど、久々にサッカーを頑張ってみることになった。ちなみに後で裕也に聞いたが、この学校では5月にスポーツ大会があるらしく体育の授業でもサッカーやバスケ、バレーボールなどを4月から実施しているらしい。
とりあえず、一応は学級委員になったので、裕也に助けてもらいながらクラス内で出場するメンバやポジションを調整した。
1クラスの男子はだいたい20名前後なので、一部は途中交代予定だ。
サッカー経験者は意外と少なくブランクのある俺と裕也、後は現役サッカー部が2人の計4人だけだった。救いはサッカー部の2人がキーパーとDFだったって事かな。俺も裕也もFWだったので、守りが出来る人が欲しかったんだよね。
そして、各組に分かれでパスや連携の練習が行った後、2限目から試合となった。
「逃げずにちゃんと来たようだな田辺!」
「まぁ授業だしな」
って毎回この手のやり取りが発生するのかこいつ。。。
『ん?後ろで古川と岡部が苦笑いしてる』
こいつらも毎回付き合わされてるのかもな。。。
そして、C組のボールで試合開始。
口だけの奴かと思ってたけど、意外にも梶のボールコントロールは素晴らしく、MFポジションでFWの古川をはじめとしたC組選手に上手く指示をだしA組のゴールを脅かしていた。
だが、サッカー部コンビの守りも厚く中々得点には至らない状況だ。
俺と裕也も少し下がり気味にポジションを取り梶を牽制。
お互い決め手に欠ける状況で前半が終了となった。
「あいつら、結構うまいな」
と裕也
「あぁ 梶もだけど古川も中々いい動きしてるぞ。あの二人ならサッカー部でも十分通用するだろ」
とサッカー部でDFの吉野。
確かにキーパーの岡部も裕也のシュート止めてたしあの3人は中々のレベルだ。
「清水と田辺にもう少しボール回せればいいんだけど、梶が曲者だな」
とMFやってるテニス部の結城。こいつ意外と上手い。
「とりあえず、俺と裕也も少し下がり目にポジション取って、相手の中盤を抑えよう。あっちの中盤は梶を抑えれば何とかなる」
ということでざっくり方針を決めて後半戦に臨んだ
後半はA組のボールから。
裕也が少しポジションを下げ結城とボールを回す。
その間に俺は梶の近くへ動く。梶を抑えるのが俺の仕事だ。
「ふ。俺のマークにはお前が付くのか」
「ああ 悔しいがお前を抑えられる奴は他に居ないんでな」
「そ そうかぁ」
何だか褒められて嬉しそうな梶。意外とチョロいなこいつ・・・
まぁ梶を抑えたとしても点を入れなければ勝てないので、後半最後の5分で勝負をかけることにしていた。だからそれまでは失点しないように抑える必要がある。
前半同様にC組の攻撃が目立ったが、梶を俺がマークし、中盤に裕也が下がったことで攻めては減っていた。
そして、何とか攻撃をしのぎラスト5分。
敵陣に向けたゴールキックに合わせ、サッカー部の2名以外の全員が相手コートに向けて攻め込んだ。
梶を振り切りボールをゲットした俺はそのままドリブルでペナルティエリア内に入りゴール隅にシュート。
が、先週は俺の足で簡単に転んでくれた岡部君が華麗なセーブでボールを弾いた。そして、弾かれたボールを裕也が拾い再度シュートをするが、これもパンチングで凌いだ。
が、セーブもここまで。
弾かれたボールを本日はDFを行っていた長谷部がヘディングシュート。
長身の長谷部のヘッドはキーパーの裏に落ちた。
流石にこれは防げず、ついにA組のシュートが決まった。
そして、そのままタイムアップ。
「ちっくしょーーー まだ俺は田辺に勝てないのか!!」
と梶。何だか本当に悔しそう。
「いや。俺とお前の勝負というならお前の勝ちだろ。中盤はお前がコントロールしてたし、俺も裕也もはほとんどシュートを打てなかった」
「ふ。潔く負けを認めるとは流石は俺のライバル。そうだな。今日は引き分けとしよう。次は5月のスポーツ大会で勝負だ!」
と立ち直りも早いのか、古川たちと教室に戻っていった。
何だか色々と疲れる男だ。
スポーツ大会。
多分と裕也はバスケ選択するけどな・・・バスケ部だし。
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