第15話 初デート②

上映時間も近くなったので、売店でお約束のポップコーンとジュースを購入し窓口へ向かった。


「え〜と カップル席の方ですね。じゃあカップルの証明をお願いします」

「え?証明? 何すればいいんですか?」

「そうですね。決まりはないですが、抱き合ったりキスしたりというのが多いですよ」

「ま・じ・で・す・か」


そんなことするのか・・・


「どうしようか楓?」

「わ わたしは別にいいよ」


と俺に向かい合い背中に手を回してきた。


「楓・・・」


楓が頑張ってくれたので、俺も楓の背中に手を回し抱きしめた。


「・・・・・」

「はい 確認しました。どうぞ~」


と、窓口のお姉さんのOKが出た。

あらためて周りを見ると窓口に並ぶお客さんの目線。。。。

[初々しいねぇ~]とか声も聞こえた。

俺も楓も顔真っ赤。


「楓。席あそこみたいだよ」

「え は はい」


楓はまだ復活しきってないみたいだが、とりあえず館内に入り席に向かった。

カップル席は館内座席の最上段部分に並んでいる二人掛けのソファ席だ。

狙いなんだろうけど、ソファの幅は意外と狭く思った以上に体が密着する。

そしてドリンクホルダーは右手側、テーブルは左側にしかないので、ドリンクや

ポップコーンを取る際は相手の上を通らないと取れない。

そして、極めつけは二人で座るとフワフワなクッションの加減でソファの真ん中が沈み、座っているカップルの体も傾き中央寄りになる。

・・・誰このソファ考えた人 マジ天才だろ。


ただ、恋愛初心者の俺と楓には少し刺激が強すぎるかも・・・

とりあえず、座ってみたが、想像通り顔が近くなり、服越しだけど密着状態。

何だか色々ヤバい・・・正直これは映画どころではないかも・・・


と思っていたが、映画が始まると俺達は作品の世界に引き込まれてしまった。

人気があるだけあって、きれいな色彩のアニメーションや深みのある音楽やストーリー展開で作品に没頭した。中々の名作だ。

そして物語終盤。

横を見ると楓は少し涙ぐんでいた。

後半は主人公とヒロインの別れの場面や親友の死など、結構泣ける場面多かったからな。正直俺ももう少しで泣きそうだった。

エンディングテーマが終わり劇場の照明がつく中、俺たちも映画館を後にした。


映画を堪能した俺達は、近くのカフェに入り2人で映画の感想を話した


「いい 映画だったな」

「うん 感動した」

「最初の方の・・・・・」


1人で見る映画ものんびり出来ていいけど、こうやって感想を言い合えるのも中々いいもんだな。

というか、今まで映画って基本1人で見てたからなぁ~


その後は一緒に服を見て、レストラン街で食事をするなどショッピングモールでのデートを満喫し、そのまま俺の家に戻ってきた。時間は19:00ちょいすぎ。


そして今、2人でソファに座りマッタリとくつろぎ中。


「ふぅ何だか疲れたね」

「あぁ 今日は買い物付き合ってくれてありがとな」

「ううん 私の方こそ映画連れてってもらったり食事までごちそうになっちゃったしありがとね。何だか嬉しかったな」

「その何というか楓との初デートだし、喜んでもらえて嬉しいよ」

「・・・・そ そうだね初デートなんだもんね」


言葉に出すと何となく恥ずかしいね。初デートとか。。。

その後、しばしの沈黙・・・・

そういえば、普通に来てもらっちゃったけど、男の一人暮らしの家に来てもらっちゃってよかったのか?

というか五月おばさんが楓に行くように言ってくれたんだっけ??

一度意識してしまうと色々と焦ってくる。


と楓が話しかけてきた。


「そういえばさ、元々は荷物の整理手伝う約束だったよね。良かったら今からでも手伝うよ。どうせ家も近いしね」

「そ そうだな。遅くなっちゃったけど。少し手伝ってくれるかな。洋服類と本の整理をお願いしたい」

「うん。任せて!」


という事で少しお菓子を食べて気持ちを落ち着かせた後、部屋の片付けを手伝ってもらった。


「あ、その段ボールに入ってる本は、そこの本棚にお願い」

「うん。あ!ケンちゃんこの漫画読んでるんだ。私も読んだよ~」

「お、ほんと この漫画おもしろいよなぁ~」

「あ、このラノベも良いよね。私も全巻持ってるよ!」

「う うん。面白いよね・・・」


『・・・片付かねぇ~』

悪気はないんだろうけど、見つけた文庫本や雑誌に1つ1つ感想が出てくるので中々片付けが進まない。。。


「ケンちゃんが読んでる漫画やラノベ、それに推理小説とか私も結構読んだことあるのが結構あったよ。趣味とか好きな作品の傾向が近いのかもね。

 あ、同じ作者の作品とかも持ってるから今度貸してあげるね」

「お おぅありがとな」


なるほど。そういうところもチェックしてたのか。

『片付かないとか思ってすまん楓!』


その後、洋服をクローゼットに収納したところで今日の作業は終了。


「ありがとな楓。今日はこれくらいで大丈夫だよ」

「え? もういいの。まだ段ボール結構あるけど」

「まぁ後はノンビリやるよ。明日もあるしね」

「そう。。」


何だかちょっと寂しそうな雰囲気だ。

そりゃ俺も帰したくないけど・・・そうもいかないでしょ高校生だし。

まぁ家に泊めても五月おばさん辺りは"よくやった!"とか言いそうだけど。


「あ、良かったらさ明日お昼食べに来ないか?何か美味しいの作るから」

「え!いいの。お邪魔じゃない?」

「楓なら大歓迎だよ。部活とか学校の話とかも色々聞きたいしね」

「うん。じゃぁまた明日来るよ!」


うん楓は元気なのが一番だ。

ということで夜も結構遅い時間になっていたので、五月おばさんに"遅くまでごめんなさい"と一言電話を入れた後、楓を家まで送って行った。

近いから大丈夫だよと言われたけど、今日は俺が送りたかったんだよね。

2人で他愛もない話をしながら夜道をのんびり歩く。

そして、あっという間に楓の家に到着。普通に近いよな。


「今日はありがとう。助かったよ」

「うん。・・・・ケンちゃんと1日過ごせて私も楽しかった。

 じゃ じゃあね!」


と家の中に入る楓。

しばしその姿を見つめる。

そして、今日1日楓と一緒に過ごしてあらためて思った。

7年間思い続けてはいた。そして、再会したあと告白もした。

ただ、昔のあいつと今の姿とのギャップがどこか気になっていた。

だけど、それとは関係なくこの数日の付き合いで、俺は小早川 楓という女性を愛おしく思う様になっていることに気が付いた。


俺は楓に恋してるんだなきっと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る