第17話 今日は朝から・・・
昨日、約束通り楓が昼ご飯を食べに来た。
ミートソースパスタとサラダを作ってあげたんだけど、作った方も嬉しくなるくらいに美味しそうに食べてくれた。
「ケンちゃんの料理サイコー♪」
こういうの見ちゃうとまた何か作ってあげたくなるね本当。
で、食事の後は、俺が引っ越した後の小学校や中学校、高校や部活の話し、それから俺の転校先での話など二人で語り合った。
それにしても陽気な恩田先輩と堅そうな小宮先輩が付き合ってるとか意外だったな。恩田先輩が猛アタックしたらしいけど。
そんな感じに俺も楽しかったけど楓も楽しそうに話しをしてくれたので、あっという間に夕方。結局片付けは進んでいない。。。
そして、楓と一緒に小早川家へ行って夕飯。
"遠慮しなくていいのよ"と五月おばさんが呼んでくれました。
やっぱり1人で食べるより大勢での食事の方がおいしく感じるね。
後、久々におじさん(楓のお父さん)とも会えた。この間は仕事で帰りが遅かったから会えなかったんだよね。
俺の両親は帰りが遅くなることが多かったから五月おばさんだけじゃなくて、おじさんにもずいぶんお世話になった。親父はおじさんの後輩で高校時代からの親友らしいけど本当感謝している。
という事で、つい長居してしまい家に帰って風呂に入って寝たのは1時過ぎ。
正直眠いが、今は部活の朝練に行くため、小早川家を目指している。
何故に小早川家かというと最近は楓と一緒に登校しているので毎朝 楓の家に寄ってから学校へ行ってるんだ。
まだまだ緑の多い地域ではあるので、朝の空気は気持ちいい。
商店街を抜け大通りの歩道を歩く。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
アパートの近所に住んでるおばあさんとすれ違った。
母さんの知り合いでこの間挨拶に行ってきたんだよね。
朝のこの時間は犬の散歩してるんだけど、この犬が大きくて。
と後ろからその大きな犬のものと思われる鳴き声と女の子の悲鳴が聞こえた。
「ワン!ワン!」
「きゃ!」
何かと思い後ろを向くと大きな犬に吠えられ、驚いた子犬が女の子の近くから車道に飛び出して行くところだった。
女の子が急に吠えられて手に持っていたリードを離してしまったみたいだ。
朝の早い時間ということで車の通りは少ないが、運悪く1台のセダンが子犬の方に走った来ている。俺は咄嗟に鞄を下ろし、車道に入り子犬を抱え反対側の歩道までダイブした。
「ふぅ~」
「大丈夫ですか!」
急停止した車から運転手が降りてきた。
20代後半くらいの若い男性だ。
「あ、大丈夫です。俺もワンちゃんも無事ですよ」
「よかった・・・ でも危いですよ。急に飛び出すなんて。どこか怪我とかないですか?よかったら病院まで送りますよ」
「あぁ大丈夫です。学校もありますし」
「そうですか。。。じゃあもし後で何かあったらこちらに連絡ください」
と運転手は、名刺を俺に渡し、そのまま車に戻り走り去っていった。
と、泣きそうな顔をした犬の飼い主の女の子と慌てた様子のおばあさんが近づいてきた。
"女の子"と思ってたけど近くで見たら意外と大人な感じがした。
もしかして俺と歳そんなにかわらないかも・・・
「ご ごめんなさい 本当にありがとうございます!!」
「ほれ。リード離したら駄目だよ。それじゃね」
「あ、あの!」
あんまりのんびりもしてられないので、反対側の歩道に置きっぱなしだった荷物を拾い楓の家に急いだ。
『少し遅くなっちゃったかな』
楓の家のインターホンを押すと
「いってきま~す」
と楓が勢いよく出てきた。楓も余裕がなかったのか髪に寝癖が・・・
「おはよう!」
「あぁ おはよ って寝坊か? 寝癖」
「う うん。昨日は何だか眠れなくて」
と手鏡を見ながら寝癖を直す楓。
「あれ? ケンちゃん学ランの肘のところ少し破けてるよ」
「え! まじか。まだ買ったばかりなのになぁ?」
「大丈夫だよそれくらいなら、後で縫ってあげる」
「楓?裁縫とかできるのか?」
「し 失礼な。裁縫だけは結構得意なんだぞ!ミシンとかも使えるし!
朝練終わったら上着貸して。縫ってあげるから」
「おぅ よろしくな」
さっき肘を擦ったのかかな。
しかし楓が裁縫は得意というのは意外だったな。
ちなみに後で聞いた紅葉情報によると、小さいころ楓は外で遊んで服に綻びを作る事が多かったので、五月おばさんに自分で直すよう躾けられたらしい。
五月おばさんも直すのが面倒だったんだろうな。
そんなやり取りしながらも学校に到着。
着替えて体育館に行くと裕也たちが既に柔軟をしていた。
俺も軽く体を動かした後、コーチに渡された朝練メニューをチェックした。
この朝練では、コーチに渡されたメニューに従い各自で課題を行う形式になっている。俺も前回の練習で指摘を受けたディフェンス時の動き等を中心にトレーニングを行うことになっていた。
前半は筋トレとオフェンス時の課題を指摘された長谷部と組んで実戦形式での練習。ただ、あいつガタイが良いから結構疲れる・・・・
ちなみに男子バスケのコーチは楓の従兄でバスケ部のOBでもある牧村 亮。
俺や裕也も小さい頃よく遊んでもらった気のいいお兄さんって感じの人。
今は教員を目指して大学で頑張ってるらしいけど、コーチとしての指示や観察眼は中々的確で俺も正直驚いた。
なお、見た目がマッチョなので体育の教師を目指しているのかと思ってたら、数学の教師を目指している理系男子だったらしい。人は見かけによらないですな。
始業時間が近づき、練習時間もあと少しというところで、小宮部長から集合が掛かった。
「新学期が始まり1週間が過ぎた。今日の午後から部活の見学も始まる。上級生として恥ずかしくないようにふるまってくれ。後、出来るだけ部員は多く取りたい。中学の後輩や知り合いが居たら声掛けてくれ!」
とのお言葉。
『3年生抜けちゃうと部員少なくなるしな・・・』
ふと女子バス側を見ると、あちらでも恩田部長が部員を集めて話しをしていた。
女子バスの方がこっちよりは人数多そうだけど少ないことは少ないよな。
俺もまだ入部してから1週間だし、ある意味では新入部員。
後輩ができるなら頑張らないとな。
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